とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

功夫への道 弐

2006年01月24日 05時08分35秒 | 香港的電影
『少林サッカー』(少林足球 Shaolin Soccer 周星馳監督 2002 香港)


チャウ・シンチー(周星馳)といえば、これを取りあげないわけにはいかないでしょう。
『少林サッカー』。大ヒットしました。

わたしが周星馳を見た初めての映画です。しかし白状しますと、わたしは当時『少林サッカー』にも周星馳にも、それほど興味をひかれていませんでした。おもしろいことはおもしろかったけど、大笑いしてそれでおしまい。

周星馳という俳優についてもまったく知識なし。「香港にこんな若い俳優がいたんだな~こんなに若いのに主役だなんて、むこうでは有名なのかしら(24、5才だと思っていた)。なかなかセクシーな人だけれど」くらいなのんきな印象しかありませんでした。

実際は「むこうで有名」どころではなかったのですが。

周星馳が『少林サッカー』を撮った時、彼は39才(あとから年齢を知ってぶったまげた)。香港ではすでに10年以上にもわたってトップスター、毎年興行収入ベスト10に何本も作品がランクインするくらいの大人気、敬意をこめて「星爺」「喜劇王」と呼ばれる、超有名人だったのです。

しかし日本では作品が公開されたことはほとんどなく、ビデオは数本出ていたものの宣伝もろくにされていなかったため、一部の熱心な香港映画迷をのぞいて日本での知名度は低かった。

トニー・レオンやアンディ・ラウ、レスリー・チャンらが海外で賞をとったり、チョウ・ユンファがハリウッドへ進出したりする中、なぜ周星馳だけが知られていなかったのか?

それは、彼のコメディが、独特の言語感覚によって作られてきたからだ、と言われています。広東語の発音を利用した言葉遊びや、香港人なら誰でもわかるCM、映画、テレビ番組のパロディが彼の持ち味(…ン?これって誰かさん=とんねるちゃんにちょっと似ている?)。

だから、香港ではバカ受けするギャグも、外国人にはわからないだろう---初めからそういう認識をされちゃってたみたいなんですね。

あらためて彼の過去の作品を観てみたら、その認識がまちがいだってことは、明らかなんですけれど。広東語がわからなくても、おもしろいもんはおもしろいですから!

でも周星馳も、自分のコメディのスタンスをよく理解していて、さらに世界を広げるためにはどこかで変わらなければならない、と感じていたのです。そうして試行錯誤をかさねた結果、生まれたのが『少林サッカー』だったわけです。

誰もが共感でき、カタルシスを得られるストーリー、見た目のおもしろさ、つまり「体技」を重視し、CGをふんだんに取り入れ、香港ローカリズムを極力排して作ったシンチー映画、それが『少林サッカー』だと言えると思います。


ここでちょいと脱線。
いま日本で発売されている『少林サッカー』のDVDには、オリジナルバージョンとインターナショナルバージョンの二種類があります。インターナショナル版の方は、一応欧米で公開されたものに近いバージョンで、シンチー自身が英語吹替えをしているというのがウリです。

しかし!じゅうじゅうお願いしますが、インターナショナル版しか観てない方が万が一おられたら、絶対にオリジナル版もあわせて観て下さい。インターナショナル版は、作り手の意図を完全に無視し、無惨に映画を切り刻み、何の正当な根拠もないままに重要なシーンをカットしまくっています。とても映画への良心をもった者のやる所業ではない!これは冒涜です。犯罪です!なぜシンチーはこの編集に抗議しなかったんだろう?

・・・つい取り乱してしまいました。
幸運なことに日本公開版はほぼ完全版と言ってよい。これは世界一だと自負してよいと思います(香港公開版でカットされているシーンも日本版には入っている)。

閑話休題。

こうして、『少林サッカー』は世紀の大傑作となりました。周星馳の出した答は、正しかったのです。

シンチーをより深く知るようになってからこの映画を観直すと、最初に興味をもてなかった自分の目が、いかに節穴のまっくろけだったかということがよくわかりました。もう何十回観たことでしょう。その度に、わたしは勇気をもらいます。

この映画は、夢をもつこと、夢をあきらめないこと、夢のために生きること、そうすれば必ず道はひらくんだということを、わたしに教えてくれます。遠い昔に置き去りにしていた夢を、情熱を、取り戻させてくれる、それが『少林サッカー』です。

しかし、わたしが本当にそれらを理解できるようになるには、次の作品をまたねばならなかった。
それが、『カンフーハッスル』でした・・・これについては、また明日。バーイ、サンキュ。






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1 コメント

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こんにちは (ダイエットマスター)
2007-03-22 08:36:03
こんにちは♪


私のブログで
こちらの記事を紹介させて頂きましたので

いきなりですみませんが、
ご連絡させて頂きました。

紹介記事は
http://blog.livedoor.jp/ma_sa20004/archives/53262012.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
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