ゴン太の山行記録

首都圏で公共交通機関を使った山歩きをしています

○ 新緑の大持山西尾根

2006年05月31日 22時36分41秒 | 奥武蔵
【山域】 奥武蔵
【山名】 大持山(1294.1m)
【山行日】2006年5月21日(日)
【メンバー】単独
【地図】エアリア「奥武蔵」2001 
    1/25000 「武蔵日原」「秩父」
【参考図書】『奥武蔵山歩き一周トレール』(かもがわ出版)
【天候】晴れ

【コース】
浦山大日堂   08:40 - 09:30 793ピーク
793ピーク  09:35 - 10:30 1142ピーク
1142ピーク 10:45 - 11:20 大持山
大持山     11:25 - 12:00 小持山
小持山     12:50 - 13:25 大持山分岐
大持山分岐   14:05 - 15:00 鳥首峠
鳥首峠     15:10 - 16:20 浦山大日堂



【山行記】
朝、西武秩父駅から大通りに出て、浦山大日堂行きのバスを待つ。浦山大日堂と秩父駅を結ぶバスは、これまで帰りの便でしか利用したことがない。初めて利用したのは山歩きを始めて間もない98年の秋のこと。仙元峠から仙元尾根を下って道に迷い、たどりついた川俣の集落でとっぷりと日が暮れて、たいそう怖い思いをした。

あのころはまだ、もっと手前の金倉橋までしかバスは入っておらず、薪を積んだ民家のそばを子どもたちが駆け回り、「もう、そろばん塾にいかなきゃ」という声が聞こえ、のどかな山村という感じであった。集落には酒を商う店があり、ビールを買った覚えがあるが、今はそんな店も見あたらない。大日堂から金倉橋までの細い道は消え、代わりにバイパスのような広い立派な道ができた。あれからもう8年という歳月が流れたのだ。そろばん塾にいかなきゃ、と云っていた女の子は今どうしているだろうか。

浦山大日堂バス停から一つ手前のバス停「渓流荘前」へ戻るように進む。大日そば休業のお知らせに少しガックリ。仙元尾根への道標は立派なものになっており、写真におさめていると、バスに乗り合わせたもう一人の登山者が、その道を上がっていった。

送電線の巡視路を示す黄色い標柱「奥秩父線16号、安曇幹線324号出入口」が取りつき。最初は簡易舗装道だが、民家の脇をすり抜けるとすぐに土の道に変わる。奥武蔵の登山道はたいてい長い林道歩きを伴うので、すぐに土の道を歩けるのはありがたいものだ。



尾根に上がるまでのジグザグで、新緑が十分楽しめ、朱色のヤマツツジがアクセントを添えている。最初は徹底的な植林帯だと覚悟していたので、これはうれしい誤算。道はきわめて明瞭で、ところどころにある黄色い標柱「奥秩父線16号に至る」をたどっていけばやがて尾根に乗る。尾根に乗っても新緑は楽しめ、やがて最初の鉄塔に着く。さらに尾根づたいに進むと、10分ほどで二番目の鉄塔にすぐに着く。

暑くなってきたのでTシャツ一枚になってさらに尾根通しに進んでいくと、道はやや尾根を左にはずれるが、これは793を巻いてしまいそうだし、あまり歩き易くない。尾根に戻ってやや岩がちの植林帯を歩いていくと793のピークに着いた。焼山の標識はないかと探したが、木の幹に「H793大塚山」と書かれた黄色いテープが巻かれていたのを見つけただけ。


793からいったん下るが、地形図通りすぐに登りになる。このあたりからはもう送電線の巡視路ではないため、踏み跡は不明瞭になってくる。が、しかし、尾根の筋は明瞭で、左手に749からの尾根を合わせると、小平地となる。ここは下りにとったとき、地形図のちょうど継ぎ目にもあたり、わかりにくく間違えやすいところかも知れない。

小平地から方向をやや北東に変えて急な尾根を直登する。植林帯で、傾斜も急なので尾根通しに単調に登っていく。しかし、左手に905の尾根が見えてきて傾斜がややゆるんでくると、そこには素晴らしい光景が待っていた。本当の緑色というのはこんなにきれいだったのか!と感動してしまうほど美しい自然林があたり一面にひろがり、五月の陽の光を受けて葉が生き生きと輝いている。まさに緑のトンネルのなか、森の中をさまよい歩く喜びに身体が震える。

足下は落ち葉だらけで道と呼べるようなものはなく、落ち葉でなかなか前に進まないものの、尾根筋は明瞭で迷うことはない。言葉を失うほど美しい新緑の中を少しずつ前に進んだ。

1142のピークはブナもある自然林だけに囲まれた好ましい小ピーク。目指す大持山とおぼしきピークも見え、ここで少し小腹が空いたのでメロンパンを少し食べ、アクエリアスで喉を潤した。



1142からは左手に見える高みを目指して自然林100%の道をゆるゆると登っていく。足下にはカタクリがすでに花を落としたあとだったが、ミツバツツジの混じる特上の新緑の道を上機嫌で歩き、無事大持山頂上のすぐそばにぽんと飛び出した。遠くでホトトギスが鳴いているのが聞こえる。

時間を見ると11時過ぎ。こんなに好い天気なのだし、下のそば屋さんも閉まっているようなので、急いで降りるなんて莫迦らしい。暇なので小持山をとりあえず往復してみることにした。



アカヤシオはもう花びらの一つも残っておらず、代わりにトウゴクミツバツツジと思われるきれいなツツジが咲いていた。しっかりした稜線は今まで歩いてきた道とは違い、堅く踏みしめられ歩きやすいが、岩がちの道なので、あまり油断もできない。武川岳方面に展望が開け、さらに進むと小持山に着く。遠くに両神山が見える。

そろそろお昼時。大持山方面に少し戻って展望がよく、日影になった場所を選んで大休止とした。お昼を平らげてお茶を飲みながら、少し無線を聞いてみると、日光市の小法師岳から電波を出している局がいたので、声をかけてみると簡単につながった。アカヤシオや道の様子など聞くことができ、楽しい交信となった。

大持山方面に戻り、大持山の山頂を素通りして、鳥首峠と妻坂峠の分岐点で腰を下ろす。ここは目の前が伐採されて、都心方面の大展望地点となっている。さすがにこの季節ではあまり遠望はきかないが、遠くさいたま新都心方面や、これから向かう鳥首峠方面の尾根をぼんやり眺めながら、ゆっくりとお湯を沸かして、紅茶を煎れて飲む。よく考えてみると、この鳥首峠方面の尾根は奥多摩と奥武蔵をつなぐ尾根であり、混んだバスや狩猟で足がすっかり遠のいた奥多摩へこちら側からアプローチするのも悪くない、などと考える。

あわてて降りてもしょうがないと、無線をつけると、今度は日光の社山から出ている局がいたが、こちらはあいにくと拾ってもらえず、またしばしボーッとしたあと、鳥首峠へと向かう。



大持山からウノタワがこれまたすばらしい新緑のプロムナード。ブナミズナラの他、シラカバの新緑まで拝むことができ、そこにミツバツツジやヤマツツジの蕾が彩り豊かに青空に映えて、気分の良い稜線歩きを堪能した。ウノタワは来るたびに思うのだが、水場さえあれば素晴らしいテン場になるのではないか。

ウノタワから少し歩くと植林帯となって、左手に真っ白に削られた石灰採石場をみると鳥首峠。鳥首峠で少し休憩をしたあと、冠岩方面への道を降りる。左手に自然林も見えたりするが、道は基本的に植林帯につけられており、今までの道が素晴らしかっただけに、ちょっと失望しながら降りて行く。

途中、支沢を渡って対岸をトラバースする地点で道が崩壊して消えたように見えるところがある。ここは沢を降りずに、マーキングの着いた方向に進み、沢を渡って対岸のザレた斜面をやや強引にトラバースすると、もとのようなしっかりした踏み跡の道になる。初めて下りに使うと迷うかも知れない。

たんたんと下ると、人家があり、どうやら人が住んでいるようだ。さらに下っていくと「冠岩」の指導標があったが、これがそうか、というような岩も見あたらず、どの岩を指して冠岩というのか判らずじまい。

あとはのんびりと舗装道路を朝降りた浦山大日堂のバス停まで歩くだけ。「大日そば」はやはりシャッターを降ろしたままで、バスが来るまでの30分ほどを家から持ってきたワインを飲みながら時間をつぶした。