セリーヌ・ラファエル(林昌宏訳),2017,父の逸脱──ピアノレッスンという拷問,新泉社.(5.16.24)
著者のラファエルは、4歳から14歳までの10年間、実父から虐待を受け続けた。
ピアニストになるべく、長時間、ピアノレッスンを強制され、完璧に弾きこなすことができなければ、ズボンと下着を引き下ろされ、尻を鞭打たれる。
父親は大企業の幹部社員であるが、事件が発覚した後も、自らの行為が虐待であったとは認めない。
父はまったく変わっていないとわかった。父の完璧主義は病的であり、恐るべきものだった。父は、わたしを通じて自分の父親をもっと満足させ、彼に認めてもらいたかったのか。わたしを完璧な子どもにすることで、自分自身が完璧な子どもでなかったことの埋め合わせをしたかったのか。祖父に殴られた父は、蔑まされた気持ちに悩まされていた。祖父の理不尽な暴力に反抗するかわりに完璧主義に走った父は、自己の葛藤を克服するためにわたしを利用し、祖父の精神と行動を受け継いだ。だが、父はわたしの強情な反抗精神によって取り乱し、より暴力的になったのだ。少なくともわたしはそのように感じた。
(p.203)
ラファエルは、警察と福祉行政機関に保護されるが、日本よりもお粗末な被保護児童の扱いに驚く。
ラファエルは、不屈の意志で、大学医学部に進学し、医師となり、現在も子ども虐待防止のための活動を展開している。
虐待防止へ、壮絶な体験つづる セリーヌ・ラファエルさん「父の逸脱―ピアノレッスンという拷問」
虐待サバイバーの記録は、同様の辛い過去をもつ人々に、正しく虐待加害者を憎み、人生を生き直す気持ちを鼓舞してくれる。
その意味でも、貴重な記録である。
忘れてしまうべきか。赦せばよいのか。どのようにして人生をやり直せばよいのか。音楽の才能があると言われ、わたしはピアノを弾く家畜になり、父はわたしを拷問し続けた。周りの人たちは目を背けた―。お稽古地獄という虐待を生き延びた少女の告白。フランスで大反響を巻き起こし映画化も決定したベストセラー。
目次
二歳半、最初の音符
「お父さん、あなたの娘さんは才能がありますね」
寡黙になる
恵まれなかった両親の子ども時代
フランスに戻る、ほのかな希望
最初のコンクールと地獄への転落
密かな楽しみ
おまじない
地獄の週末
初の国際コンクール ほか