炉端での話題

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緑色発光素子の話題

2010-08-16 17:31:13 | Weblog
最近になって緑色の発光素子として、LEDと呼ぶ発光ダイオードとかLDと呼ばれるレーザーダイオードが新たに開発されて話題になっている。

どうして緑色の発光が重要なのだろうか調べてみた。
緑色光は他の色の光よりも水中では遠方に届くという。また液晶テレビのように減色法によらない、プラズマ・ディスプレイのような発光加色法によるディスプレイは緑色を用いると色彩の再現範囲が広くなる。
ウィキペディアを引用しながらその理由を述べる。照明とかカラーテレビなど光学装置の開発にあたり、1931年に国際照明委員会(Commission internationale de l'éclairage、CIE)が、最初の図に掲げたカラー・トライアングルにより、単色の原色の定義として、波長を435.8ナノメートル(青)、546.1ナノメートル(緑)、700ナノメートル(赤)と規定した。ウィキペディアでは「このトライアングルにある赤と紫の限界の波長を現行のディスプレイで表現するには発光効率が非常に低くなるため、この三原色を実際に使うディスプレイ類はない」と断言している。
この断言を覆すディスプレイを実現するのが緑色の発光素子といえる。
CIEが示したカラー・トライアングルの図によると、緑色としては、前述の規定にもかかわらず530ナノメートル付近が理想的である。546ナノメートルを緑色とするカラー・トライアングルでは緑色と青色の色彩表現範囲が極めて狭い。

ここで緑色発光素子のバトルをひもといてみよう。
2008年米国では、三菱が緑色レーザーダイオードによるテレビを発売している。このレーザーダイオードは808ナノメートルの赤色発光のLDを源として532ナノメートルの緑色に変換する構造になっているので効率が低い。
緑色発光を行わせることができる材料として、窒化ガリュウム(GaN)が1960年代から注目されていたが、GaNは結晶成長が難しいこともあって、研究開発に長い時間を要しながら実用化されなかった。中村修二氏が日亜化学工業において、GaNを素材とした発光効率2.7パーセントの青色発光ダイオードが市販されている。この中村氏による青色発光素子開発にかかわる様々なエピソードは記憶に新しい。
GaNは、大きな単結晶として製造するのが難しかった。IEEEのスペクトラム2010年7月の雑誌には、ポーランドの小企業であるAmmonoが、約5センチメートルの大きさの純度の高いGaN単結晶を量産できるようになったと報告している。この記事を少しばかり引用する。Ammonoは1993年からGaNの単結晶を製造する試みを始めたが、失敗を繰り返し資金難におちいった。1999年秋に日亜化学工業は、この苦境にあたり、中村修二氏が参画するプロジェクトを立ち上げて共同研究投資を開始した。ところが中村氏は間もなくカルフォルニア大学サンタバーバラ校に移籍し、このプロジェクトに暗雲がたれ込める。あらたに日亜化学工業は神原康雄氏を数ヶ月に数週間滞在する派遣を行って、このプロジェクトを支えた。2003年頃には、およそ2センチメートル程度の大きさの単結晶ができるようになっていたが、日亜化学は様々な理由からこの事実の発表には応じなかったという。Ammonoは、ワルソーの北25キロメートルのところにある約50名の会社であり、精力的にさらに大きなGaNの単結晶を開発しているという。現在の5センチメートルの大きさのレーザーに使える単結晶の価格は5000ドル程度であるが、量販には1000ドル程度まで低価格にしなければならないであろうと開発に携わっているDwilinskiが言っている。
日亜化学工業は2008年に488ナノメートルの緑色発光素子を発表しているが青色の範囲であった。おりしも2009年7月には住友電気工業が531ナノメートルの波長による世界最初の緑色GaNレーザーダイオードを発表している。
日亜化学工業は、2010年8月から連続動作50mWの緑色半導体発光レーザーダイオードをサンプル出荷すると報道しているからまさにバトルの最中である。ただし発表記事に緑色の波長は記載されていない。

この8月15日に家電商品売場を訪れたところ、発光ダイオードを用いたテレビを見かけた。これはスゴイ、表示画素をLEDにしているのかと早合点する。よくよく聞くとバックライトにLEDを使用している液晶テレビであり、まことのLEDテレビとは言い難い。いまは屋外に設置された大型の通称フルカラーLEDテレビは、発光素子にLEDを使用している。昼間でも明るく遠くからも視認できる。居間に設置するためのまことのフルカラーLEDテレビはまだ販売されていない。しかしながら、美しい発色のLEDテレビがやがて店頭に並ぶことは予想できる。そのためにはLEDを画素、つまりピクセル単位まで微少化しなければならないから、実現までにはいま少し時間がかかるであろう。

最近になって、黄色を組み込んだ4色液晶テレビも出現している。緑色発光素子の出現によって、発色の良さを競うような、これまたテレビ商品でのバトルとなりそうである。
(納)


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