謎解きゲームではなく物語としてのミステリー。
はじめはまったく見えなかった絵の全体像が一枚また一枚と部分的に明かされる内に事件の構成が見えてくる。
その明かし方の順序と程度のバランスが絶妙でストーリーにまったく無駄がない。
結婚後一週間で姿を消した夫。その痕跡を追う妻。
そこで知ることになる夫に隠された生活と連鎖して起こる事件の真相とは?
当時の時代を反映したと言いたくなるようなストーリーですが . . . 本文を読む
『マグマ』という、いかついタイトルに地熱発電がテーマという工業的な装いの小説。
サブタイトルには「国際エネルギー戦争」なんて付いていますが、中身は企業小説というよりは人間ドラマという個人的印象。
一般的に使われている書籍紹介(下記"あらすじ")では「大型経済情報小説」「ビジネスマン必読の書」などと書いてありますが、本当に本書を読んだのか?と疑ってしまいます。
仕事に一途で不器用な研究者の夫とそれ . . . 本文を読む
映画『ハゲタカ』が話題になっています。
中国企業が日本の大手自動車会社を買収するという、可能性がゼロとは言えないストーリー。
そのストーリーに引かれて原作を読んでみようと思ったのがきっかけで本書を知りました。
映画『ハゲタカ』の原作は同著者の『レッドゾーン』。これはハゲタカシリーズの3作目になり、1作目が本書『ハゲタカ』。
所謂、ハゲタカファンドと呼ばれる投資会社がバブル崩壊後の日本企業を買収す . . . 本文を読む
子供を亡くした教師の告白から始まり、『告白』という形を取りながら、物語が進みます。
ひとつの事件を様々な関係者の視線から見る事により、表れる真実や思い。
そして全てのカードが表にされた時に事件は結末を迎えます。
物語の核は『復習』ですが、大きなテーマは『母』でしょうか?
第1章で感じる静かな怒りとその恐ろしさ。そして読み切りだったその作品を最終的にひとつの大きな物語に組み立てた著者の力には驚かさ . . . 本文を読む
怖い。
純粋なホラー作品ではないのにその辺のホラー小説よりよほど怖い。
おそらく著者の書く描写そのものが怖いのではなく、そこから作り出される空間が怖いのだろう。
描写から来る恐怖は一次元に留まり一瞬もすれば記憶から消え去ってしまう。
ところがそれが文字という形をはなれ空間に解き放たれた時、恐怖は三次元のものとなりジワジワ拭いきれない怖さになる。
謎解き面では質より量といったところもあり、さらには . . . 本文を読む
街で頻発する連続猟奇ネコ殺し事件。
主人公が同級生と結成した探偵団はこの犯人探しを行うが、それは思わぬ展開になって…。
「かつて子どもだったあなたと、少年少女のためのー」
というのがこのシリーズ、ミステリーランドのキャッチコピー。
前者は良いとしても、後者には本書の内容は刺激が強すぎる気もしますが…。
普通の推理小説と大きく違うのは、転校生の鈴木くんが自称神様であること。
この何ともいえない存 . . . 本文を読む
夏のホラー2冊目。
だったのですが・・・。
ジャンルを無視して、ここまで主張を前面に出されるとかえって心地よいくらい。
どうみてもホラー小説の体裁をしているのに、実際はバブル崩壊後の日本の雇用問題、職場環境の悪化を描いた作品。
いくらなんでも、そこまで悪くないだろ、ひどくないだろ・・・と主人公の人間関係や再雇用の実態に突っ込みを入れてしまいますが、どこかでそれを完全に否定しきれない自分もい . . . 本文を読む
ブレードランナーの原作ですが、映画とは似て非なるもの。
映画を観てから参考に読むには良いかもしれませんが、本書自身に多大な面白みを期待はしない方が良いかと…。
【読書羅針盤】
映画、ブレードランナーを観たあとに「原作はどんな感じなんだろう?」と思った時に読む度☆
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現代において国境はもう存在しない。
以前、そんな事を書きました。
ビジネスや交流という意味では確かに、存在しないのかもしれませんが、依然として大きな存在として立ちはだかる時もあるのです。
それは国際結婚。
友人にも、そんなハードルを乗り越えて結婚された人達がいます。
本人達だけではなく、家族という単位での理解が必要にもなる。
45歳でこの世を去った、翻訳家で詩人の主人公が亡くなる直前に残した娘 . . . 本文を読む
冬休み後半戦に読み倒した一冊。久しぶりな骨太推理小説を堪能できた。
地方に代々続く秘守家で起こる、怪奇な首なし連続殺人事件。
跡継ぎ問題と、この地に古くから伝わる淡首様の祟りが絡み合い事件は異様さを増していき、事件は迷宮入りするが…。
各種雑誌でも書かれている通り、鍵となるトリックからドミノのように明かされていく真実は、まるで複雑な数式が明快に解かれていく様を見ているようで非常に気持ちいい。
. . . 本文を読む
テレビの効果とはすごいもので、原作は即座に店頭に並びます。
九州で発見された心中事件。その裏にひそむ汚職事件。
事件の第一容疑者は当日北海道に。
"ひとり分の食堂車のレシート"から生まれた小さな疑念が事件を大きく動かす事になる。
さすが大御所の有名小説だけあり、グイグイ物語りに引き込まれる。
構成はシンプルで余計な贅肉がなく推理小説の教科書のような内容。
今から30年以上も前の小説なので、盲点 . . . 本文を読む
「残酷な描写の小説や漫画、ゲームが子供に悪影響を与えている」
無いとは言い切れない。何か因果はあるだろう。しかし、あまりに短絡過ぎる発想ではないだろうか?と思っていた。
しかし、この小説はどうだろう。
一部のミステリーやホラー小説マニアの間で話題になるだけなら良いのかもしれない。
だが、『このミステリーがすごい2007年版1位!(通称"このミス")』という看板を付け、「さあ、読みやがれ!」と言わ . . . 本文を読む
クロスファイアからの流れで手にして、当然お目当ては『燔祭』だったのですが、読んでみたら『朽ちてゆくまで』にハマッてしまった。
例によってページでいうと文庫版でP84~87。智子と須藤逸子のやり取り。
「智子さん、今はあなた、あたしのこと恨んでるかもしれないね。・・・」
「だけどね、賭けてもいいわよ。そう―三年かそこら・・・」
この台詞。
うん、ベタといったらベタなんです。
でもこの台詞ものす . . . 本文を読む
勧善懲悪ではないこの物語。
どんな結末がと思っていたら・・・なるほど。
こういった物語は結末が何通りも考えられるので想像力を刺激されます。
守護神(ガーディアン)も青木淳子も完全なる『正義』ではない。
では『悪』かというと必ずしもそうとは言い切れない。
『人を裁くのは人』
そこには必ず感情というものが介入してしまう。
手塚治虫の『火の鳥』の中にコンピューターがすべてを決定する未来の物語が . . . 本文を読む
①南の方で新大橋通りと交差する・・・
②北に行くと京葉道路とぶつかり・・・
③首都高速の小松川ランプがすぐそば・・・
船堀街道?
『新開橋』というのは架空の地名だったんですね・・・。
上記①~③を満たす上でのという条件では。
あの有名検索サイトで検索すると新横浜の『新開橋』がヒットします。
そうか、残念。ここまで明確に書いてあったから、実在すると思ったのに。
さて、初の宮部みゆきさん作品 . . . 本文を読む