ゴン太の山行記録

首都圏で公共交通機関を使った山歩きをしています

○ アカヤシオとヒカゲツツジいっぱいの笠丸山

2006年05月05日 10時50分40秒 | 西上州・妙義
【山域】 西上州
【山名】 笠丸山(1189.1m)
【山行日】2006年5月3日(祝)
【メンバー】単独
【地図】エアリア「西上州・妙義」99
    1/25000「両神山」「神ヶ原」
【参考図書】『群馬の山歩き130選』(上毛新聞社)
       『東京付近の山』(実業之日本社)
【天候】快晴

【コース】
藤沢  10:30 - 11:35 登山口
登山口 11:40 - 12:30 笠丸山
笠丸山 13:10 - 13:35 地蔵峠
地蔵峠 13:35 - 14:00 登山口
登山口 14:05 - 15:15 藤沢

【山行記】

高崎線が本庄駅に近づく頃、電車の窓から浅間山が見えた。2ヶ月前は真っ白だった浅間もさすがに雪がだいぶ融けて、黒い地肌の方が多くなっている。

本庄と高崎のちょうど真ん中に新町という駅があり、初めて下車する。バスは駅の東側が発着場所になっていて、駅にはたくさんの人がいたものの、上野村行きのバスに乗ったのは私の他に5~6人ほど。20席ほどの小さなバスだが、ゆったりと座れた。

バスは途中、八高線の群馬藤岡駅を経由して、藤岡の町を離れると鬼石(おにし)のあたりから山間の風景になる。神流(かんな)湖のほとりをくねくねと走って万場まで一時間以上の道のり。万場で5分の休憩がある。ちょうど鯉のぼり祭りが催されていて、おびただしい数のコイノボリが神流川の上空を泳いでいた。

万場から先も神流川に沿って蛇行した道を延々と走る。乗り物酔いする人はここら辺はキツイかも知れない。バスには、トイレに行きたくなったり気分が悪くなった場合は運転手に遠慮せず声をかけるように、と書いてある。

高橋で一人、八幡でもう一人登山者が降り、私の他に女性二人となった。女性二人組が乙母(おとも)で降車ベルを押し、今から天丸か、すごいなぁ、と感心していたら、どうやら、乙母神社前(藤沢)と間違えたようで、藤沢で私とこの二人組が降りて、バスは空になった。

乙母神社で安全祈願をしてから、Tシャツ一枚になって歩き出す。風が吹くとさすがに少し肌寒いが、この陽射しでは長袖でアスファルトの登りは余計な汗をかくだけと、そのまま歩き続ける。

林道歩きはやはり退屈であるが、2週間以上山に行ってなかった間にもえぎ色に変わった山肌を見ながら歩くのは実に気分が良かった。春は本番を過ぎ、もう少しすると木々が山頂まで新緑に包まれ、ホトトギスやエゾハルゼミの鳴き声が聞こえてあっという間に夏になってしまうのだ。



林道を歩いて45分ほどすると行く手に目指す笠丸山が見えてくる。結構ごつごつした感じの岩峰で山頂付近にピンク色がちらちら見えていて、期待がふくらむ。コースタイムの1時間では住居附(すもうづく)の登山口に着けず、5分ほど余計にかかってしまった。登山口の手前であとから出発した女性二人組に抜かれ、登山口からも急な坂をぐんぐん登っていき、やがて姿が見えなくなった。

私はといえば、登山口で小休止後、植林の急登をゆっくりと登り始める。植林はすぐに終わり、よく手入れされた雑木林となり、ミツバツツジがお目見えする。やがてシラカバも混じる気持ちの良い自然林の中をのんびり写真を撮りながら登っていくが、急坂とツツジが紫なのは変わらないまま。

右手に楢沢峠方面からの大きな尾根が見えてきて、「あれが合わさると山頂か、すぐだな」などと思っていたが、なかなか尾根の合流地点は近づかない。やがて、目の前にものすごい急坂が聳えて、ああ、こりゃ、熊倉の最後の登りそっくりだわ、と観念しながら登っていくと、ピンク色のあのあでやかな花が見えてきた。足場もあまり良くなく、光の当たり具合ももうひとつなので、写真は数枚だけにして更に急傾斜の斜面を登っていくと、頂上にポンと飛び出した。

「笠丸山山頂」と記された頂上は南峰で、ここには三角点はなく、大きめの祠があって、無事登頂の感謝をしてから、辺りを見回すと、お目当てのアカヤシオが盛りを過ぎてはいるものの、咲いていて、早速写真をと思って近づいたら、すぐそばにヒカゲツツジの群落。やや色の薄いアカヤシオや花づきの極端に悪いものなどもぱしゃぱしゃと撮って、ようやく落ち着いたところで、ランチ場所を探した。北の方はどうも狭そうなので、南峰に戻って、アカヤシオの向こうに二子山が見え、すぐ左はヒカゲツツジという特等席を選んで、昼食とした。



アカヤシオの上品なピンクが雲一つない青空に映えてとても美しい。この桃色とスカイブルーのマッチングは絶妙で、この花を初めて見た2003年の春以来、毎春この時期にこの花を見るのが楽しみとなっている。今年はやや花のつき具合が少ないようだが、それでも、この花の美しさは格別で、眺めているだけで、自分が今年もこうして生きていて、目が見えて、山に登れるということに感謝してしまう。

食事を終え、地蔵峠を目指し歩き始めるが、ここからがヒカゲツツジ、アカヤシオともに本番という感じで南峰から北峰までの短い距離の間もかなり楽しめる。とくにヒカゲツツジときたら、それこそ雑草のようにそこら中に咲いている。花のしおれ具合からもう少し早く来れば良かったかとも思ったが、いつもいつも絶頂期というわけにはいかないのは仕方がない。



北峰では三角点を確認するのをわすれるほど、目はうつろにツツジの群れを追っていた。少し戻って地蔵峠への下降点。ここはロープがついているが、足を滑らせないように慎重に下る。昨日の雨のせいだろうか、水がたまって滑りやすくなっていたところもあったので、冬季など凍結したら厄介だと感じた。

地蔵峠に降りるまでの道すがらもアカヤシオが楽しめた。こちらはいくぶん花のつき具合が良かったので、たくさん写真を撮る。アカヤシオがなくなってミツバツツジが優勢になるとしばらくで地蔵峠。大きな巨樹は楢の木か。楢沢峠、塩ノ沢峠方面の尾根道にも惹かれるが、今日はおとなしく住居附(すもうづく)へ戻る。

地蔵峠からの峠道は傾斜もほどよく歩きやすい佳い峠道。ハシリドコロ、エンレイソウ、ミヤマキケマン、ニリンソウが咲いていた。途中に垣間見る自然林の小尾根がことのほか美しい。こういった美しい風景を無用な林道で破壊したりするのは本当に悲しいことだ。いつまでもこのままの姿でいて欲しいと切に願う。



地蔵峠からの下りはコースタイムの半分近くで降りられ、あれ、もう林道?と思っているとすぐに住居附の集落に着いてしまった。ちょうどこの時期、今日のような天気の好い日にこういった山村の集落に降りてくると、色とりどりの花と緑に包まれた集落は桃源郷のように見えてしまう。



一日数本しかないバス停から林道を1時間も歩かなくてはならない不便さを考えると、その苦労を思いやるべきなのかも知れないが、あまりの美しい光景に、ここに住むことの幸せの方を強く感じてしまうのだ。

来るときと同じ林道をてくてくとバス停目指して歩く。今日は山にいる時間より行き帰りの電車バスの方が長いななどと思ったが、黄緑色に染まり、徐々にエネルギーが横溢し始めた山々を見ながらこの日の満足な山行を思い返しつつ、今日は朝早起きしてここに来て本当に好かったと感じた。