Entrance for Studies in Finance

Research on FANUC and FA

ファナック 市場重視に転換

 2015年に入ってアクティビストファンドとして知られるサードポイント(ダニエル・ローブ)は、ファナックに対して手元資金(約1兆円)の有効な活用として、自社株買いなどを求めたことを明らかにした(2015年2月9日)。両者のやり取りの詳細は明らかではないが、ファナックは2015年3月に株主還元の拡充方針を表明(3月13日付け日本経済新聞記事において稲葉社長が表明)。これを受けてファナックの株価は上昇を始めた。その後株主との対話窓口を設けて(3月24日発表 Shareholder Relation部の設置:4月1日業務開始)19の機関投資家の声を聴いたうえで、4月27日に利益の最大8割を株主に還元する方針を明らかにした。株価水準を踏まえて総還元性向80%の範囲で配当と自社株買いを組み合わせて機動的に実施する。2015年3月期から5年間、連結配当性向を従来の30%の2倍の60%に引き上げ、残りの2割の枠内で機動的に自社株買いを実施するとした(2015年5月追記)。

  産業ロボット以外にも注目(1996ホンダが人間型P2を公表 2000 ホンダが二足歩行型ASIMOを発表 2015 SoftbankがPepper発売 いち早く主として家庭向けに商品化 日本は人型が得意)。サービス業での生産性改善・人手不足対策(人工知能を活用した会話 自立走行 障害物を避ける機能 顧客の案内 店舗の在庫管理 病院内の薬剤の配送など)。介護の現場での介助。など様々な活用が始まっている。

 もちろん 工程の自動化という産業用ロボットのニーズも高まりを見せている。人工知能の活用で入力負担の軽減。表面を柔らかな素材でおおい、人と接触すると停止する協調型ロボットの登場で人とロボットとが同じ作業現場で仕事の分担が可能になった。工業だけでなく食品・物流などへも。

 人件費の上昇が続く東南アジアが次のターゲットとされる。人海戦術からロボット導入で効率化へ。

参考 デンマークのユニバーサルロボット社の製品について 人型でない協調型ロボット

   米アイロボット社のルンバ(2002発売開始) ロボットがヒット商品になったことが注目されている

ロボット脅威論

理屈としては 単純な繰り返しをロボットに頼んで自動化。データの抽出や置き換え、数値計算はロボットの得意分野。人間は創造性や付加価値の高い分野に集中させるというが、ロボットが人間の仕事を奪う=業務の自動化が進展する可能性も指摘されている。ex.コールセンターは自動応答化が進む。産業用ロボットは人間の雇用の場を奪い賃金押し下げ要因になるとも指摘されている。アメリカに比べて、日本はロボット導入が雇用を奪うという意識が働き導入に抵抗が働くとされる。日本はそれに比べてロボットへの抵抗感が低いという。

生産量が増えない中 人件費が急上昇している中国でもロボット導入が活発化している。

協同ロボット 対話型ロボット

工場の中で人間と一緒に働くものを「協同ロボット」といい、人工頭脳を使い対話する対話型ロボットもある。その中でソフトバンクはAIを使った感情を読み取るヒト型ロボット ペッパーを開発(IBMのワトソンの利用 仏アルデバラン 日本のAGI等を買収してロボット作成にいかしているとのこと)。2015年6月から実際に発売している(富士通が2017年10月にも対話型ロボット ユニボで発売で参入するが ペッパーが意外に案内業務などで普及していることが刺激になっているかもしれない)。その弱点は2足歩行できないこと。2017年6月 ソフトバンクはグーグルからロボットの制御技術に優れたボストンダイナミクスそしてSCHAFTの2社を買収した。イオンではSCでの床掃除に業務用のロボット清掃機の導入を決定した(2016年度実験中 2017年度運用手法決定 2018年度本格導入 全国に400台)。

AIの活用

金融機関から入出金データを取得し、入出金の状態、資金取引の状況から即日で融資を決定する(ジャパネット銀行 2016年10月)。銀行の入出金情報 携帯電話料金支払い状況から融資上限 貸出金利決める(みずほ銀行とソフトバンク 2016年11月共同出資会社設立 2017年前半個人向け融資事業開始)。ワトソンを利用したコールセンター応答システム(2017年度2月末まで実験中 順次全350店舗に広げる 問い合わせの初期段階で2割その後4割程度まで自動対応が目標)。銀行 財務分析を行い、大きな変化があれば銀行員に通知する。効率的に取引先に目配りするsystem。リアルタイムで経営支援(北国銀行 2017年4月開始)。口座開設などの自動音声回答化(SMBC日興証券 2017年5月開始)。投資先の選別サービス(決算データを分析して今後1毛月で株価上昇しそうな銘柄を選別予測 大和証券―大和総研 2017年5月開始)。投資先の銘柄の選別サービス(カブコム証券 米アルパカと共同開発 2017年5月サービス開始)。店舗内の商品の補充から配置までをロボットが担う(産業技術総合研究所 2020年実用化目指す)。

Factory Automation: FANUCファナック 三菱電機 安川電機

ファナックは自動改札機や現金自動支払機を世界に先駆けて開発した。しかし同社を有名にしたのは工業用ロボットの開発と製造。国内生産に特化するビジネスモデル。そして先端的な自動化工場ではないだろうか。なお同業には三菱電機 安川電機など(そのほかの関連企業名は末尾に掲げる)。

もともとは富士通の100%子会社富士通ファナックとして発足。2003年度 富士通の持ち分が下がり(30%超から20%未満へ)富士通の持ち分法適用会社でなくなる(2002年には35%強 富士通は売却代金を有利子負債返済にあてる)。その後2009年に富士通は事業面での協力関係がなくなったとて保有していたファナック保有株ほぼ全てを売却した。したがって富士通との関係は全くなくなっている。また同じ2009年には米国での1986年以来のGEとの合弁も解消した(ファナックブランドの浸透で業績への影響は少ないとみられる)。
  株式では持ち合い株をもたないので株式評価損益はないという財務構造。しかし他方で多額の現預金を保有。すぐ行動できる機動力に必要と主張。また配当性向の目標を30%とする(2007年度)など、財務について独自の見識を示している
ファナックは、おそらく世界で初めて組み立てロボットの実用化販売を2004年度に開始した。
これは熟練工並みマイクロメートル単位の精度を実現したというもので家電・自動車向け

全量国内生産 高い海外売上高比率 という独特のビジネスモデル
  繰り返し大がかりな投資をしている。近年では2004年度に生産能力増強投資。2007年度にもNC装置の工場増強。そして2010年から2011年にかけて再び大がかりな生産能力増強投資を行いロボット生産能力倍増している。
  2012年中にもNC装置の生産能力の3割引き上げ(無人のライン 無人昼夜連続一貫生産)
茨城県印西市に新工場を建設(工場規模を倍増).なお山梨県忍野村の本社地区にある自動化工場もよく知られている。内外で分散生産するより低コストとのこと。国内生産は研究開発部門との連携でも有利。仕様変更要請にも即応できる。

  生産しているものは、小型機械に搭載する数値制御(NC)装置。世界の市場規模6割のところ ファナックは約6割生産の最大手 営業利益率6割。小型マニシングセンター(MC)などロボット部門 ロボ部門は欧米向けが約7割。電子部品の実装装置 など。
  中国などで自動化投資が進む 人件費の増加 工場の自動化需要⇒そこで一挙に生産能力倍増へ(2011年度)。
  2011年3月期決算連結純利益が1201憶円(前期の3.2倍)。過去の最高益2008年3月期に迫る。外国人株主比率高い(11年3月末で5割強)
  2013年3月期 連結純利益見通しは前期比7%減の2120億円。売上高は1%減の5310億円。実績は前期比13%減の1204億円(2013年4月26日発表)。
  利益率の高い工作装置向けNC(数値制御)装置(世界で圧倒的シェア 世界の市場規模は約6000億円前後 その世界シェア6割を握る 営業利益率6割ともされファナック高収益の源泉)が中国の景気減速の影響で不振。中国の工作機械メーカー減速の影響受ける(直前には増産報道もあったが)。NC装置を含むFA(factory automation)部の減速。中国などアジア各地で工作機械需要が2012年夏から落ちた。
  一方 iPhoneのアルミケースの加工などに使うロボドリル(金属の塊から外枠を削り出すという)は伸びたが急減。iPhoneの販売伸び悩み。設備投資の一巡が影響。新型iPhoneの販売の遅れ EMSの設備投資の復調の遅れ が販売伸び悩みにつながった。同社は工作機械 ロボットの分野は好調。この業績発表を受けてファナックの株価は一時下落。2013年4月30日 一時4月26日終値比1400円9%安の1万4470円 終値は1万4700円(870円6%安)

国内生産100%のモデル
 スマホ部品加工向けロボットは中国へ ロボリドルとよばれるスマホ向け工作機械(小型マシニングセンター) 自動車業向け多関節ロボットなどが好調 。売り上げは海外が8割(輸出は円建てで為替リスク回避)。中核部品の多くを内製して高い利益率確保。生産は国内生産比率100%。
山梨県忍野村の本社工場(無人工場として知られる 円高のもとでも国内生産でなお競争力を維持)に集中する独特の経営モデル。受注―生産ノリードタイムは平均3ケ月。

産業用ロボットについては日本ロボット工業会が統計。2012年7-9月の出荷額は1093億円で前年同期比18.7%減。内国内出荷額は3.8%増の348億円 ロボット:品質にばらつきがない 急場の仕事もこなせる。人件費の削減、生産性の向上、精密な作業も可能。産業用ロボットの世界シェア(2012年)ファナック27.3% ABB(スイス)23.4% 安川電機17.3% KUKAロボター(独)14.4% 川崎重工業7.5% その他10.1%(日経20140131)

ファナックは茨城県に産業ロボットの新工場を建設する(投資額500億円 2020年までに稼働)。(報道2016年7月)

2014年3月期決算 売上高4509億円(10%減) 純利益1109億円(8%減) 前期にIPhone5の生産に関してEMS向け受注が伸びた反動。ロボマシンの売上高は回復傾向にあるが通期では減少(2014年4月25日)。

2014年4-6月決算。純利益451億円(前年同期の2倍)、売上高1633億円(前年同期54%増)。スマホの金属ケース加工に使うロボドリルの需要の急増。内外の工作機械販売増で搭載されろNC装置の出荷も増えた。

その後2014年9月にIPhone6が発売された向けのロボドリル(スマホ用加工機械)需要やアジアのスマホ組立メーカー向きにロボドリル受注が拡大。世界シェア5割超とされる工作機械向けNC装置需要も好調(国内 中国 米国向け)。2015年3月期の売上高見通し 6882億円(53%増) 連結純利益は1851億円(67%増)の見通し(2014年9月25日)2014年4-9月決算 売上高3426億円(59%増) 純利益943億円(88%増)(2014年10月24日)。

2016年3月期においても ロボドリルの自動車向け販売の拡大 米欧向け需要が伸びたとする。他方で米中国向けのスマホメーカー向けが急減(アップルのアイフォンの金属ボデイを削るロボドリルが急減したとのこと)とのが逆の情報も交錯する。産業用ロボットは 自働車 食品 医薬品など幅広い分野で好調。

同業者としての 三菱電機 安川電機について

三菱電機
 三菱電機(実は主力はFA事業:産業メカトロニクス部門が大きい スマホやタブレット端末の生産工場向け新興国向け セル生産を自動化できるロボットの開発進めている ほかには家庭電器部門 電力向け設備含む重電システム部門 半導体事業で構造改革進める 2012年4-6月期の2012年4-9月期の連結純利益は前年同期比35%減の450億円之見通し。FA機器や電子デバイス事業が不振だった。13年3月期の連結純利益は前期比7%増の1200億円の見通し 経営不振のルネサスには約25%出資していた。12年9月末で手元現金4324億円と手元資金は豊富。
 なお2013年3月期実績は連結純利益が700億円程度。売上高が3兆5600億円。営業利益が1500億円。2014年3月期については国内・韓国・中国で需要が回復することと為替効果もあって 売上で7%増の3兆8100億円、純利益で58%増の1100億円 営業利益で35%増の2050億円を見込んでいる。
 しかし2012年12月に三菱電機は防衛省などに「過大請求」があったことが発覚。違約金延滞利息など773億円を支払うことになった。これは受注した時間に対して実際の業務時間が下回ったときに、他の業務時間を振り向ける手口を繰り返していたというもの。・・・・ということがもともとの業務時間の想定が過大だったことになる。背景には契約後に仕様変更などのニーズがあり、赤字を避けるため過大請求が慣行化していた模様。仕様変更による追加経費を認めない防衛省にも問題があるとされ、改善を検討中:2012年12月現在とのこと。
 2013年3月期業績の下方修正:営業利益見通しを前期比11%減2000億円から33%減1500億円に引き下げと防衛省への過大請求に伴う返納金問題の報道により三菱電機株は下落した。2012年12月25日は一時21日終値比44円安の700円。終値は30円4%安の714円。)

2013年12月末自己資本比率43.9% 1年前から10%強上昇(財務改善) FA機器の需要増 財務体質も改善進む。FA(中国では人件費が上昇している) 昇降機(中国で現地企業合弁が2社 2社合計で2012年に米オーチスを抜く 上海電気集団と合弁) パワー半導体が伸びる。

14年3月末 手元の現預金が有利子負債上回る 自己資本比率42.2%で電機大手では最高に

中国で高機能のスマホを生産するには精密な加工をするため。中国国内でも中小企業に自動化投資に意欲高まる。生産ラインを制御するシーケンサー(三菱のシェアは2割)。工作機械の加工精度を左右するサーボモータに三菱は強い。2014年4-9月期見通し 純利益800億円(2014年7月30日)

 2015年3月期見通し 連結純利益1900億円(24%増) 生産ラインを制御するシーケンサーや工作機械を動かして加工精度を左右するサーボモーターに強み(国内のほか中国 韓国 台湾などに普及)。産業メカトロニクス部門が営業利益の半分を稼いでいる。スマホ向け自動化投資が追い風(2014年10月30日)。中国ではスマホ関連メーカーで自動化投資進む。スマホ関連需要は一服感、人件費高騰を背景に工場の自動化投資は高水準(2015年4月)。スマホ向けは低迷するもFA事業底堅い(2016年2月)。企業の省力化投資根強い、工業の自動化機器販売を扱うFA事業伸びる(2016年9月)

海外生産 それも中国での生産を選択した安川電機

 安川電機(2013年3月期売上見通しは前期比2%減の3000億円。連結純利益は前期比17%減の70億円。2012年4-9月売り上げ見通しは1500億円。自動車部品メーカー向け産業用ロボット 半導体製造装置 スマホ向け制御装置 電子部品や半導体メーカー向けサーボモータオ制御装置 自動車向け産業用ロボットなど 売り上げの半分は制御機器などモーションコントロール 経営不振のルネサスエレクトロニクスから年間20億円 システムLSIやマイコンを購入 2012年10月現在ルネサスへの出資を検討中 中国に現地法人:安川機器人と工場 2012年7月現在 多関節ロボット組み立て工場を建設予定 安川は2011年11月海外生産に乗り出す決断を公表 大手では初めてと話題になった 新興国の成長 為替と自然災害というリスクをにらむ 中国のほかアジアへの輸出をここから進める予定 背景として中国での人件費上昇 中国政府の方針とも合致 しかしその後の中国の減速 日中関係の緊張は計算外か)

2014年3月決算 純利益169億円(2.5倍) 電子部品製造装置に使う制御装置サーボモータ 自動車工場向け産業用ロボット 太陽光発電施設向け機器パワーコンデショナー(電力変換装置)など。円安効果も。

2015年3月期見通し 連結純利益は225億円(33%増)。スマホ製造を受託する中国企業向けサーボモーター需要が伸びている(2014年10月20日)。

2016年3月期。中国で競争力を発揮した分、ファナック同様に中国減速の影響は免れず 中国向けの制御機器は販売減。しかし欧米向け自動車関連メーカー向けに溶接・塗装ロボットが伸びるほか 食品建材など 自働車以外の分野が期待できるとのこと。

なお産業用ロボットの世界4メーカーは、ファナック クーカ(ドイツ) ABB(スウェーデン)そしてこの安川電機(5位が川崎)である。2016年7月 中国の家電大手 美的集団が買収することがあきらかになった。背景には中国でも労賃の上昇から工場の自動化が進んでいる問題がある。安川は美的集団と2015年に産業用汎用ロボットの合弁会社を設立。さらに2016年春には介護リハビリ用ロボットの合弁会社設立に至っている。

そのほかの工業用機械メーカー
 横河電機(エネルギープラント向け制御システム 発電所や水処理プラントの制御システム)
 東芝機械(建設機械 産業機械向け工作機械 金属鋳造部品の製造、金属部品の成型に使う小型のダイカストマシン)
 川崎重工業 多関節ロボット 半導体製造に使うクリーンロボット(同分野で世界1 世界シェア5割)
 不二越 自動車用溶接ロボットなど
 オムロン 工場の流れを制御するFA機器
 キーエンス FA用センサー 工場設備の制御に使うセンサー 研究施設向けデジタル顕微鏡
 コールセル
 叙の目ミシン工業 卓上ロボット スマホ向け組み立てロボットを生産
 台湾のデルタ 
 ナブテスコ 産業ロボットの関節に使う精密減速機で世界シェア6
 スウェーデンのABB
 ドイツのKUKA 

This blog has written by Hiroshi FUKUMITSU. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author. Original version appeared in May 12, 2013. It was corrected in June 11, 2017. 


Case Studies 

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