炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

葉山の家のこと

2011-09-05 09:06:15 | Weblog
 昨日9月4日の民放テレビ番組で、葉山の一郭に新築の家屋をたてる経過が紹介されていた。私は建築の専門家ではないが、様々な側面から建築のことを体験している。その立場から、気になったことを述べておく。

 一つは、地面での蓄熱暖房のことである。番組の最初の部分に電気温熱パネルを基礎の下に敷き詰めている場面があった。冬場の暖房として、夜間電力により建屋の地面を暖めておこうという建て主の趣向である。これにより多額の暖房費が節約できるという主張である。
 温熱パネルを地面に敷き詰め、電線をカシメ接続する。その上に土をかぶせ、さらに土台のコンクリートを打ち込む工法をとっていた。私は、こんな工法をとるべきではないと即座に思ったものである。
 温熱パネルは電気製品である。電気製品には経年変化による寿命がある。従って保守が必要であるが、この工法では保守ができない。内部に何らかの障害が発生してもこの修理はできない。
 経年変化ばかりではなく、地震により電線の接続が破断したら、使い物にならなくなることは避けられない。温熱パネルを土台でがんじがらめにすれば、地震で破断することもあり得るではないか。葉山の付近には活断層があり、これにより大地震が近々起こりうるという専門家の話題を耳にしたことがある。
 建築の設計者は、これには反対の意見があったのではないかと想像する。施主の意向が強く働いていることは番組から察せられた。この番組を見て、これはいいアイディアと思った方もいるかも知れないが、保守が困難な暖房システムであることは留意しておく必要がある。

 いま一つある。
 木造建築の外側は金属の網を貼り付け、これにモルタルを塗りつけている。これを建築家はラス・モルタル壁といっている。多分、木造建築で用いる日本独特の工法ではないかと思うが、私は、この工法を木造にもちいるのは欠陥工法であると考えている。
 建築後20年ほど経過したラス・モルタル壁の風呂場を改築したことがある。なんとこの壁は簡単に外れる。その理由は、金属網を止めている釘が水分のせいで酸化し、もろくなっているからである。壁の内部の木は腐食が進んでいた。
 ラス・モルタル壁に微少な空隙があって、水分がしみこむと壁を支える釘は容易に酸化して強度が低下する。壁の強度が低下することで、この空隙はさらに広がる。特に塩分を含んだ海風は怖い。葉山はまともに海風が吹き付ける場所にある。
 この塗り壁、ご丁寧に家の内側にまで塗りつけているから、この壁の内部の木構造物は息もできない。建築費用が意外に高価になっていたが、この塗り壁による費用のためではないかと想像した。木造建築の場合は、木が呼吸をして家屋全体を支えていることを知るべきである。このことは日本古来の木造建築である五重塔に学んでほしい。木造の躯体である柱は空気の流通にさらし、呼吸させることでコンクリートよりも長持ちすることは建築にあたる者の常識であると信じている。

 2011年9月4日の民放番組のなかで、ここで述べた工法が気に入って採用しようと思われた施主がいれば、一考することをお薦めしたい。
(農)

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