Entrance for Studies in Finance

ARS CDO CDS

ARS auction rate securities
地方自治体などが発行し、一定期間ごとに利回りがオークションなどでみなおされるというもの 有利な資金調達ができるとして急速に普及 市場規模は3300億ドルに達した(2007年)

信用不安の高まりで2007年末から金融機関にARSを引け受ける体力がなくなり、2008年初から投資家はARS売買困難に 

このようなリスクの説明が不十分だったとしてNY司法長官が調査 UBS シティなどは和解に応じて投資家から額面で買い戻し。相場は半額以下にさがっているものもあり損失が広がる見込み。すでに買い戻し額は350億ドルを超えた(08/08/10)
15日にはワコビアも和解。その後 メリルリンチ ゴールドマンサックスなども応ずる。買い戻し額は500億ドル近い(08/08/22)

CDO certificates of debt obligation
CDS credit default swaps
米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ 1938設立 1968民営化)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック 1970設立)は住宅ローン担保証券の元利払いを保証している 延滞率が上昇すると損失 債券も発行 
住宅ローン11兆ドル 両社絡みの住宅ローン担保関連資産5兆2000億ドル(5兆ドルともいわれる)社債は1兆6000億ドル発行 うち1兆2000億ドル(1兆5000億ドルともいわれる)を海外の機関が保有
なおサブプライムローンは1兆ドル うち焦げ付きは0.4兆ドル
RMBSをさらに証券化したものがCDO債務担保証券 2006年から2007年 全世界で1兆ドル発行された。モノラインという金融保証業者(MBIA アムバック FGICなど自身の財務体質が悪化 もともとは地方債の保証業務)による保証が信用を支えていた。

CDO取引 相対で1本あたり10-50億円

メリルリンチが08年4-6月期決算のあと85億ドルの増資を発表した裏にはCDOでの損失があった。当初価格の2割ほどでローンスターに処分。このことが他の金融機関にも波及した

CDS 引き受ける側は清算時に額面で引き取る義務を負う代わりに保証料を受けている(引き受ける側の負担は額面ー清算価格) CDSによって証券化取り引きの安全性は高められたはずだった。

07年末の想定元本は62兆ドル(6600兆円)1年前の8割増し 
08年6月末には54兆ドルと減少。ISDA調べ。詳しい統計が存在しない 清算により保証した金融機関が損失を受ける可能性も指摘されている 

CDSを組み込んだCDOもある これはCDSを束ねたもの CDSの保証料を裏付け資産とする合成CDO

AIGが政府管理下で経営再建をすすめることになった背景に同社がCDSの引き受け手だったことがある(リーマンもCDSの売り手だった)。その保証残高は08年6月末で4000億ドル(全世界の取引残高は54兆ドルとされる)。生損保事業の薄くなった利ざやを新規事業で補おうとしていた。しかし保証元本の支払いを求められたり、AIG本体の信用力低下を補うための現金担保の追加などで、資金繰りが悪化した。

アメリカ政府がリーマンを救済せずに倒産させたことでCP市場が崩壊しただけでなく、CDSの仕組みも突然当事者が消え去り、リスクヘッジ機能が失われ大混乱に陥ったのである。

清算価格の決定 ISDA 08/10/06 政府管理下に置くという決定が清算理由となった
優先債務 ファニーメイで元本の91.51% フレディマックで94%
劣後債務           99.9%          98% 

リーマンの経営破たんでは、このCDSの機能がよく示された。08年10月10日にリーマンのCDSの清算価格が8.625%と決まった。CDSを契約している側は、この8.625%に加えて残りの91.375%をCDSの売り方(保証している側)から受け取る。売り方である証券会社、保険会社、ヘッジファンドなどは想定元本約4000億ドルの91.325%の損失がでる(実際にはリスクヘッジをしているため損失はこれより小さいとみられる)。

リーマンの破綻(08/09/15)ではリーマンに貸していた株がもどらなくなった(民事再生法適用による資産保全命令) 逆に株を借りていたヘッジファンドが株の返済を迫られ一部の株が値上がりした 外資系金融機関の資金調達の金利跳ね上がった(年0.5%→0.7%以上) 資金コストがあがったため現物が先物に比べ安くなっても裁定買いが入らない(値下がりが続く) CDS一部銘柄の信用保証率が高どまりしている

CDSの清算機関の設立をNY連銀は求めている 専門機関で集中決済 リスクの全体量が把握しやすい

カバードボンド(covered bond)
米国で普及している住宅ローン証券化商品は売買されると発行体との関係がきれる。高利回りであるがリスク高い。
ヨーロッパではカバードボンドが住宅ローンの資金調達手段として使われている。「銀行が住宅ローンをバランスシートに保有したまま、一種の担保権を設定して発行する債券」で通常は満期一括償還。発行体は銀行本体(もしくは連結された特別目的金融機関)。銀行は担保となっているローンを確実に回収し、投資家に元利払いに務める義務を負う。銀行にとってオフバランス効果がないが、返済に窮した債務者の条件変更に柔軟に応じる余地がある(参考 小林正宏 大類雄司『世界金融危機はなぜ起こったか』2008, 175-178.)。


集中講義:サブプライム問題
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
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