Little Tree

日々のいとなみのなかで感じた子どものこと、季節の移ろいやこころに映る風景

夏至間近・・・の梅雨晴れ

2008-06-11 04:24:36 | 表現すること
ところどころに、薄水色の明るい空が覗いています。

午前中は「傾聴ボランティア講座の卒業生」の方々のグループ活動についての
お知らせ作成について、ボランティアセンターのスタッフさんと打ち合わせをして

その後、ゆっくりと「夢十夜」を声に出して読んでおりました。


思うに初めて、その「夢十夜」の朗読のCDを聴いたのは、もう1年ほど前のはず。

きっかけは…おそらく(いつものように)
ラジオか何かの番組の中の、茂木先生の夏目漱石についてのお話だったのではないでしょうか?

漱石といえば、若い頃に「こころ」や「門」などのいくつかの作品を読んだことがある…
という程度でしたから、当然「夢十夜」は読んだことがありませんでした。

その時は「こんなお話があったんだなぁ」程度の感想しか浮かばずに
そのお話の細かなシチュエイションや雰囲気など、
こころに響くものを、それほど強くは感じられなかったように想います。

それが不思議なことに、今回朗読の教材として
自分自身が朗読するということもあったからでしょうか

まずは、そのお話を何度も何度も耳から聴いて
さらには、目で活字を追いながら、実際に声に出して読んでみると

まるで自分がその夢を見ているような、さらにはその登場人物の一人になってしまったような感覚で
そのなんともいえない独特の世界の中に入り込んでしまったように思えてくるんです。

それは、その作品が大変にすぐれたお話であると同時に
お話を聴いたり読んだりする私自身の側の変化によるものなのでしょうか?

そんな自分の感じ方の変化を、はっきりと意識するような
物語との出会いになりました。


さて、「夢十夜」の「第一夜」を何度も読んで練習しておりますが

女と男の交わす短いけれど、情のこもった言葉のやり取り

はかなく過ぎる時間の流れと、反対に気の遠くなるような永い時間の流れ

光の具合やいろいろな色調や香りや音といった
さまざまな感覚に訴えかける表現が、チョッと不安を掻き立てるような心地良いような…

そんな物語の雰囲気を自然な語りで伝えるには、どんな工夫があるのでしょう?

なかなか上手には出来ませんが
今までの課題の中では、一番楽しく取り組んでいるかもしれません。

いつの日か…皆さまにもお聞きいただけるようになりたいなぁ
なんて、夢のような想いがフツフツと湧いて参ります。


(実は、書きかけの記事を、また真夜中に書き次いでおりましたが)

このところ、指先に小さなトゲが刺さっているような
胸の中に浮かんでは消える、かすかな痛みがありました。

そのことを言葉にしたいという思いと、それをためらう気持とが
自分の中で1年近くも同居していたようです。


こんな月も西の空に沈んだ真っ暗な闇夜に紛れて…
そのお話をしてみようと想います。



偶然に…そんなこともあるんだぁ

という私のささやかなお話をお聴きいただけましたら、何よりの幸いでございます。



それは、ちょうど一年前、6月11日の月曜日のことでございます。


今にも雨が落ちてきそうな曇り空が広がっていたような…気がいたします。

朝からどうも元気の出ないkirikouを、なんとか学校に送り出してから
私も「2回目の読み聞かせの講座」に参加するために、慌てて家を出たように記憶しております。

横浜駅で電車を乗り替えて、その道中で開いたのは、
水色の傘をもった男の子の絵がことのほか可愛らしい、雑誌「母の友」の6月号です。

読んであげるお話のページの小風さち作仁科幸子絵
「るーるーぶーとるーるーすーのおはなし⑤最終回」を何気なく読んでおりました。

お母さん熊がお昼寝の間に冒険に出たふたごの小熊と
オーという大きな熊の出てくるお話です。

色使いもとてもきれいで、カワイイ表情の絵もとっても楽しいのですけれど…

私は、なぜでしょうか途中から泣けて泣けて仕方がありませんでした。

kirikouのことも、どこか心をよぎったのでしょうか…

大きな熊との別れが、せつなくって悲しかったからでしょうか…


そして読み聞かせの講座を終えて、知人のTさんとお話をしながら横浜駅まで戻って

ふと、(kirikouが帰るまでには時間もあるので)大きな本屋さんに寄り道をすることにいたしました。

これといって買いたい本もありませんでしたので、
いつものようにアレコレと本を眺めておりましたが

「そうだ!アノ本は置いてあるかしら?」と想って
茂木先生と江村哲二さんの『音楽を「考える」』を探しました。

「クオリア日記」で観た際には、水色の表紙だと想っておりましたが
手にとって観ると、綺麗なうす紫色で楽譜をあしらった装丁の本でした。


即!購入して、2時頃の私鉄電車に乗って

早速、『まえがき―「聴く」ということ』を読んでいると

まるで、江村さんが目の前にいらっしゃるような…そんな感覚が湧き上がってきて

耳元でお話になっているような…まるで声が聞こえてくるように感じられました。


そして、本を読み進める中

その日のうちに、江村さんがご病気でお亡くなりになったことを知りました。


その後のことは、実は記憶がぼやけてしまって…
はっきりと思い出すことが出来ません。




その半月ほど前に大阪で茂木先生とご一緒に
《可能無限への頌詩》という新しい作品を発表なさったばかりでいらっしゃいました。

私も、一観客としていつかその作品を聴く機会があれば…と想っておりましたのに
あまりにも突然のことで、言葉を失くす思いでした。



これは、ただの偶然のお話です。


ただ、江村さんのつよい想いが

横浜の空を飛んで、風に乗って…私のこころにまで、届いたのかもしれない…

と想わずにはいられない、そんな出来事でした。




窓の外も、ようやく夜が明けてきたようです。

今日の横浜は…梅雨の合間の青空が広がりますように…と祈りつつ


江村さんの作曲なさった《地平線のクオリア》を聴きながら

心しずかに、江村さんの言葉に耳を傾けてみようと想っております。



皆様も、心晴れやかな佳き一日をお迎えくださいませ。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今朝は雨です (Hbar)
2008-06-11 06:36:17
朝起きて、すぐは良いのですが、少しずつ澱が溜まって来るのです。
それも色んな澱が。
心は勝手に作って置いて行くのですよ。
心晴れやかというのは、本当に何か勘違いした時だけかな。
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心は勝手に作って置いて行く・・・ (風待人)
2008-06-11 11:01:35
Hbar さま

昨日ほど、良いお天気になりませんでしたね・・・

昨晩の10時過ぎには、西のほうに少し黄色がかった半月が浮かんでおりました。

流れる雲のように…満ち欠けするお月様のように・・・

心とは、一ときたりとも静まらずに移り変わるものなのでしょうか?

その水面にゆれる姿を観るごとく、心に映るもの・ことを
感じることが出来るものでしょうか?

それもまた・・・「勘違いのなせるワザ」なのでしょうか?

私の心も、マダマダ気になることばかりが渦巻いているようです。
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そうなんでしょうね (Hbar)
2008-06-11 14:07:17
心には流転という言葉が似合うかもしれません。

懸命に一ヶ所で静かにしようとしますが、許されません。

許されないのです。

こちらから許してみたらと。

念ずるは空、ですが実態は懊悩の渦でしょうか。
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ウマクお答えが出来ませんけれど・・・ (風待人)
2008-06-11 14:33:47
Hbar さま

私自身もまったく見えてはいないのですが・・・

『一ヶ所で静かにしようと』すること自体が

何らかの執着を生み出す・・・ということはないのでしょうか?

流れるものを、流れるままに見つめる・・・と聞いたことがあります。

実際にそれをするということは・・・?

『許す』『委ねる』『任せる』とは言いますが・・・?

とりあえず『何事も、分け隔てなく見つめる・・・』

そこから何かが見えてくる・・・様な気もします。
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心地よい時間 (Hbar)
2008-06-22 16:57:21
心を観じようということ事態、心地よい事です。
それはとりもなおさず、そういう時間の持てる程に心安らいでいる一時でもあるのです。
身悶え心打ち震わせている時は、夜叉しか見えないのかもしれません。
見るのでは無く、感じて恐怖に慄いているのみなのでしょう。
『許す』『委ねる』『任せる』という状態はそうする相手の心が入る程に心が大きく、すっぽりと相手の心が入っているのです。
しかし、観ようと思った瞬間に相手の心は夜叉に変化します。
心を大きく、相手をみようとしない事が肝心なのでしょう。
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心を観じようということ・・・ (風待人)
2008-06-23 15:32:05
Hbarさま

私自身が、まだ道の途上にあって、よく解ってなどおりませんが・・・

心の様々な動き・・・いわゆる喜怒哀楽に伴う「揺れ」や「彷徨い」だったり

時には激しく「身悶え心打ち震わせている」状態だったり

それらを感じること⇒観じることができるのか

「観察するものとされるものとの存在しない観察」ということがあるのか
あるとしたら、一体どういう状態なのか?
言葉や、概念として記述することはできないものなのか?

とりあえず問い続けること、見つめ続けること・・・

を、してみようかと想っております。
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