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2012年12月19日の韓国大統領選挙を控えて

 韓国の大統領選挙(2012年12月19日投開票 11月27日選挙戦開始)は与党セヌリ等のパク・クンヘ(朴槿恵)候補と、野党民主統合党のムン・ジェイン(文在寅)候補(ノムヒョン前大統領の盟友 盧武鉉政権では主席秘書官 秘書室長)の事実上の一騎打ち。争点は財閥改革のあり方だとされる。文氏は循環出資構造(中核企業を先端に系列企業の出資関係がA-B-C-Aというように循環構造となっているとのこと)の3年以内解消(新規は禁止 既存は3年で解消)を主張している。

 なお現職の李明博大統領の評判は竹島上陸強行移行、日本では下がる一方だが、韓国内では、野党がウオン安誘導政策など大企業を念頭に置いた政治を展開したなどの批判をしているようだ。ウオン安政策については、急激な変動を回避するスムージングオペレーション(過度な評価を適正ラインに戻すものの範囲内)との主張が政権側にはあるとされる。また企業よりとされる規制改革にしても、雇用拡大を意図したものとの弁明があるようだ。
 とはいえ実兄など側近が不正資金をめぐる疑惑で逮捕された点は弁明の余地がない。実兄逮捕から1ケ月後の2012年8月10日 現職大統領として初めて竹島上陸を強行して日韓関係を意図的に悪化(緊張)させた行為は、政治的窮地に陥った自分を救うために禁断の外交カードを切った疑問が残る。竹島に自筆の石碑を残したことにも、政治的窮地にあった自分を国民的支持の高い「竹島(ドクト)上陸」で転換し、さらに自分の名を残そうという売名(政治的打算)の匂いを感じ、評価はできない。竹島問題については、両国国民とも妥協を望んではいないが、同時に緊張を高めることも望んでいない。
 李明博政権下では所得格差は拡大したとの批判もある。李明博は2007年の大統領選挙で就任。任期は2013年2月までに迫った。彼が廃止した出資総額規制(出資に使える金額を純資産の一定割合に抑えるもの)を、野党大統領候補のムン氏は復活させると主張している。

 これに対して与党候補の朴氏は財閥を正面から規制するのではなく、独占禁止当局の独立性強化(公正取引関連法の強化 循環出資については新規出資の禁止)、商店街や中小企業の保護を主張している。
 対北朝鮮政策では対話再開で両候補は一致するも、ムン氏の方が融和姿勢が強いとのこと。
 対日関係では韓国内では、1965年の日韓国交正常化交渉は、軍事政権の朴正煕大統領のもとであったとして、経済協力を得るために十分な過去の清算が行われなかったとの批判が韓国内では強く(なお1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言 過去の歴史への反省とお詫びが記されている)、誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。
 第二次大戦後の日韓関係は、朝鮮戦争直後の1952年に、李承晩ラインの設定の一方で国交回復交渉が始まったが、韓国側から損害賠償請求が行われたのに対して、日本側が没収財産の返還を求めて難航した。1961年に朴正煕はクーデターを起こし、1963年に大統領に就任した。朴は、近代化資金を得るため対日交渉を進め、1965年日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約を締結した。これにより3億ドルの無償供与 2億ドルの有償供与を日本政府が韓国政府に行い、別に日本企業が3億ドルの資金協力を行った。これに対して韓国政府は対日請求権を放棄した。条約には明白な謝罪の言葉を含まれていなかったので、これらの無償有償の資金協力の「性格」には曖昧さが残された。この1965年当時、朴正煕が進めた対日交渉について、韓国民の間では不満が強いとされる。
 そのお詫びの言葉はその後1998年 金大中大統領と小渕敬三首相との間で日韓共同宣言で過去の歴史への反省とお詫びが記されるなど繰り返されているものの、この1965年条約で、過去の清算をあいまいに決着した歪みは、対日関係で本当の意味での清算が終わっていないという、わだかまりを多くの韓国人に残す結果になっている。先ほども述べたが誰が大統領になってもこうした国民感情から離れた対応はむつかしいようだ。

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