ゴン太の山行記録

首都圏で公共交通機関を使った山歩きをしています

○ 大室山茅ノ尾根~鐘撞山

2006年04月25日 23時14分03秒 | 丹沢
【山域】丹沢
【山名】大室山(1587.6m)
【山行日】2006年4月15日(土)
【メンバー】単独
【地図】1/25000大室山、 エアリア「丹沢」2005
【天候】晴れ

【コース】
久保吊り橋 08:10 - 09:00 久保分岐
久保分岐  09:10 - 10:05 1230m付近緩斜面
1230m付近 10:15 - 11:00 大室山
大室山   11:35 - 12:05 神の川ヒュッテ分岐
分岐    12:15 - 13:10 鐘撞山
鐘撞山   13:40 - 14:55 神の川キャンプ場
キャンプ場 15:00 - 15:55 神の川入口バス停

【山行記】

多摩センター4分の待ち合わせで小田急線から京王線へマニアックな乗り換えに成功。橋本駅には、バス発車の10分前に到着できた。橋本発三ヶ木行きの一番バスさえ掴まえてしまえばこっちのもの。同じ神奈中バスの三ヶ木発月夜野行きは橋本と相模湖の一番バス到着を待って発車してくれる。今日も橋本発が10分近く遅れたものの、月夜野行きはしっかり連絡待ちの待機をしていてくれた。

珍しく月夜野まで私の他にもう一人登山者が同乗。二人して月夜野発長又行きの富士急バスに乗り継ぐ。車窓から見える大室山の山頂付近は真っ白な樹氷が遠目にもはっきり判る。四月も半ばとはいえ、山頂は明け方零度前後まで冷え込むのだ。ツエルトは持っているが遭難などしないように十分注意しないと... 少し緊張感が走る。

久保の吊り橋で降ろしてもらったあとも、もう一人の登山者は乗ったまま。あの人はどこへ行くんだろう? そんなことを考えながら、吊り橋でストレッチをし、ウグイスが囀る中、高度のある吊り橋をこわごわ渡る。

橋を渡るとすぐに大室山の指導標が見つかり、尾根の右側から回り込むようにして尾根に乗っかると、あとはやや急な植林帯の尾根をほぼ直登していく。踏み跡は植林帯では非常に明瞭で、一般登山道を歩き慣れている人であれば拍子抜けするほどわかりやすい。ただ、薄暗い植林の尾根道が標高900mあたりまで続くので、少々うんざりする。

久保分岐で大渡からの道を合わせ、いささか植林帯に飽き飽きする頃、右手が自然林となって、周囲も明るい雰囲気に変わり、気を取り直す。

久保分岐から20分ほどで周囲が自然林の好ましい道に変わり、やがて1161のピークを左から巻くように登ると、落ち葉がくるぶしの上までもぐる雑木林の楽しい小径。踏み跡は薄くなるが明瞭な尾根筋であり、そこそこの地形判断力があれば、不安になることもなく楽しんで歩けることだろう。古い道標「←至 大室山 約一時間 ● 至 大渡 約40分 →」がぽつんと立っている。

1230m付近でこの先が急斜面になっているのを見て、ここで久保分岐に続いて二回目の小休止をとることにした。

チョコレートで10分ほどの休憩をとったあと、やや急な斜面を登る。このあたりですでに左右に尾根が見えており、左右の尾根が合わさればほぼ山頂だと判る。しかし、さすがに大室山。そう簡単に山頂を明け渡したりはしない。ブナの美林に変わり足はなかなか前に進まないが、こんなブナ林をそそくさと歩く方がよっぽどもったいない。



やがて来るときにバスから見えていた樹氷の木々が見えてきて、冷たい空気の中を写真を撮りながらゆるゆると登っていくと、来た方向を「大渡・久保吊り橋」と指した指導標が現れて、山頂に到着した。

山頂には先着のご夫婦が一組だけ。山頂での休憩を終えて腰を上げるところだった。お腹も空いてきたのでルリビタキ(?)が囀る中、早めのお昼ご飯をいただくことにした。昼食をとっていると一人二人と山頂に上がってくる。大休止を終えて下山の荷造りをしていると、大室指の方から登ってきたご夫婦がいたので、道の様子をうかがったら、悪くないという。大室指に降りるのかと聞かれ、「いえいえ」と答えて、「神ノ川ヒュッテ・日蔭沢新道」と書かれた小さな道標の方向へ向かう。

最初は鹿除けの柵があって少し判りにくいが、さすがに神ノ川ヒュッテ分岐までは耐久レースのコースに使われているだけあって、急な坂道はえぐれるほどはっきりした道形。日当たりが好いせいか、茅ノ尾根では小さかったバイケイソウの芽がこちらでは大きくしかもたくさんあった。高度を下げると日当たりはいっそう良く、バイケイソウの群落もある。

右手が大きく開けて、檜洞丸・蛭ヶ岳がよくみえる。道は左側が自然林、右側が植林となって、神ノ川ヒュッテの分岐に着く。神ノ川ヒュッテの道標があり、分岐点は明瞭。ただし、尾根筋の方角には何の指導標も案内もない。

分岐から尾根筋を辿り10分ほどすると、このコースの一番厳しい箇所にさしかかる。エアリアには急坂とだけ記されているが、地形図で見ればものすごい等高線の混み方。ぞっとするほどのザレの急斜面をほぼまっすぐに下って行く。登りも相当しんどいだろうが、下りもかなり神経を使わされるという意味でいやな坂だ。右手に934のピークが見えるが、本当にあんな下が934mなのかと思うほど下に見える。ぱっと見た感じでは800mないように見えるほど高度差が激しい。しかし、その左手には鐘撞山とおぼしきピークも見えていて、コースを間違ったわけではないようだ。

実際しばらく下ると樹の根っこに「鐘撞山←→大室山」とだけ記されたヒメサユリの会の小さな道標が見つかる。ザレが終わると今度はガレ。いくつか小さい石を落石させてしまう。
登山の検定試験があるとしたら、ここで一つも落石させずに下れたら一級をあげて好いのではないか、などと考える。

もうこんな道二度と歩きたくないと思う頃、急坂が終わって、934のピークに着く。ここには指導標はないが、東の尾根に入り込むのはよほどの注意不足ではないだろうか。少し休んでから、鐘撞山に向かう。

鐘撞山はどうということのない平凡なピークだが、実際に鐘を撞けるようになっていて、試しにぶら下がっている木槌でたたくと、これが思いのほか佳い音色で響きわたる。
三角点の方へ歩いていき、時間が余りそうなので、ここでコーヒーを沸かしてゆっくりと飲んだ。

鐘撞山から長者舎へ降りる道もあるが、予定通り三角点から道なりに尾根を行く。鐘撞山から30分ほどで、来た方向を「大室山」と記した指導標があって、ここで尾根通しの道がピンクのヒモで「とおせんぼ」されている。右手には折花橋へ降りると思われる道が延びていて少し思案。 

エアリアの赤破線はよく見るとこのあたりから微妙に尾根をはずれており、もしかしたら、ここからトラバースになるのかも知れないと素直に尾根をはずれてみる。するとすぐに「←神ノ川キャンプ場 ● 折花橋→」と記された緑色の指導標が現れ、ほっとする。ここから折花橋に降りると時間的にも結構厳しくなってしまうし、当然のごとく神ノ川キャンプ場と記された山腹トラバース道に進む。

507の小ピークは巻くようにして過ぎる。このあたりそろそろ新緑が始まっており、ミツバツツジも結構咲いている。最後は尾根を離れ、キャンプ場は目と鼻の先、というところで大きな樹が倒れて登山道が大崩壊していた。立ち止まって、どうしようか、と考えていたそのとき、足が滑り、左手で木の幹をつかんだものの、更に滑って、右手を岩にぶつけて小指から結構な量の血がぼたぼたと滴り、持っていたストックが血まみれになった。

なんとか、身体を持ち上げ、倒木を避けながら崩壊地を抜けだし、登山口に降りた。ああ、なんてこったい、と最後の最後につまらないミスで怪我を負ってしまった自分のふがいなさに腹が立った。

幸い目の前に神ノ川が流れており、流水で傷口に入り込んだ泥を洗い流し、持っていた大判のウエットティッシュで消毒、ちり紙で血を拭って、絆創膏を貼ったらなんとか血が止まってくれた。

神ノ川キャンプ場はちょうど桜が満開で見頃だった。こんな怪我をしてもキャンプ場でビールを売っているのを見つけるやロング缶を買い求めてぐびぐびと飲んでしまう。キャンプ場からは車道をのんびりバス停まで歩く。袖平山の指導標があって、こんなところから登れるのか、とぼんやりした頭で考える。



里はヤマブキの黄色、ミツバツツジとダイコンソウの花の紫がとても美しく、この季節は山も佳いけど、山里が目をみはるほどきれいだなと感じながら、集落を眺めつつ神ノ川入口のバス停を目指した。