Entrance for Studies in Finance

円安でも改善しない貿易収支赤字

歴史的円高から円安への展開 米経済指標の改善がドル買いを支える(2014年3月)
米金融緩和の縮小 米金利上昇 日米金利差拡大 円安追加緩和への期待エネルギー関連企業の円売りドル買い 1ドル107円を目指す円安(2014年2月)日本に輸出した海外企業(海外のスマホメーカーなど)の円売り貿易赤字(エネルギー関連企業の円売り 燃料輸入の増加 国際競争力の低下 海外生産移転 輸出数量の減少 輸入増)我が国の経常収支(1980年代から黒字を保っていた) 
2013年秋に赤字転落 月を追って赤字幅拡大(円安による輸入金額増加)
2013年経常収支黒字大幅縮小 3兆3061億円の黒字 前年比31.5%減 燃料輸入の増加 製造業の海外移転による輸出減少 海外移転のため円安になっても輸出がそれほど増えない 輸出回復が遅れている(円安で輸出が伸びるJカーブ効果は限定的⇒貿易赤字の拡大続く)電機産業など競争力の低下(テレビパソコン通信機器など得意分野失われるという構造変化が起きている) ブランド力の低さを指摘する声もある 海外景気のもたつき 産業によっては供給過剰 輸出でアジア向け比重増加(半分以上はアジア向け) 円建てが多いため円安効果小さい2013年暦年の貿易収支赤字(赤字は3年連続)はの前年比4兆8258億円拡大 10兆6399億円サービス収支1兆5950億円の赤字 前年比で赤字は縮小所得収支16兆5318億円の黒字(前年比15.8%増加 海外からの配当金増加)2013年の貿易赤字(通関ベース)は11兆4745億円の赤字 昨年は6兆9410億円の赤字を65.3%上回る2013年12月 6386億円の経常収支赤字(単月で過去最大の赤字 赤字は3ケ月連続)2014年1月 1兆5890億円の経常収支赤字(単月で1985年以降で過去最大)2014年1月 貿易収支2兆7899億円の赤字(単月で1979年以降で過去最大 貿易赤字は19け月連続)新興国の資金流出やリスク回避傾向は 円高要因(通貨への信頼あればこそ 経常収支赤字化 日銀による国債ファイナンスなどが懸念)経常赤字 国債消化懸念から 金利上昇シナリオ(国債市場動揺)

 
なお2013年度では13兆7488億円の貿易収支赤字。赤字はやはり3年連続。統計で比較できる1979年以降で最大最長。輸入で原油 液化天然ガスが増えたほか、円安で輸入原材料価格が上がったことで増え84兆6052億円。17.3%増。輸出は70兆8564億円。10.8%増。前年度より増えたのは3年ぶり。自動車や航空機エンジン部品などが好調。生産の空洞化が進み(部品の輸出の減少 製品の輸入の増加 自動車 太陽電池 スマホなど通信機器 日本企業の海外子会社からだけでなく海外企業が生産するものが増えている)貿易赤字拡大。
 
円安のあと 輸入が膨らみ その後次第に輸出が伸びるJカーブ効果が、構造変化のため現れず、貿易赤字が常態化。
経常収支黒字2007年25兆円 2010年18兆円 2013年4兆円 背景は貿易黒字縮小 工場の海外移転 エネルギーや製品輸入の増加 経常収支赤字化懸念 基軸通貨国でない日本は外資流入が保証されない 金利上昇リスク GDPの2倍以上の政府債務(2013年末で1017兆円) 必要なものは財政再建の努力とイノベーションによる輸出伸長 世界最大300兆円の対外純資産 所得収支の黒字は厚いが 海外移転した企業 部品の現地化 企業の輸出競争力の低下 実質金利押し下げ 長期金利水準押し下げ+期待インフレ率上昇=実質金利押し下げ 内外実質金利格差拡大 円安 国債の大量購入による金融緩和がもたらした円安により物価改善効果が生まれた(2013年11月 1.2%上昇 うち0.7%は円安によるエネルギー価格上昇効果⇒物価上昇率が2013年8月からプラスに転じたことで実質金利がマイナス化 物価上昇率>長期金利 となるため → 理論的には設備投資を増やす効果があるが企業が中期的な経済成長期待を抱くことがが条件 なお理屈上は予想物価上昇率を使うべきだが便宜的に実際の物価上昇率が使われる)。2013年11月の実質金利はマイナス0.6%。また実質金利の下落は金融資産価格を刺激する効果(株価上昇)がある。米国やドイツ、イギリスでは実質金利は2012年から2013年にかけて上昇している。日本では2013年夏から年末にかけて急落。実質金利での日米金利格差は拡大している。これは円安圧力になると考えられている。 ドルと円 ドルは基軸通貨なので投資しやすい 金利差が拡大するとキャリートレード 円売り 日本でインフレが起きればそれも円売りにつながる 新興国への不安 安全資産ドルへ 米国金利下がり日米金利差縮小。 逆に新興国への不安が後退すると 日本へ資金は流れる 金利差拡大 他方でもう一つの狙いである、金融機関のバランスシートの組み替え、ポートフォリオリバランス効果は十分ではないとされる(12月の銀行貸出平均残高は前年同月比2.6%上昇 ただしその内容は国内投資の増加よりは電力向けや海外M&A向けが中心)。 この国債消化懸念を抑えているのが日銀による異次元量的緩和による日銀の国債大量購入(国債利回りの押し下げ)。問題はこの政策の出口。日銀が出口を探し始めた段階でまず長期金利の上昇が懸念される。合わせて為替が円高に振れる可能性が高い。金利の上昇は政府債務残高の急増につながるとされ財政健全化に逆行する。国債価格に急落、名目金利の高騰が懸念される。

逆にインフレと低い名目金利の両立を図ることを急げば、日銀の国債購入額の際限ない増加と、インフレそのものの加速が懸念される。発行額の7割を日銀が購入することで、国債市場取引が縮小(市場機能の低下 特に100億円単位の大口取引に支障。)。国債購入の回避には流動性低下による保有リスク拡大という指摘もありそうだ。  ここでportfolio rebalance効果については、保険会社については2010年4月のソルベンシーマージン計算方法の改正により、リスクを高められた項目(株式 不動産)については相当に減額の意識が高まることと、どのように均衡するかが注目される(改正した方法での開示は2012年度から)。

このときリスク係数の対する信頼水準の引き上げ(90%から95%)とともに、各資産項目のリスク係数が見直された。国内株式10%→20% 国内不動産 5%→10% 邦貨建て債券1%→2%。外貨ものについては為替リスクが新たに10%.そのためか他方で外国株式は10%のまま 外貨建て債権(貸付と債券)は5%→1%に下げられた。この改正の影響は全体としては国内株式を減らして日本国債への流れを強めるものと考えられた。

日銀が動かないとしてもすでに米FRBが金融緩和(量的緩和)縮小にかじを切っている(2013年12月)。米経済の回復 米国の量的緩和の縮小は米国の長期金利の上昇につながり、金利差が開けば、ドル買い・円売りになる。しかし それに伴って日本の長期金利が上昇する懸念がある。金利上昇は国債の債務負担の上昇にもつながる。ただ市場は4月の消費税引き上げ後の景気下振れに対して、現在の量的緩和の継続だけでなく日銀が追加緩和に踏み切ることを期待している側面がある。その期待もあって長期金利は0.6-0.8%の間で振れると予測されている(2014年1月)。

 
半面 米国の経済指標の改善が弱いと米国の金利引き上げにストップがかかり 金利差は広がらない。米国はすでに緩和縮小にかじをとり2014年内にFRBによる資産買い入れ終了の見通し。他方 日本では日銀による大量の国債買い入れは続く見込み。構造的な貿易赤字で、輸入企業の基調にはドル買い(ドル資金の手当て)ニーズが円安基調を決めている。

「金融政策の運営は、今後とも2%の物価安定の目標を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する。その際、経済や物価情勢についてリスクを点検し、必要な調整を行う」(日銀総裁会見2014年4月30日)

なお為替相場については 理論的な整理も必要。外国為替相場の学説 キャリー取引 FX 
現在 円安の効果として 国内生産への回帰(輸入品の価格上昇 国内製品:鮮度、安全性) 輸出産業の収益改善(企業の想定レートは円高リスクを考慮してやや円高 そのため円安に振れると利益が出やすい) → 貿易赤字縮小が期待されている(新興国での生産過剰が輸出の壁になっているとも) 輸入物価の上昇 などが注目されている 


 2013年1月上旬には88円前後の水準。そこから円安さらに進む。円安は利益の押し上げ効果高い。企業の想定レートは対ドルで90-95円。平均93.3円。企業は保守的(円高にみている)。対ユーロで120-125円。平均121.8円。主要輸出企業30社。98円とした場合の利益押し上げ効果は30社合計で6283億円。ただし企業は為替の変動に収益が左右されることをリスクと考えている。対策として
①新興国や北米への生産移管を進める②部品のドル建て調達を増やす。
 製造小売り業では◎ 原材料価格 商品仕入れ価格の上昇 必ずしも価格転嫁できない。
◎ 機能や品質を上げた中価格帯にシフトする
◎ 海外売上高を上げることで為替リスクを分散する  新興国通貨安(新興国シフトを進めた企業ほど影響を受ける)
◎ 仕入れコストが上昇し現地事業の採算が悪化する(組み立て型の生産がおおいため)。
◎ 新興国で稼いだ利益の目減り。 委託生産による為替リスクの転嫁   海外調達比率の拡大(海外生産の場合は調達の現地化)   海外生産(現地生産:消費現地での生産)の拡大
   国内売上高比率の引き上げ
  製造コストの上昇   コスト削減努力(品目数の削減 経費節減)   部品の共通化 点数削減 原価低減策   部品の海外からの調達   付加価値の高い製品への移行   値上げ交渉
   販売価格引き上げ  外貨での借り入れ  取引の円建て化  金融商品での対策   為替予約    為替先物 輸出企業によるドル売り・円買い   為替オプション 輸出企業による円買い権利購入ニーズ(円高警戒時)
 生産の場合は外貨建ての調達
 投資の場合は外貨建ての借入

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