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「マニアたちがお宝めがけて~」は魔法の合言葉(危険)(Jan 20, 2015)

2015-01-20 19:59:24 | 時事ネタ(国内)
2008年8月のことになるが、一部の人達の間で聖地(?)とされている東京ビッグサイトのエスカレーターで逆走事故が起きた。
事故直後から、この原因について色んな説が飛び交っていたが、昨日になって国土交通省(Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism:MLIT)の社会資本整備審議会が事故に関する調査結果を公表した。
・ボルトの緩みが原因 東京ビッグサイトのエスカレーター逆走 (2015年1月19日 nikkei.com)

なんでこれだけ調査に時間がかかったのか、という疑問はこの際置いとくとして・・・。
とりあえず、2015年1月19日分 nikkei.com『ボルトの緩みが~』を全文(略)

---- 以下引用 ----
大型展示場「東京国際展示場(東京ビッグサイト)」(東京・江東)で2008年8月、上りのエスカレーターが急停止後に逆走して10人がけがをした事故で、国土交通省の社会資本整備審議会は19日、ボルトの緩みでモーターの位置がずれ、ステップを動かす歯車に動力が伝わりにくくなったことが原因とする報告書を公表した。

 事故当初は利用者が殺到したことによる重量オーバーが原因との見方もあったが、報告書は「乗っていた人数は積載荷重をやや上回る程度だった」と否定。
メーカー側の安全管理に問題があったと結論付けた。

 事故は08年8月3日午前10時すぎに発生。
ビッグサイトではこの日、アニメのフィギュアを展示・販売するイベントが開催され、同10時の開場前から約1万人が詰めかけていた。

 事故のあったエスカレーターは4階部分に設置したモーターの動力をチェーンで歯車に伝え、ステップを動かす仕組み。
高低差は約16メートル、長さは約30メートルあった。

 報告書によると、ボルトの締め付けが不十分でモーターを載せた土台が約4センチずれていた。
このためチェーンが緩み、動力が歯車に十分に伝わらず減速。
安全装置が異常を検知してモーターを停止したが、チェーンが滑って逆走を始めた。
ブレーキの制動力では乗っていた人の重量を支えきれず止められなかった。

 重量オーバーが逆走につながった可能性については否定した。
事故機の場合、建築基準法で積載荷重は体重65キロの人を117人運べる設計であることが求められるが、映像の分析から乗っていたのは約120人と推定され、わずかに上回る程度だった。

 エスカレーターを製造管理する日本オーチス・エレベータ(東京)は、事故の5日前に保守点検をしていたが、「異常なし」と報告していた。
国交省の担当者は「ボルトの緩みなどがなければ事故は起きなかった」と指摘する。
---- 引用以上 ----

当然というか、報告書では、事故当時エスカレーターに乗っていた人達の体重を考慮した分析も行っていた。
・東京都内エスカレーター事故調査報告書(2015年1月19日 mlit.go.jp;.pdfファイル)

参考までに、2015年1月19日分 mlit.go.jp『東京都内~』から『3.2 可動ベッドのずれに関する分析』の一部を(略)
なお、以下の引用部分では一部文字を文字化け回避のため訂正している。
専門用語が多いのは仕様ってことで(汗)。

---- 以下引用 ----
(中略)
3.2 可動ベッドのずれに関する分析
可動マシンベッドは、固定ボルト及びガイドプレートで支えられるとのことであったが、それぞれの状況は以下のとおりであった。

3.2.1 固定ボルトの支持力について

2.7.2[引用者注1:マシンベッドの耐力]より、強度試験で水平方向で54,560Nまで可動マシンベッドは保持されている。
これは、117人乗り込んだ場合の積載荷重水平力28,535Nに対し1.9倍に相当することから、固定ボルトが締まった状態で、下式のとおり
125人程度の乗客では、固定ボルトがゆがみ可動ベッドがずれる等の状況は想定されない。

28,535N×125人/117人=31,389N < 54,560N

また、大柄な成人が多いという事故当時の乗り込み実態を考慮し、平均体重が80kgであったと想定した場合でも、計算上、積載荷重水平力は54,560Nを上回ることはない。

31,389N×80kg/65kg=38,633N < 54,560N

しかしながら、2.5.2 iii[引用者注2:固定ベッドの状況に関する情報 - 可動ベッド固定ボルト、p6]に示したとおり、事故後の調査では、固定ボルトのうち、モーター側のアスキューボルトC、D がゆるんでいたこと、固定
ボルトL、Mについても締め付け時にトルク管理は行われていないこと及び2.5.2 iv[引用者注3:固定ベッドの状況に関する情報 - 可動ベッド押さえ金具、p8]に示したとおりこのほかの部分にも、締め付けられていないボルトが数箇所にあることから、固定ボルトによる水平方向の保持力は、大きく減少していたものと想定され、この場合、可動ベッドがずれる可能性もある。

3.2.2 押しボルトの耐力について

2.7.1[引用者注4:押しボルトの耐力、p15]より、押しボルトの耐力は、計算では39,410Nであったことから、125人乗り込んだ場合、計算上は固定ボルトの支持がなくとも、保持できたものと考えられる。

(平均体重65kg) 28,535N×125人/117人=31,389N < 39,410N
(平均体重80kg) 31,389N×80kg/65kg=38,633N < 39,410N

しかしながら、押しボルト(M24)が取り付けられていた板厚が、通常このサイズのボルトに使用されるナットの厚さの1/2程度と薄く、3つのねじ山のうち、ねじ山の切りはじめの部分は応力を負担できないと考えられることや、2.5.2 i[引用者注5:固定ベッドの状況に関する情報 - 押しボルト、p6]のとおり、押しボルトの取り付けられている固定ベッドが変形したことにより、ねじ山が広がった可能性も考えられるため、計算値のような耐力はなかったものと考えられる。
このため、125人の荷重に耐えられず、ねじ山の破断を生じた可能性もある。
なお、ガイドプレートの破断が先に生じ、その衝撃が押しボルトに加わった可能性も考えられる。
(以下略)
---- 引用以上 ----

事故直後には、事故の原因としてエスカレーターに乗っていた人達の体重にエスカレーターが耐えられなかった、なんて説も飛び交っていたが、この報告書はそれを否定した形である。

困ったことに、この調査結果は、当時事故の現場に居合わせた岡田 斗司夫(Toshio OKADA)氏の推測とだいたい合っていた。
<a href="http://okada.otaden.jp/e5653.html">・証言;ビッグサイトのエスカレーター事故について(追記あり)(2008年8月3日 okada.otaden.jp)

上の記事で、岡田氏は事故の一部始終について触れた上で、事故の原因についてエスカレーター側の問題と推測していた。
以下、2008年8月3日分 okada.otaden.jp『ビッグサイトの~』から後半部分を(略)

---- 以下引用 ----
(中略)
わかっていただきたいのは、今回の事故はイベント運営者やお客たちのせいではない、ということです。
 会場当時の「走らないで」「ゆっくり順序よく行動して」というアナウンスは徹底していました。
また僕たち参加者やお客さんたちも、アナウンスを守り、普通のサラリーマンの人よりもずっと行儀よくエスカレーターに乗っていました。事故が起こるまで、みんなエスカレーターの手すりを持って動かなかった。
混み合ってもいなかったし、人を押しのけて歩いて昇降する人もいませんでした。
通勤ラッシュや歳末のデパートなんかでは、もっとひどい光景を目にするけど、比べものにならないほど静かでおとなしかったんです。
 
 どうしてそう言い切れるかって?
だって僕は最前列から下を見下ろしていたんだから。
階下の人波に比べて、エスカレーターにはまったく動きがなかったのをこの目で見ているわけです。
だから、今回の事故は完全に機械が原因だと言い切れます。
メンテナンスの問題なのかエスカレーター自体の寿命なのか、それは今後の調査で明らかになるでしょう。
 
 こういう事故が起こるとかならず、「マニアたちがお宝めがけて殺到したので大混雑して、そのせいで事故が起きた」と言う人が現れます。
それはウソです。
僕はその場にいたので、はっきり言います。
会場のマニアたちは、事故が起こるまでは誰もエスカレーターで走ったり騒いだりしていませんでした。
イベント主催者も、安全に関してはくどいほどアナウンスを重ねていました。
開場時、すべてのお客さんたちの移動の先端にはかならずガードマンか移動担当のスタッフがいました。
みんなを走らせないためです。そのせいで、本当に静かに会場できたのを見ました。
 
ニュース関係者の方たちには、予断や偏見なく今回の件を伝えていただけることを望みます。
繰り返しますが、今回の件は「機械、または機械の整備」の問題です。
定員以上の使い方はしてませんでした。
誰も走ったり、「お宝めがけて殺到」なんてしていません。
以上、きちんと取材して伝えていただけることを望みます。

岡田 斗司夫
(以下追記部分)
---- 引用以上 ----

↓gigazineが公開した事故直前の様子を収録した動画。

「東京ビッグサイト」でエスカレーターが停止して逆流する直前のムービーと写真


確かに、岡田氏の述べるように、客側は非常に整然とエスカレーターに乗っている。
が、岡田氏の願い虚しく、「お宝めがけて殺到」なんて報道が繰り返された・・・。
↓その一例(元ネタはJNN系列のニュース)。

ビッグサイトのエスカレーター事故(横からの映像)


こうした報道が繰り返されたのは、事故当時製造メーカーが「直近の点検では安全設備など24項目で異常はない」なんて述べてたのも遠因と思われる。
・直近点検で24項目異常なし エスカレーター事故(2008年8月4日 47news.jp)

以下、2008年8月4日分 47news.jp『直近点検で~』を全文(略)

---- 以下引用 ----
東京都江東区の東京国際展示場(東京ビッグサイト)のエスカレーターが停止、逆走した事故で、直近の点検では安全設備など24項目で異常はないとしていたことが4日、分かった。
製造元の日本オーチス・エレベータ(東京)は「テレビ映像を見ると、1段に3人以上乗るなど異常な荷重がかかった可能性もある。目視ではボルト破損はなかった」と話した。

 同社によると、事故機は、2段に大人3人程度が乗っても耐えられるというエスカレーターの安全基準はクリアしているが、一定の重量を超えるとブレーキがかかる仕組みになっていた。
だが事故機は止まっただけでなく逆走していることから、警視庁東京湾岸署は機器に何らかの異常があった可能性もあるとみて原因を調べている。

 同社は事故機の保守・点検も担当。
直近の7月29日の点検では、ステップをつなぐチェーンに油を差しただけで、非常停止ボタンや制御盤、モーター、ブレーキなどはいずれも正常と判断していた。
運転状態も異常はなかったという。
---- 引用以上 ----

製造メーカーの点検ってなんだろうね?


にしても。

「ビッグサイトのイベントに来る客≒体重が重い」という思い込みはどこから来るんだろうか?


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