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某ヘタレ社会学者のブログです。本と音楽に映画の情報、日々のニュースや日常生活のできごとについてお伝えします。

グローバリゼーションと社会学

2017年06月10日 16時04分59秒 | 
宮島喬・舩橋晴俊・友枝敏雄・遠藤薫編著,2013,『グローバリゼーションと社会学──モダニティ・グローバリティ・社会的公正』ミネルヴァ書房('17.6.10)

 本書は、良くも悪くも、グローバリゼーションを対象とした社会学研究の到達点を示すものであろうから、ここからさらなる議論の発展と精緻化をはかる必要があるわけだが、グローバリゼーションの要因でありそのさらなる促進もしくは抑制につながる、イノベーションとナショナリズムの近年の動向についてあまり触れられていないのが残念だった。最後の、退屈極まりない数理社会学の議論はまったくの無駄だ。

目次
グローバリゼーションと社会学
第1部 公正な社会を求めて
グローバリゼーションの経験と場所
グローバリゼーションとEUのアイデンティティ―国民国家からいずこへ
アジアにおけるグローバリゼーションとローカルなもの―メガシティ・ジャカルタの都市再生をめぐって
グローバリゼーションから「アジア社会学」へ―新たな学問的要請をめぐって
グローバリゼーションとフェミニズムの挑戦
リスク社会と再帰性―福島第一原発事故をめぐって
グローバリゼーションとエネルギー・環境問題―システム準拠的制御の可能性
第2部 モダニティからグローバリティへ
第二の近代と社会理論
モダニティのあとの社会学の課題―グローバリゼーションにおける可能性
モダニティの理想と現実―グローバル時代のコミュニティとアイデンティティ
モダニティ・グローバリティ・メディアリティの交差―社会変動をあらたな視座からとらえる
文化のグローバル化と「グローバル文化」論
グローバル化社会の理論社会学

グローバリゼーションは社会学になにをもたらすのだろうか。本書は、第1部においてはグローバリゼーションの現実過程に多彩な視角から接近し、第2部においてはグローバリティへといたる歴史変動のダイナミズムを理論的に読み解くことを通して、21世紀における社会学のアイデンティティを問う。
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マネー資本主義

2017年06月10日 16時04分01秒 | 
NHKスペシャル取材班,2009,『マネー資本主義──暴走から崩壊への真相』新潮社(文庫)('17.6.10)

 2008年前後に起こった金融危機の経緯を探った本は数多くある。本書は、問題の渦中にいた人々への丹念な取材に基づいており、その分、なにがどう問題だったのか、そしてその問題は現在もなお解決されていないことを正確に教えてくれる。いわゆるトービン税や世界共通の投資税制度の導入、企業の自己資本比率の適正化に向けての世界各国の足並みを揃えた金融規制などが必要であり、ニューエコノミーによる労働ダンピングが進むなか、さらに人々に生活苦をもたらす金融危機の回避は喫緊の課題である。

目次
第1章 投資銀行―暴走はなぜ止められなかったのか
投資銀行トップへの怒り
なぜマネーは暴走したのか ほか
第2章 超金余り―カリスマ指導者たちの誤算
“金融の神様”の失墜
グリーンスパンの「自由放任主義」 ほか
第3章 年金マネー―「安全第一」からヘッジファンドと手を組むまで
2割、3割マイナスは当たり前、年金基金総崩れ
金融危機は「我が事」 ほか
第4章 金融工学―ウォール街の“モンスター”
「偉大なる先生」との出会い
金融工学の世界を体現する男 ほか

世界を大恐慌という崩潰の淵に立たせた2008年秋のリーマンショック。何が“百年に一度”の危機を招いたのか。怪物のような金融商品を作った天才たち、年金基金の役回り、「超金余り」現象を生んだ背景…日米政府関係者やウォール街のトップら当事者の肉声が浮き彫りにした「失敗の本質」。出口なき経済昏迷の元凶を明らかにして、大反響を呼んだNHKスペシャル同名番組の文庫化。
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無業社会

2017年06月10日 16時02分55秒 | 
工藤啓・西田亮介,2014,『無業社会──働くことができない若者たちの未来』朝日新聞出版(新書)('17.6.10)

 1990年代後半以降の「就職氷河期」世代の出現と、低賃金不安定就労の増加が、「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」の日本型経営の制度的ルートからこぼれ落ちる者を増加させ、またブラックビジネスにより就労能力を剥奪される者も増えていった。官民協働の就労支援プログラムの充実ともども、就業履歴の空白が新規就労の機会を妨げるこの国の硬直した人事制度を変えさせていかねればいけないだろう。

目次
第1章 なぜ、いま「若年無業者」について考えるべきなのか
第2章 「働くことができない若者たち」の履歴書
第3章 「働くことができない若者たち」への誤解
第4章 「無業社会」は、なぜ生まれたか?
第5章 「無業社会」と日本の未来
第6章 若年無業者を支援する社会システムのあり方
第7章 「誰もが無業になりうる社会」でNPOが果たす役割

15~39歳で、学校に通わず、仕事もしていない「若年無業者」2333人のデータから見える本当の姿とは。現場を知るNPO代表と気鋭の社会学者によるミクロとマクロ双方の現状認識と衝撃の未来予測、いま打つべき方策を解き明かす!
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ブラック企業ビジネス

2017年06月10日 16時01分40秒 | 
今野晴貴,2013,『ブラック企業ビジネス』朝日新聞出版(新書)('17.6.10)

 今野晴貴氏の「ブラック」本はこれで何冊目だろうか。企業による勤労者違法搾取の実態を人口に膾炙させた功績は大きいが、本書では、ブラック企業に群がる「ブラック士業」の手練手管を明らかにしている。本書を読めば、ブラックなのはもはや特定の企業だけなのではなく、ビジネスモデルとしてブラック業態が拡大している実態がよくわかる。この問題についても、政府の無策ぶりが懸念されるが、これから就職する者には、こうした現実があって自らも被害者になり得ることを知っておくべきだろう。

目次
第1章 ブラック企業の背後には、決まって“彼ら”がいる
第2章 「ブラック士業」が違法労働を拡散させる
第3章 私もワタミ・ユニクロの弁護士から「脅し」を受けた!
第4章 恐るべき「労組潰しビジネス」の実態
第5章 「ブラック企業ビジネス」が社会を壊す
第6章 貧困化の果てに―変容する弁護士界
第7章 意外な「ブラック企業」の加担者
終章 「アリジゴク社会」を乗り越えろ

なぜ悪辣な企業がこの社会に根をはり、増殖しているのか。その裏には、ブラック企業を支える弁護士・社労士がいた。若者を使い潰すテクニックを指南する“彼ら”の怖るべき実態とは。ベストセラー『ブラック企業』の著者が、圧倒的な量の取材をもとに労働問題の暗部を暴く!
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ここがおかしい日本の社会保障

2017年06月10日 16時00分33秒 | 
山田昌弘,2012,『ここがおかしい日本の社会保障』文藝春秋(文庫)('17.6.10)

 晩婚化・未婚化、離婚の増加、1997年以降のニューエコノミーの到来によるワーキングプアの急増等により、男性稼得者家族扶養モデルが機能しなくなっているにも関わらず、所得税制、社会保険制度は旧態依然のままであり、社会保障の機能不全が深刻化している。最低賃金と生活保護給付額の負のスパイラル問題も含め、国家が、最低生活保障の責任を放棄している実態と、そのような最低責務さえ果たさない政府の無策を実質的に容認している国民の民度の低さを実感させられる。

目次
第1部 ここがおかしい社会保障
生活保護給付より低い最低賃金額―最低賃金の意味変化
壮年・親同居未婚者の今後―親による社会保障の限界
高学歴ワーキングプア―勉強が報われないという現実
年金保険料を払う専業主婦―年金負担の不公平
遺族年金を利用して一生楽に暮らす方法―遺族年金の矛盾 ほか
第2部 社会保障制度の構造改革
ワーキングプア出現の意味―社会保障・福祉制度の前提の崩壊
ワーキングプア増大の原因と意味
ライフコースの不確実化
社会保障・福祉制度の構造転換を目指して

生活保護給付金よりも低い「最低賃金」から年金負担の不公平まで、ワーキングプア時代における社会保障制度の問題点をえぐりだす。親の年金で暮らす「パラサイト・中高年」や高学歴ワーキングプアの増大、高齢者層の生活格差に歯止めをかけるために何ができるのだろうか。セーフティネット再構築へ向けた瞠目の書。
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介護現場は、なぜ辛いのか

2017年06月10日 15時59分13秒 | 
本岡類,2009,『介護現場は、なぜ辛いのか──特養老人ホームの終わらない日常』新潮社(文庫)('17.6.10)

 介護現場での過酷な労働についてのルポルタージュは数多い。しかし、一方で、介護労働を篤志な行為として称え、低賃金高密度長時間労働の実態や職場でのハラスメント問題を隠蔽化しようとする者もいる。いずれにせよ、介護保険制度施行以降に限っても、ケアワーカーの劣悪な処遇実態は変わっていない。このまま、団塊世代が後期高齢者に移行する2025年に向けて、国家による要介護高齢者のネグレクトが進行するのは必至であり、すでに地獄の釜が口を開けていることをわたしたちは知るべきだろう。

目次
序章 扉が開いて
第1章 「混沌」への招待
第2章 強ストレス職場の日々
第3章 「高齢」という現実
第4章 真夏の夜の夢
第5章 モラルハザードのはざまで
第6章 出られない人たち
終章 せめてもの未来を

かけた優しい言葉とは裏腹に、心の中では毒づいている。「我が侭言うなよ…」苛立つ職員。荒くなる作業。介護者、入居者共に我慢の24時間。人は介護を受けるために生きているのではなく、生きるために介護を受けているはずなのに―。齢50を過ぎてヘルパー2級を取得し、時給850円で働く作家が目の当たりにした、終の棲家の現実とは。老親を持つ世代必読のノンフィクション。
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日本会議の研究

2017年04月15日 21時53分31秒 | 
菅野完,2017,『日本会議の研究』扶桑社('17.4.15)

 わたしも、つい5年ほど前までは、「日本会議」など取るに足らない団体だと思っていた。それが、第二次安倍政権成立以降、偏狭なナショナリズムと排外主義、復古主義(「教育勅語」や治安維持法もどきの復活!)を国民に広く定着させ、ついにかの団体の悲願、「自主憲法」の制定、いや「大日本帝国憲法」の復活というべきか、ともあれ世紀の大改革を実現せんとしている。
 著者も指摘しているように、「日本会議」は、地道な民主的社会運動の成果を積み重ね、こうした強大な政治団体と化した。脆弱な自尊心を共同幻想のなかで慰撫する可哀想な人たちではすまない、危険で有害なゴミをどう処分するか。「ぱよぱよちーん」と揶揄されてきた人々は、本気で考え実行に移していくべきだろう。

目次
第1章 日本会議とは何か
第2章 歴史
第3章 憲法
第4章 草の根
第5章 「一群の人々」
第6章 淵源
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東北発の震災論

2017年04月15日 15時37分18秒 | 
山下祐介,2013,『東北発の震災論──周辺から広域システムを考える』筑摩書房('17.4.15)

 著者特有の文体の癖が読んでいて気になってしようがなかったが、「周辺」と「広域システム」の概念を鍵として、原発避難、住民の意向を無視した復興開発の問題点をくまなく議論の俎上にし、「ひと」中心の災害復興の方途を摸索している。

目次
第1章 広域システム災害
第2章 平成三陸大津波
第3章 東北という場
第4章 原発避難
第5章 復興と支援
第6章 システム、くに、ひと

中心(中央)のために周辺(地方)がリスクを負い、中心から周辺に利益が還流する「広域システム」。その存在を顕在化させたのが今回の震災であり、福島原発事故だった。東北において典型的に見られる「中心‐周辺」のシステム形成史をたどり、そのシステムから脱却するために、周辺に暮らす人々や自治体がいかに主体的に動くべきなのかを考察。広域システム災害一般の問題と、東北社会特有の問題との両方を論じた先に見えてくる、未曾有の災害を乗り越える新しい社会のあり方を構想する。
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続・下流老人

2017年04月15日 15時35分34秒 | 
藤田孝典,2016,『続・下流老人──一億総疲弊社会の到来』朝日新聞出版('17.4.15)

 中年期にさしかかると誰しもが直面する老後生活への不安。実際に、老齢年金だけでは生活できず、かといって生活保護の申請には躊躇する者が多いなか、「死ぬまで働く」選択をせざるをえない高齢者が増えている。
 現時点では社会保障の強化が望むべくもないことを考えると、一部の富裕層を除き、ある程度資産が形成できた時点で、「半農半X」のライフスタイルへの転換をはかるなどの対処が必要なことを、本書は示唆している。

目次
第1章 深刻化する下流老人
第2章 生きるために、働く老後―死ぬまですり減る、体と心
第3章 誰もが陥る「死ぬまで働く」という生き方―なぜ、高齢者は働かざるを得ないのか
第4章 日本の老後はカネ次第―不気味な顔をみせる格差社会
第5章 下流老人を救うカネはどこにある?―これから「財源」の話をしよう
第6章 一億総下流化を防ぐ解決策―持続可能な未来~子ども世代へ

もう、死ぬまで働くしかないのか?想像してみてほしい―「あなたが80歳のとき、本当に働けるだろうか?」忍び寄る「一億総老後崩壊」を告発した『下流老人』から一年半。世界一老後が過酷な国で、生きていくための「解決策」を示す。
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半農半Xという生き方【決定版】

2017年04月15日 15時33分59秒 | 
塩見直紀,2014,『半農半Xという生き方【決定版】』筑摩書房('17.4.15)

 Uターンに加えて、Jターン、Iターンも増えつつあるのは、都市生活での疲弊と人間らしい暮らしへの憧れを、本書のような経験に根ざした啓蒙書が後押ししているからだろう。大分ではじまった「一村一品」運動ともども、「半農半X」は、広く他のアジア諸国の人々にも大いに反響を呼んできた。いきなりの田舎暮らしは無謀だろうが、過疎に苦しむ市町村の移住支援と農業等の研修プログラムも充実してきている。カイシャに就職して都会であくせく働くのだけが唯一の人生の選択肢ではない、そのことを確信をもって提言する良い本だと思う。

目次
第1章 田舎に出よう!そこは人間復興の場だった!―人と人の間で心地よく生きる‐「半農半X」の神髄
第2章 小さな暮らし、大きな夢‐田舎暮らしの楽しみ―物欲縮小、健康獲得、甦る家族‐「半農」の意味
第3章 きっと見つかる!自分という魅力に満ちた原石―「好きなこと」と「役立つこと」の調和‐「半X」が目指すもの
第4章 それは「やりたいこと」か「やるべきこと」か―自分主役の人生創造
第5章 「半農半X」は問題解決型の生き方だ!―さまざまな社会病理を乗り越える知恵
第6章 出版一〇年を振り返って―文庫版のために

「半農半X」とは、農的暮らしを実践しつつ大好きなことを追求すること。このコンセプトを提唱し、少なからぬ読者の人生を変えてきた本、ついに文庫化!移住後の生き方として。就職とは別の生き方として。退職後のセカンドライフとして。多くの実践者の話から、天職の探し方、田舎暮らしの始め方、なぜ「農」が必要なのか、などがわかってくる。文庫化にあたり、その後の広がりを追加。
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実録! 熱血ケースワーカー物語

2017年04月15日 15時32分36秒 | 
碇井伸吾,2014,『実録! 熱血ケースワーカー物語』幻冬舎('17.4.15)

 生活保護ケースワークの貴重な実践記録。
 ケースワーカーとして、誠実、実直に業務にあたってきた著者ならではの、悲喜こもごもの経験の一つ一つがとても興味深かった。

目次
第1章 「福祉」を食い物にした男
第2章 これでもかの「試練」
第3章 最凶の「野獣」との対決
第4章 「終着駅」の修羅場
第5章 「奇跡」のケースワーカー
第6章 体力・総力の「バックアップ作戦」
第7章 「最後の砦」の現場
第8章 本当に困ったときへの「指針」

車の当たり屋として保険会社から金を取りながら、生活保護費の不正受給をもくろむ覚醒剤常習者との対決。鉄道自殺した高齢者の遺体との対面。六時間もかかるゴミ屋敷の清掃。一升瓶で頭を割られ、血だらけのアルコール依存症患者の引き取り…。関西の福祉事務所で生活保護受給担当を十三年間務めた、熱く、強く、優しいケースワーカーの記録。
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調査の科学

2017年04月15日 15時31分22秒 | 
林知己夫,2011,『調査の科学』筑摩書房('17.4.15)

 統計数理研究所を拠点とし、数量化理論の構築をはじめとして、戦後日本社会における社会調査の発展に寄与してきた林氏による、この分野にしては珍しい文庫本。文庫本にしては値段が高いが、社会調査の入門書としてお勧めするにはじゅうぶんな内容の一冊だ。

目次
序章 社会調査の心
第1章 社会調査の論理
第2章 調査の基本―標本調査の考え方
第3章 質問の仕方の科学
第4章 調査実施の科学
第5章 データ分析のロジック
第6章 調査結果をどう使うか

本書の真髄は、戦後の民主主義発展という歴史を背負って黎明期から調査関係者をリードし、調査の理論と実践を知り尽くした著者の「実践的調査理論」にある。この歴史と理論と実践が三位一体となり、現実の社会の課題解決のための研究が可能となったのである。今日、調査協力率の低下や回答者への接触の困難など調査環境悪化とともに、調査方法自体も質の低下が著しい。それにもかかわらず、「世論調査」が不当なほどに力をもつようになってしまった。本書にちりばめられた教訓を今一度、噛みしめる時である。
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地域再生の社会学

2017年03月23日 18時00分50秒 | 
三浦典子・横田尚俊・速水聖子編著,2017,『地域再生の社会学』学文社('17.3.23)

 本書は、三浦典子氏の定年退官を記念し編まれた論文集である。
 宇部興産(1章)、ブリヂストン(2章)の地域社会貢献事業、山口市一の坂川の環境保全運動(5章)、宮崎県五ヶ瀬町の「自然活動」事業(14章)等、特定の事例に的を絞った論考は、なかなか読み応えがあった。これらの事例研究は、「地域再生」のモデル事業を記録し広く知らしめる意味でも、たいへん貴重な成果といえる。
 それに対し、「理屈」で「地域再生」を論じたものは、総じて退屈で、とくに、官僚が好みそうな、自己本位の稚拙なコミュニティ理想像を住民に押しつけ、参加者40名前後のくだらないワークショップをして「協働のまちづくり」の一環として位置づけるなど笑止千万である。(7章)まちがって愚論を展開する失敗は誰にもあるが、自らの地位を悪用し、社会学のアクションリサーチを辱める、そして有害無益でしかない地域住民への官僚的な指導など行うべきではない。社会学の論考を読んでアタマにきたのは久しぶりだ。
 「地域再生」は、企業、住民有志、ボランタリーアソシエーション等が担ってきた。ファミリーサポートセンターとふれあいいきいきサロンの事業、本書では取り上げられていないが小規模多機能共生ホームの活動、認知症高齢者の見守りネットワークの構築等、地域住民の高齢化にともなう生活ニーズの充足をはかるべく、「福祉コミュニティ」としての「地域」の「再生」を実践してきた事例は豊富にある。
 「社交」、「経済」、「文化」、「防災・減災」、「福祉」、以上が活性化もしくは機能向上を図るべき地域コミュニティの課題である。本書の多くの論考には、その課題解決をはかるための有益な知見が提示されている。

目次
はじめに:社会学からみた地域再生
第1部 企業家と産業都市の地域再生
1章 企業の社会貢献と地域再生――アートがつなぐ官民の力――
2章 企業における家族経営と地域
3章 過疎地のアートプロジェクトと地域活性化
第2部 地域再生の理論と自治体政策
4章 地域社会における信頼形成の社会理論
5章 地域再生と「場所」の可能性
6章 市民参画と市民活動の時代における地域再生への展望
7章 「協働のまちづくり」の課題と展望
8章 災害復興と地域再生
第3部 まちづくりの実践と地域再生
9章 山村集落の地域再生とむらづくりのための基本認識―山村高齢者の生きがい調査から限界集落論を検討する
10章 類縁関係に基づく移住者のコミュニティ形成
11章 地域福祉活動と地域圏域
12章 生活困窮者への伴走型支援とコミュニティ形成―生活構造論からの整理
13章 子育て支援と地域ボランティア
14章 農山村地域における育児の社会化の可能性―宮崎県五ヶ瀬町の事例から
第4部 中国都市の現在
15章 中国大都市における転居後の高齢者の生活状況―上海市の高齢者調査をてがかりに
16章 中国の都市住民における主観的幸福感

 本書は、三浦先生よりご恵投いただきました。ありがとうございました。
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経済ジェノサイド

2017年03月02日 18時37分28秒 | 
中山智香子,2013,『経済ジェノサイド──フリードマンと世界経済の半世紀』平凡社('17.3.2)

 学生時代、ミゲル・リッティンの映画『戒厳令下チリ潜入記』を見て、またガルシア=マルケスの同名ルポルタージュを読んで衝撃を受けたのが、わたしのニューリベラリズムとの出会いであった。その前後、サッチャリズム、レーガノミックス、そして中曽根政権による三公社民営化等々、これらによって激変する世界を生き、なぜこのような社会経済の大変動が進行したのかが、わたしの最大の社会学的関心となった。
 本書は、どの本よりも明晰に、その変動要因と経緯について説明がなされている。必読本など滅多にお目にかかるものではないが、本書はまさにその一冊だ。

目次
序章 経済学のオフリミッツ
第1章 何のための市場形成か―チリのクーデターと経済政策
第3章 社会的責任か、成長か―市場原理の例外としての企業
間奏 経済学の分岐点で
第3章 誰もそれを止められない―市場原理の例外としての貨幣
第4章 給料だけでは不十分?―所有者社会の夢と年金
終章 危機の時代にたたずむ

「ショック療法」の主唱者ミルトン・フリードマン―彼の経済理論は「人類のために最大の貢献」をしたとされ、一九七六年にノーベル経済学賞という栄誉が与えられた。だがそれは、最高評価に値する真の「発明」だったのだろうか。政治とメディアとの三つ巴で強引に推進された新自由主義的政策と、その帰結たる半世紀後の絶望的なまでに荒廃した世界状況を思うとき、そもそも経済学的権威とは何かと疑問を抱かずにはいられない。経済学の深い闇に鋭い批判的考察のメスを入れ、経済学者の果たすべき社会的責任と使命を問う。
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エンジェルフライト

2017年03月02日 18時36分08秒 | 
佐々涼子,2014,『エンジェルフライト──国際霊柩送還士』集英社('17.3.2)

 「納棺夫」(送り人)同様、知られることのないなりわいについて、丹念に取材し世に知らしめた意味は大きい。
 わたしたちが、こうしたなりわいをとおして、近親者の死を受容し記憶の引き出しにそっとしまい込む営みが、少し尊いものであるように感じた。

目次
遺体ビジネス
取材の端緒
死を扱う会社
遺族
新入社員
「国際霊柩送還」とはなにか
創業者
ドライバー
取材者
二代目

オヤジ
忘れ去られるべき人

国境を越えて遺体や遺骨を故国へ送り届ける「国際霊柩送還」という仕事に迫り、死とは何か、愛する人を亡くすとはどういうことかを描く。第10回開高健ノンフィクション賞受賞作。(解説/石井光太)
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