三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

東京聖マリア教会(日本聖公会)

2014年08月28日 | 聖公会の教会
日本聖公会 東京聖マリア教会
(住所:東京都品川区西品川3-12-6)

8月24日(日)、東京聖マリア教会(日本聖公会)で聖霊降臨後第11主日の聖餐式に参列した。まずは、その沿革をおさらい。「1924年、関東大震災を逃れて移り住んできた人々に仕えるために、ここ西品川の地で宣教活動を始めました。翌年には、『若葉幼稚園(三ツ木幼稚園)』を開園し、地域に奉仕することを教会の中心的働きとしてきました。その後、教会は戦争によって、様々な困難を経験しますが、『地域と共に、子どもたちと共に』という教会の姿勢は変えませんでした」(教会案内書を要約)。

JR山手線の大崎駅で下車。ここ数年の再開発で、大崎は急速に変貌している。かつて、駅前に明電舎の“昭和レトロな”工場があったことを思い出す。東京聖マリア教会に到着、座席数30ほどの小さな聖堂だ。午前10時30分、聖餐式の開始を告げる鐘と共に、司祭とサーバー(侍者)が厳かに入堂。福音朗読は、ペトロの信仰告白の場面(マタイ16・13-20)。岩前宏司祭は、「ペトロの告白は教会の信仰の基盤になっている。そのような告白をするところに、イエス様の教会があるのです」と話された。

「ローマ・カトリック教会では、ペトロが初代教皇とされています。私たちの東京聖マリア教会もローマに近い信仰の基盤に立っています。そして、教会はメシアへの信仰告白を守りながら、人々の心を解きほぐす使命を担っており、それが福音ということになるのです」。この日の会衆は10数人、家庭的な雰囲気が漂う教会だ。信徒の皆さんは新来の私に対して、「ようこそ。またお越しくださいね」と温かく歓迎。確かに、ここには岩前司祭が言われたような「人々の心を解きほぐす使命」が継承されている。


聖堂内観(1981年竣工)

<付記>
この日の入堂聖歌は「イェスきみは」を歌う。カトリック聖歌288番「うるわしき」と同じ旋律で、大作曲家フランツ・リストの「十字軍騎士の行進」という作品にもコラールのように登場する。2011年、カトリック八王子教会における年間第16主日のミサで、この気高い聖歌を歌ったことを思い出す。だが、日本のカトリック教会は高田三郎らの『典礼聖歌』を押し付け、「うるわしき」などの“西欧の調べ”を駆逐しつつある。

◆聖餐式で歌われた聖歌:
ミサ曲譜(大栄光の歌、サンクトゥス、アニュス・デイ。キリエのみ読誦)。入堂聖歌:367「イェスきみは」、昇階聖歌:325「み手の中で」、奉献聖歌:418「誰もひとりだけでは」、陪餐聖歌:239「すべての民を」、退堂聖歌:420「恵みのみ神よ」。(番号は「日本聖公会聖歌集」による)

◆主な参考文献・CDなど:
・「東京教区90年のあゆみ」 2013フェスティバル実行委員会編(日本聖公会東京教区・2013年)
・CD「リスト:Marches for Brass Band」 D・ラースロー指揮/ハンガリー人民軍軍楽隊(Hungaroton:HCD-16722)
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聖霊降臨後第10主日の聖餐式

2014年08月23日 | 聖公会の礼拝
大正ロマンが漂う立教大学モリス館の廊下
(住所:東京都豊島区西池袋3-34-1)

69回目の敗戦記念日を迎えた8月15日、今年も安倍晋三は全国戦没者追悼式で「不戦の誓い」を表明せず、またアジア諸国に対する加害への「深い反省」も言及しなかった。なんという傲慢で恥知らずな国なのか、ニッポンは。「過去に対して眼を閉ざす者は、結局は現在に対しても盲目となります」。ヴァイツゼッカー氏(旧西ドイツ大統領)のこの警句は、頑なに「敗戦」と「加害責任」を認めず、排外的国粋主義の怒号と大量の放射能汚染水をまき散らしている「傲慢で恥知らずな国」には届かない。

8月17日(日)、立教大学チャペル(日本聖公会)で聖霊降臨後第10主日の聖餐式に参列した。午前10時、振り香炉と十字架を先頭に、司祭団が厳かに入堂。福音朗読は、「カナンの女の信仰」(マタイ15・21-28)。市原信太郎司祭は、「信仰とは神への信頼を示すこと。『ただ病気を治す人ではなく、全面的に信頼する人として、私はあなたにすがっています』。その時、イエスとカナンの女性の関係は、三人称(客観的な関係)から二人称(私とあなた)の関係に変化し、奇跡が起きたのです」と話された。

「69年目の8月15日や世界各地の紛争に対して、私たちはカナンの女性のように、二人称の関係で理解しようとしているか。イエスは平和を与えようとされるが、私たちはそれを必死に求めているか。本日の福音は様々な枠組や属性を超えたところに、お互いを理解し合う『私とあなた』という世界への希望を伝えています」。市原チャプレンの説教は示唆に富んでいた。「私とあなた」を忘れ、ただ「ニッポン人であること」に固執し、「ニッポン人か否か」を詮索することなど、実に瑣末な「枠組と属性」だ。


この学窓を去った戦没学生に永遠の平安を。
“ 先に逝く友も われらは覚える・・・(聖歌293) ”

<付記>
この日の奉献聖歌は「たたえの調べを」。この気高い旋律の作曲は、19世紀英国の教会音楽家ジョン・ゴス(John Goss:1800-80年)。本作は珠玉の英国聖歌で、キングス・カレッジ聖歌隊のCD(下記参考盤)の冒頭を飾っている。少年合唱の澄んだ歌声が秀逸。“ Alleluia! Alleluia! Praise the everlasting King... ”

◆聖餐式で歌われた聖歌:
ミサ曲譜3(キリエ、大栄光の歌、サンクトゥス、アニュス・デイ)、入堂聖歌:445「いさおなきわれを」、続唱聖歌:477「恐れにとらわれ」、奉献聖歌:309「たたえの調べを」、陪餐聖歌:531「いやし主イェスの」、派遣聖歌:540「やさしき息吹の(Amazing grace)」。(番号は「日本聖公会聖歌集」による)

◆主な参考文献・CDなど:
・「過去の克服・二つの戦後」 ヴァイツゼッカー著、山本務訳(日本放送出版協会・1994年)
・CD「キングズ・カレッジ合唱団の讃美歌集」 キングズ・カレッジ合唱団(London:POCL-5070)
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聖パトリック教会(日本聖公会)

2014年08月18日 | 聖公会の教会
日本聖公会 聖パトリック教会
(住所:東京都立川市羽衣町3-15-24)

8月10日(日)、立川の聖パトリック教会(日本聖公会)で聖霊降臨後第9主日の聖餐式に参列した。まず、その沿革をおさらいしよう。「戦後の日本と米国の関係改善を望む人たちの間から起こった、『和解、一致と平和』を目指す歩みの中で、日米両国の聖職と信徒相互により基地の町・立川に、1957年12月1日に産声をあげました。現会堂は1996年に新しく建築され、外からすべてバリアフリーの明るい礼拝堂とホール、そして斬新なステンドグラスがあります」(『東京教区90年のあゆみ』より)。

JR南武線の西国立駅で下車。聖パトリック教会は閑静な住宅街にある。聖堂玄関の横に吊るされた古い鐘の銘を見ると、「聖ヨハネ修士会東久留米修道院 1959」と刻まれていた(下写真2)。モダンな聖堂内は洗礼盤、会衆席のニーラー(跪き台)、十字架の道行、ロザリオの聖母像などがあり、“古き良きカトリック”の雰囲気が同居している。午前10時30分、聖餐式の開始を告げる鐘が鳴り、司祭とサーバー(侍者)が厳かに入堂。福音朗読は、イエスが湖の上を歩かれた場面(マタイ14・22-23)。

菅原裕治司祭は、「弟子たちはガリラヤ湖で、恐れと不安に苛まされていました。イエス様を信じていながら、私たちは他の安全なものに頼ろうとする。そこに人間の愚かさがあります。だからこそ、私たちにはイエス様、そして聖書があるのです。本日の福音はそのことを示しています」と話された。この日の会衆は約20人(台風11号接近の影響で少なめ?)。聖パトリック教会創立時は、立川基地から米国空軍の関係者も参列していたのだろう。往年の「基地の町」の面影を見ることは難しくなってきた。


聖堂内観(1996年竣工)


聖パトリック教会聖堂に吊るされている古い鐘
(銘は「聖ヨハネ修士会東久留米修道院 1959」)

◆聖餐式で歌われた聖歌:
ミサ曲譜(キリエ、大栄光の歌、サンクトゥス、アニュス・デイ)、入堂聖歌:247「キリストの心から」、続唱聖歌:363「ガリラヤの風かおる丘で」、奉献聖歌:509「あなたは岸辺で」、陪餐聖歌:533「主を愛そう こころこめて」、退堂聖歌:550「主の言葉に堅く立つ」。(番号は「日本聖公会聖歌集」による)

◆主な参考文献など:
・「東京教区90年のあゆみ」 2013フェスティバル実行委員会編(日本聖公会東京教区・2013年)
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チマッティ神父の「月命日」ミサ

2014年08月13日 | ミサ聖祭
調布サレジオ神学院前のドン・ボスコ像
(住所:東京都調布市富士見町3-21-12)

戦時中、日本のカトリック教会は軍国主義への「抵抗」よりも、「恭順」を選んだように見える。さらに、外国人宣教師は教会内の「忘恩」に苦しんだ。「聖書が言う通り『身内は人の敵になる』。(日本の)役人の善意を見ている私たちは、助けるはずの教会側からの態度を見て(邦人教区長は長期の監禁を勧めた)、最悪のことを予想する」(チマッティ神父の1943年9月9日付『日誌』より)。「恭順」への自省もなく、一方的に「弾圧を受けた」とする被害者意識に基づく「正義と平和」の訴えは無意味である。

8月6日(水)、調布のチマッティ記念聖堂で、チマッティ神父の取次ぎを願うミサに与った。毎月6日の「月命日」は、チマッティ神父の遺徳を偲ぶミサが捧げられている。午前10時30分、ミサ開祭。聖堂内は満席。夏休み中のためか、子ども10数人の姿もあった。入祭の歌「刈り入れは」を歌う。ミサ曲を始め、主な歌はチマッティ神父の作曲である。司式はチマッティ資料館館長のコンプリ神父。福音朗読は「主の変容」の場面(マタイ17・1-9)。この日は広島原爆忌で、主の変容の祝日と重なっていた。

コンプリ神父は、「弟子たちは父の声を聞いた。私たちも天国へ行った時、そこで父と子と聖霊に出会います。そして、イエス様が待っておられる。天国で私たちは永遠に幸せになれるのです」と話された。閉祭の歌は、チマッティ神父のアヴェ・マリア。私にとっては、シューベルト、グノーと並ぶ三大「聖母賛歌」である。それにしても、カトリックのミサに与ったのは、実に10ヶ月ぶりだった。私は日本のカトリック教会から離れてしまったので、チマッティ神父がローマへといざなう“保護の聖人”なのである。


調布サレジオ神学院前の聖ドメニコ・サヴィオ像
(1962年、チマッティ神父がイタリアに発注)


チマッティ神父自筆の神学院図書目録
(チマッティ資料館蔵。自由に閲覧できる)

◆この日のミサ中の主な歌:
チマッティ神父のミサ曲(1940年作の日本語ミサ曲)、入祭:「刈り入れは」、拝領:「輝ける聖母マリア」、閉祭:「アヴェ・マリア」(以上、チマッティ神父作曲)。

◆主な参考文献など:
・「チマッティ神父 本人が書かなかった自叙伝(下)」 ガエタノ・コンプリ編訳(ドン・ボスコ社・2011年)
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聖霊降臨後第8主日の聖餐式

2014年08月08日 | 聖公会の礼拝
炎天下の立教大学モリス館
(住所:東京都豊島区西池袋3-34-1)

8月3日(日)、立教大学チャペル(日本聖公会)で聖霊降臨後第8主日の聖餐式に参列した。午前10時、振り香炉と十字架を先頭に、司祭団が厳かに入堂。福音朗読は、イエスの奇跡「パン五つと魚二匹」(マタイ14・13-21)。中川英樹司祭は「イエスが神の国について語る時、いつも小さいことに価値を置かれてた。強さではなく弱さ、完成されたものではなく未完のものに、イエスの思いはあった。そして、『からし種』のような小ささが、神の働きのために用いられてきたのです」と話された。

「本日の福音にも『パン五つと魚二匹』という小ささがあります。神はその小ささの内に、ご自分の意思を果たされ、神の国が現れていることを証される。そこでは全ての人々の存在が尊敬されている。能力や権威という大きさではなく、その人の存在そのもの、何ひとつ飾るものを持たないその小ささが価値とされる。この小ささの只中に、神の国は存在します」。私は中川司祭の説教を聞き、「大きさ」や「強さ」を尊ぶ「大日本主義」を批判した石橋湛山(1884-1974年)の論説が思い起こされた。

「『汝らのうち大ならんと欲う者は、汝らに使わるる者となるべし、また汝らのうち頭たらんと欲う者は、汝らの僕(しもべ)となるべし』とは、まさに今日、日本が、四隣の異民族異国民に対して取るべき態度でなければならぬ。しからずしてもし我が国が、いつまでも従来の態度を固執せんか四隣の諸民族諸国民の心を全く喪うも、そう遠いことでないかも知れぬ」(『大日本主義の幻想』より)。1921年、湛山が聖句(マタイ20・26)を交えて発した警告は、現代ニッポンの増長をも予見していたのである。


夏休み。明日(8/4)はオープンキャンパス

◆聖餐式で歌われた聖歌:
ミサ曲2(キリエ、大栄光の歌、サンクトゥス、アニュス・デイ)、入堂聖歌:244「命の糧よ 世人のために」、続唱聖歌:371「移りゆく世にも」、奉献聖歌:508「子どものささげる わずかの糧」、陪餐聖歌:249「旅人らの日々の糧」、派遣聖歌:317「われら主をたたえまし」。(番号は「日本聖公会聖歌集」による)

◆主な参考文献など:
・「石橋湛山評論集」 松尾尊兌編(岩波文庫・1984年)
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