家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

ろくさんのIDカードホルダー

2010年12月31日 | レザークラフト

 

 ろくさんのIDカードホルダーができあがった。
 Pさんのジョッターメモ付きIDカードホルダーのエントリ(LINK)を見たろくさんから熱心なアプローチを受け、条件が折り合ったため、制作をお受けした。
 制作にあたって打ち合わせした結果、仕様は以下のように決まった。
・IDカードを2枚収納
・ジョッターメモ付属
・名刺入れ付属
・コインホルダー付属
・写真入れ付属
・ペンホルダー付属
 ペンはWalkiePenのBoldタイプ
・リール付きストラップ
・色調は黒
・ステッチの色はダークグリーン
 いろいろ盛りだくさんである。それでいて見た目をシンプルにするという条件。
 作り手としてはなかなかやりがいのある案件となった。

 Pさんのカードホルダーと大きく異なるのは、Pさんのが1枚の板状だったのに対し、2つ折り構造になったこと。
 これはIDカード、写真、ジョッターと、露出させる必要がある面が3つあったからだ。1枚の板状だと露出する面は2つしかとれない。2つ折り構造なら4面とれる。先ほどの3面以外の残り1面は名刺入れとコインホルダー用に使った。
 一見、目立った特徴のないIDカードホルダーであることがむしろ特徴といっていい。これに前記の機能をすべて盛り込んであるのだ。

 正面はIDカード、裏面はジョッターとなる。首から下げていて、ひっくり返すとすぐにメモがとれるようになっているのはPさんのカードホルダーと同じ。
 ジョッターの下の位置(使うときは上になる位置)にペンホルダーがある。ペンホルダーはIDカード面から見えないように配置することでシンプルさを実現している。

 

 2つ折りを開くと、写真入れと名刺入れがある。名刺入れの表面にコインホルダーを設置した。
 コインホルダーはPさんのとは違って犬のような顔になった。できるだけ厚さを抑えるため、ホックをつけるのに「ハンシャ」という金具を使ったことがきっかけになった。

 

 通常のホックはボタンのように盛り上がっているが、ハンシャはフラットである。普通ハンシャは隠れる位置に使うもので、市販品では見える位置に使ったりはしてしない。しかし私は、犬の「目」に見立ててしまえばこんなふうなスタッズ的に使ってもいいと考えた。無手勝流の強みである。

 

 あと、Pさんのカードホルダーと違うのは、カードを保護する入れ子構造の透明ホルダーである。Pさんの場合、私のポストイット付きIDカードホルダーと同様、ソフトな塩ビ製のものを使ったが、ろくさんのはハードなPET製のものにした(B8サイズ)。これは5枚入りで安く売っていて大手文具店なら手に入る。煤けてきたらいくらでも差し替えが効く。
 写真もこれに入れて収納するので、2つの透明ホルダーが入れ子となる。この入れ子は本体の「芯」の役割を果たす。

 さてこの作品、私の制作工程は終わったことになるが、実はまだ完成ではない。
 内側の写真入れにろくさんのご家族の写真が入り、革がろくさんに馴染んできたときに完成となる。本当の完成に仕上げていくのは作り手ではなく使い手なのだ。
 その点は家作りと同じだと思う(参考エントリ→LINK)。

 受け渡しのとき、ろくさんから「満足した」との言葉をいただいてほっとしたが、心に残った言葉が他にもある。

    「この作品はgaraikaさんから見た私なんですよ」

 深い。
 確かに黒のボディにダークグリーンのステッチは自分の持ち物であったならば、採用しそうもない。なにより、このような機能の組み合わせは使い手のコダワリがなければ現れるものでもない。依頼主と作り手がゼロから作るフルオーダーだからこそできる作品なのだと思う。
 ろくさんとは「市販品には100%満足できるものがなかなかない」というようなところから会話が始まった。私は「市販品というのは80%の人間が80%くらいの満足度を得ればかなり上々の商品になるけれど、残り20%の満足度を得ようとすると、今度は多数の人が満足できなくなる」というような解説をした。
 私は逆に、そういう残り20%を埋めるための作業から面白いモノが生まれてくる気がしている。万人に受ける商品より、思い入れの強い一部の人に受ける商品に興味がある。
 だからオリジナル性がある仕様だと、やる気が俄然高まる。打ち合わせ時にいろいろな提案をして、オリジナル性を増幅させたりする。その過程で注文主の個性が作品に盛り込まれていく。最初はPさんのと同じものを売って欲しいというろくさんだったが、違うものを作ることになって本当に良かった。
 「この作品はgaraikaさんから見た私なんですよ」
 という言葉はそのとおりかもしれないなあと思ったのだった。