三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

カトリック泉町教会

2011年10月27日 | 東京のカトリック教会
カトリック泉町教会(教会堂名:聖マリア)
創立:1877年 ◇ 住所:東京都八王子市泉町1287

西東京バスの泉町(いずみちょう)停留所で降りる。ここは八王子の中心部からバスで20数分を要し、北に浅川を望み、南西は八王子城が築かれた城山が聳えている。バスが無ければ、陸の孤島になってしまう。現在も交通アクセスが良いとは言えない泉町に、今から百年以上前の明治初期、横浜からカトリックの信仰が伝えられたのは驚きである。この泉町が下壱分方村と称していた頃、宣教に燃える青年・山上卓樹が伝道士として故郷の村に戻ってきた。

山上卓樹(1855-1931年)はカトリック信徒で民権家。 恩師のテストヴィド神父の命を受け、泉町で伝道士として活躍すると、封建時代の不条理に苦しんできた村人はカトリックに改宗する者が続出した。その勢いは卓樹が「燎原の火の如く」と評し、テストヴィド神父も「全村こぞってカトリックになる」と喜んだ。1877年、早くも天主堂(現・泉町教会)が建てられ、教会の付属学校も完成。しかし、村の大火やテストヴィド神父の死などによって、急速に勢いが衰えた。

1927年、泉町教会の創立50周年を記念して、現在の聖堂が再建された。式典には年老いた卓樹の姿もあった。戦後、この聖堂は信徒数の減少で荒廃したが、八王子教会の創立百年を機に補修・整備された。去る7月24日、私は泉町教会で年間第17主日のミサに与った。戦前の古い聖堂内は、今も卓樹やメイラン神父、往年の村人たちの賛美の歌声が残っているかのようだ。泉町教会は小さな佇まいだが、鐘楼を戴く聖堂に遠い歴史の記憶が蘇える。


現聖堂献堂:1927年
<埼玉の入間宮寺教会聖堂と似ている>


<聖堂内後方。 右手に足踏み式オルガンがある>

◆主な参考文献など:
・「多摩の百年(上)悲劇の群像」 朝日新聞東京本社社会部著(朝日新聞社・1976年)
・「八王子教会百年」 カトリック八王子教会百年記念誌編集委員会編(同教会百年祭委員会・1977年)
・「山上卓樹・カクと武相のキリスト教」 町田市立自由民権資料館編(町田市教育委員会・2006年)

<付記>
現在、泉町教会は八王子教会の分教会となっている。毎月第二・第四日曜日の主日ミサを除き、聖堂は施錠されている場合が多い。聖体訪問などで巡礼する場合は、事前に開堂時間の確認をお勧めしたい。(なお、本記事の続編「八王子・泉町を歩く」、「主の降誕(日中のミサ)」もあわせてお読みください)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 年間第30主日のミサ | トップ | 年間第31主日のミサ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。