ダマスカス留学生有志による情報ブログ

ダマスカス留学生有志とそのOBがアラビア語やイスラームについての情報をお送りします。

過激派組織「IS」が本当のイスラームと違っている理由

2014年11月06日 | new◇イスラームとテロ

日本では、テレビやメディアで「IS(アイエス)」のことを、「イスラム国」という名前で呼んでしまっているため、彼らのしていることがイコール、イスラームの教えだ、と誤解してしまう方がいるかもしれません。

しかし、世界中の大多数のムスリム達は、彼らの行っていることをイスラームの教えに沿っていない、と批判しています。


日本では、中東やイスラーム諸国からのニュースは取り上げられないので、知らない方も多いかもしれませんが、実際に、世界中のイスラーム学者達は、ISのトップに向けて、忠告する公開書簡を送っています。

その書簡の要点(実際の書簡はA4にして32ページの詳しく丁寧な物です)の日本語訳を、こちらに掲載します。

 

彼らの言動には、イスラーム学者たちがこの文書の中で指摘するような、イスラームに反している点が、いくつもあります。(この書簡の要点で取り上げたものだけでも、24点あります)

日本でも以下のように、声を発している有識者の方たちもいます。

 

「現実にイスラム国がやっていることは、元来のコーランやイスラムの教えとはまったく違う。

罪もないシリアの人々から強奪し、言うことを聞かなければ虐殺すらする、

名ばかりの“イスラム”にすぎない・・・」(奥田敦 慶応義塾大学教授)

参照:http://www.kanaloco.jp/article/78513 神奈川新聞


ただ、彼らのことを、ムスリム(イスラーム教徒)ではない、と断言することは誰にもできません。イスラームでは、信仰は心の中のことで、人が判断することではないからです。

アッラーを信じていると言っている人が、殺人を犯していても、盗みを働いていても、どんなひどい犯罪をしていようと、他人が、あなたはムスリムではない、と言うことはできません。イスラームの教えから完全に逸れてしまい、アッラーに背いている状態であっても。


日本では、もしかしたら誤解されている方もいるかもしれないので、繰り返しますが、彼らのことを日本では、テレビや新聞で、「イスラム国」と呼んでしまっていますが、ISはイスラームの教えに沿っているわけではまったくありません。イスラームとは逆のことをして、イスラームに背きながら、彼らは自分たちのことを「イスラム国」と自称しているだけなのです。 

その名前だけで、イスラームを体現しているように誤解されている方がいたら、どうか教えてあげてください。イスラーム世界では、イスラーム学者たちやイスラーム団体が、彼らに、以下の書簡を送って、彼らが自分たちが間違っていることに気づくことができるよう、誠実に忠告をしています。


彼らの言動のどこがイスラームに沿っていないかは、以下の書簡の内容の要点をお読みいただいて、ご理解いただければ幸いです。

 

慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において 

イスラーム諸団体からISIS(イスラム国)への公開書簡の要点より

(イスラームの教えに反する彼らの言動⇔イスラームの重要な大原則) ※一部意訳

書簡の詳細は、http://lettertobaghdadi.com/

 

1.イスラーム法の見解を出す事が許されるのは、イスラーム法基礎学の文献で述べられている「ムフティー(イスラーム法学の見解を出すため、イジュティハードが可能な者)の条件」を満たす者だけであり、それ以外の者は勝手にイスラームの名のもとに見解を出してはならない

また、クルアーンやスンナ全体を考慮せず、クルアーンの一節或いはその一部を単独で根拠に引用し、独自の見解を出してはならない


2.イスラーム法的見解は、アラビア語に精通している者しか出す事は出来ない(訳注:アラビア語話者と言うだけでは不十分で、アラビア語学の専門的知識が必要)

 

3.イスラーム法を安易に考え、イスラームの専門的知識の無い者達に任せてはならない

 

4.イスラームにおいては、ムスリム社会に住む者なら誰でも知っている様な根本的な事以外においては、学者間の意見の相違が許される余地がある(訳注:自分達の意見のみが正しいイスラームで、他の意見は間違っていると見なしてはならない)

 

5.イスラームにおいては、法的見解を出す際に、適用対象の「現状」を考慮する必要がある

 

6.イスラームでは、無実の人を殺す事を禁じている

 

7.イスラームでは、(訳注:例え敵であろうと)使者を殺す事を禁じている。ジャーナリストや援助団体の職員たちは使者と見なされるので、殺してはならない(訳注:使者のみならず、戦いの際でも敵方の非戦闘員を害する事は禁止)

 

8.イスラームにおいて、「ジハード」は防衛的なものであり、且つ、イスラーム法に沿った原因、方法、目的を満たさなければならない

 

9.イスラームでは、明らかに不信仰な言動を行った者以外は、不信仰者と見なす事を禁じている

 

10イスラームでは、啓典の民に、害を加えてはならない(訳注:啓典の民のみならず、宗教を理由に、無実の人を害してはならない)


11.ヤズィーディー教徒は、啓典の民と見なされるべきである


12.イスラームにおいては、イスラーム学者達が一致してその放棄を認めた奴隷制を、復活させてはならない


13.イスラームにおいては、宗教の強制を禁じている


14.イスラームでは、女性の権利を尊重しなければならない


15..イスラームでは、子供の権利を尊重しなければならない


16.イスラームでは、刑罰を適用する前に、公正さと慈悲を保証する正当な手続きを経なくてはならない(訳注:専門知識があり、公正で慈悲に満ちた見解を出せる裁判官の裁定なくして刑罰は実行されない。イスラームの刑罰は、少しでも疑わしい所があれば実行されない)


17.イスラームでは、人々を拷問にかける事を禁じている


18.イスラームでは、死体を痛めつけることを禁じている


19.イスラームでは、自分が行った悪事を至高なるアッラーのせいにする事を禁じている


20.イスラームでは、預言者様達(彼らの上にアッラーの祝福と平安あれ)やサハーバ(彼らの上にアッラーのご満悦あれ)の御墓等を破壊する事を禁じている


21.イスラームでは、統治者が人々の礼拝を許している限り、明確な不信仰の言動以外の理由で、統治者に謀反を起こす事を禁じている


22.イスラームでは、イスラーム共同体の合意(イジュマーウ)なくして、カリフを宣言してはならない


23.自分の祖国に属する事は、イスラームにおいて合法である


24.イスラームでは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の亡き後、必ずしも全員がヒジュラをしなければならないわけではない

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イスラーム世界の本当の問題は、ムスリム達の、自分の宗教に対する無知や無学です。

ムスリムであっても、クルアーンを読んだことがない、イスラームの教えを学んだことがない、という人たちが、イスラーム世界に大勢いること、です。


ISと戦う武器は、「教育」です。正しいイスラームを知ってもらうこと、これが彼らを一番弱体化できる戦力です。


この書簡によって、間違った主張に騙されるムスリムの若者たちが、これ以上増えませんように。


日本のメディアの偏見や誤解を産む呼称による悪影響で、まったく関係のない日本中のムスリムの子どもたちに、憎しみや偏見が向けられることがありませんように。

 

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