家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

アーリーアダプターになれない人、ラガードにもならない人

2007年12月02日 | 家について思ったことなど
その後、社会全般に普及するものも、出発点から爆発的に普及するわけではない。
いくつかの段階を経て普及する。それを分析したものに「イノベーター理論」がある。

<イノベーター理論>
米スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が1962年に提唱したイノベーション(革新的技術)普及に関する理論。商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類したもの。
その5分類は以下の通り。http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/earlyadapter.htmlより引用。
■イノベーター(革新的採用者)
冒険的で、最初にイノベーションを採用する
■アーリーアダプター(初期採用者)
自ら情報を集め、判断を行う。多数採用者から尊敬を受ける
■アーリーマジョリティ(初期多数採用者)
比較的慎重で、初期採用者に相談するなどして追随的な採用行動を行う
■レイトマジョリティ(後期多数採用者)
うたぐり深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用する
■ラガード(採用遅滞者)
最も保守的・伝統的で、最後に採用する

このうち、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた層(全体の16%といわれている)を超えて広がるとその商品は普及し始めるという。
ただし、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には「キャズム」という大きな溝があると言われていて、これを乗り越えるのは簡単なことではないとされている。これを越えられないとマイナーどまりで、そのまま消滅するものもある。

イノベーター理論で、現在の日本の戸建て住宅における様々な要素がそれぞれどのあたりの層に普及しているのか、勝手なイメージで分類してみる。

[外断熱]
 アーリーマジョリティ層への普及がはじまったのではないか。大手ハウスメーカーの大和ハウスが本格的に採用して売り出し始めている↓のがその理由。
http://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/shohin/xevo/
[オール電化]
 アーリーマジョリティ層での普及と推定。言葉の認知度は高いがレイトマジョリティまでシェアをとっている感じはない。新築マンションの場合はレイトマジョリティ段階にさしかかっているかも。
[太陽光発電]
 アーリーアダプター段階か。省エネ意識の高まりで普及はしているが、初期投資の高さ、太陽電池寿命への懸念などで新築住宅の一部の採用にとどまっている。大きな屋根にしにくい都会などではそもそも普及に限界がありそう。
[集成材]
 木造系ハウスメーカーでは集成材の使用がほぼデフォルトといっていい。レイトマジョリティ段階と推定。
[プレカット]
 ラガード段階か。今や大半の新築住宅がプレカットなので、もはや「これにしました」ととりたてて表明する人は少ないだろう。

上記は、あえて我が家で採用していない要素を挙げてみた。
このように、最後まで(かどうかは断定できないが)購入しない/採用しない層というものもある。
上記項目は我が家が採用しなかったものの、客観的に考えればこれからまだ世の中に普及するだろうし、定着もしていくだろうと読んでいる。

100%といわずとも結果的に9割方の人が採用しているものを採用しなかったということになったら、採用しなかった人は、変わり者か、へそ曲がりか、もの好きか、先見の明がなかったか、特殊事情があったか、ということになるだろうか。
逆に、半数以下の普及にとどまるようなものだったら、別に採用しなかったことは特に問題はなく、好みの問題ということでかたがつくだろう。
さらに、ほとんどの人が採用しなかったものはいわゆる「コケた」商品というわけで、採用した人の方が気恥ずかしい思いをする可能性もある。

ちなみに、我が家がイノベーターであるかもしれないものだってある。
[IH調理器]
IH調理器は現在、アーリーマジョリティ層に普及していると思うが、我が家はなんと「IH」という前、「電磁調理器」といっていた時代に、テーブルタイプの「ジョイクック」(ナショナル)を購入した(さすがに初代ではないが)。IHは失敗の歴史でもあり、本格的普及期に入ったのは最近のことである。以下サイトで「IHクッキングヒーターの歩み」を年号に注意して読んでみてほしい。
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn031113-2/jn031113-2.html
[ビルトイン食器洗浄機]
 旧宅でキッチンをリフォームしたときにビルトイン食器洗浄機を導入した。10数年前のことである。関連エントリ→「食洗機それぞれ

上記2点は広く普及期に入っているが、我が家はこれらの普及のスピードアップに一役買った実感はないのでアーリーアダプターではなく、イノベーターではないかと思っている次第。

イノベーターよりアーリーアダプターの方が尊敬を集めやすい。
冒頭に紹介したサイトでは以下のように買いてある。
「革新性という点ではイノベーターが一番高いが、極めて少数であるうえに価値観や感性が社会の平均から離れすぎており、全体に対する影響力はあまり大きくない。それに対してアーリーアダプターは社会全体の価値観からの乖離が小さく、そのイノベーションが価値適合的であるかどうかを判断し、新しい価値観や利用法を提示する役割を果たす存在となる。」
実際イノベーターが購入したものの、先鋭的過ぎて普及しなかったなんて例は少なくない。その点アーリーアダプター層まで広がってくるとヒット商品になる確率が高まる。
ヒットしたあかつきには、普及初期に目立っていたアーリーアダプターが時代の先駆者のようにもてはやされるわけだ。アーリーアダプターはオピニオンリーダーといわれることもある。

ただ、イノベーターやアーリーアダプターの中には、自分が採用したモノが本格的に普及したとたんにつまらなくなってしまい、それを放り出して別のものに目を向ける人というのが少なからずいる。
プロダクトライフサイクルがそもそも短いものならアーリーアダプターにノせられても面白いが、住宅のようなプロダクトライフサイクルが長い(長くしたい)ものの場合はアーリーアダプターの発言・意図をよくよく噛み砕いて考えなければならないと思う。
アーリーマジョリティとレイトマジョリティあたりは、いわゆる普通の人。総じてこういう人たちが建てる家がその時代における無難な「普通の家」ということになるのだろうか。
ラガードは、なんやかんやと後ろ向きだったのに結局採用しているあたり、先見の明がなかったといわれてもしょうがないように思う。ただ視点を変えれば、そういう層にもまで広がったものは時代のメインストリームになったということができるかもしれない。
広く普及しているのにラガードにすらならなかった人は、良く言えば独特の信念を貫いている人、悪く言えば分からず屋の頑固者ということになろうか。

住宅にはいろいろな側面があるので、個々の住宅を見ても一律には語れない。部分部分で時代より早かったり遅かったりしているところがきっとある。
また、設計者、施工者の影響を受けつつも、施主それぞれに、時代に先行している部分や、時代の流れに乗っている部分、時代から遅れている部分があるだろう。そして、革新性を理解しながらもあえて時代の流れに乗ろうとしない部分、だってあると思う。
その点やっぱり「住人十色」ということなのだろう。




イノベーター理論については以下のページが分かりやすいかもしれない。
http://www.mitsue.co.jp/case/concept/02.html
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/yougo/my02/my0219.html



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