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2005年08月28日  |  特別寄稿:R30
 

R30 特別寄稿!『ブログは選挙マーケティングの何を変えたか ~中編~』

■ 「広告」から「広報」へ、自民党のコペルニクス的戦略転換

 翻って、今回の総選挙での自民・民主両党のマーケティング戦略はどうなっているのだろうか。まだようやく半分が過ぎようとしている段階ではあるが、ここで少し僕の推測も交えて、思うところを書いてみたい。

  今回の動向を眺めていて感じるのは、小泉首相一人の才覚とはとても思えない、自民党のコミュニケーション戦略の卓抜さ、そして対照的に昨年の参院選までとはうって変わったように精彩を欠く民主党の姿だ。

  一体何が自民党をこうまで変えたのだろう。変化の原因の1つと考えられるのは、2005年1月から自民党が電通に代えて初めてPR会社を起用したことだ。1月の読売新聞の記事が自民党の世耕議員のウェブサイトに転載されている。

  [政治の現場]50年目の自民党(2)―民主にらみ“広報合戦”―(読売新聞)

  ちなみにプラップジャパンと自民党とのつながりについては、8月に入ってからの日刊ゲンダイの記事もある。もっともこの記事は「広告」と「広報」の区別もついてないライターが書いたもののようなので、そのあたりは割り引いて読むことが必要だ。プラップジャパンは広告ではなく「広報」のプロの会社である。

  PR会社、選挙戦の攻防(日刊ゲンダイ via freshEYE)

 いずれにせよ、PR会社は複数のスタッフを自民党広報対策本部に派遣し、現場の手足となりつつ提案をどんどん出すというスタイルでやっているようだ。世耕議員のブログでは、選挙戦に突入して以来毎朝「コミュニケーション戦略会議」と呼ぶ会議が開かれ、PR会社や自民党スタッフとの議論の中で方針や対応が決まっていく様子が述べられている。25日のブロガー懇談会も、案内メールや懇談会での武部幹事長の質疑応答の様子から察するに、世耕議員とPR会社スタッフの合作によって行われたようだ。

■ 党トップと太いパイプを持つ自民党「コミュ戦」チーム

  自民党のコミュニケーション戦略がここまで一足飛びの進化を遂げたのは、やはり世耕議員の存在によるところが大きいだろう。世耕議員の人となりについては「コトバのチカラ研究所」のブログのこのエントリが詳しい。

  何度も言うが、広告(Advertisement)と広報(Publicity)はぜんぜん違う。そのことに自民党は昨年の参院選で負けてからようやく気がついた。 だが、気がついた後の対応は極めて良かったと思う。世耕議員というその道のプロを責任者に起用した。しかも、その責任者にPR会社というプロフェッショナルスタッフの手足を与え、さらに相当の権限を与えている。このことは、世耕議員のブログ「世耕日記」で、彼が一参院議員でありながら小泉首相や武部幹事長とサシで話す時間をふんだんにもらっていることからも分かる。

  広告は一方通行のコミュニケーションなので、訴求したい「商品」がしっかりしてさえいれば、あとは現場に任せてしまって構わない。だが広報は違う。広報の最強の武器とは「トップのメッセージ」である。政策という「商品」がしっかりしていることはもちろん大切だが、広報活動においてはそれ以上に刻一刻と変化する社会全体、あるいは競合相手の状況に応じて行うポジショニングの見直しが、メッセージを発するトップに正確に伝わっているかどうかが決定的に重要なのだ。

  この点において、世耕議員という「広報の参謀」が小泉首相、武部幹事長らトップと密接なパイプを持ちつつコミュニケーション戦略を決めている自民党の選挙マーケティング組織作りは、極めて理にかなっていると言えるだろう。

■ コミュニケーション戦略組織の“顔”が見えない民主党

  では、民主党のコミュニケーション戦略はどうなっているのだろう。ネットで少し調べてみた結果をご報告する。 まず同党に「広報対策本部」といったものがあるかどうか、調べてみた。…ない(笑)。 正確に言うと一昨年までは「広報・宣伝委員会」という組織があったらしい。ところが2003年12月、どういう経緯かは知る由もないが、それが「国民運動委員会」という部門に吸収・統合されているのだ。しかも、マスコミ対応は「役員室直属へ移管」となっている。つまり、マスメディア対応と広報の機能が別々の組織によって担われているようなのだ。

  しかもこの国民運動委員会というのは、Googleで検索してみると副本部長が何人もいるような何やら横串的横断組織らしく、しかも選挙対策委員会という選挙の司令塔とは別の組織である。いったい誰が衆院選における広報・コミュニケーションの戦略担当者なのか、皆目分からないのだ。 さらに、これらについての組織図や役割分担、責任者名などの情報が党のウェブサイトのどこにも掲載されていない。上に述べたような情報は、すべて個々の国会議員の選挙区向け活動報告やプロフィルの中から拾い集めたものである。

■ 「コンセンサス型組織」を築き上げてしまった?民主党の蹉跌

  もっと根本的なことを言えば、選挙における基本的な戦略を決めるトップが誰なのかさえも見えない。民主党の代表と言えば、岡田克也党首だと誰もが思うだろう。しかし同党の中で「代表」の肩書きを持って選挙戦を戦っている人は、他にあと3人いる。小沢一郎「副代表」、菅直人「前代表」、鳩山由紀夫「元代表」である(笑)。冗談ではないのだ。党のウェブサイトにそう書いてあるのだから。 少なくとも、これではコミュニケーション戦略の担当者が誰だろうと、メディア対応やコミュニケーションについての迅速な意思決定ができるわけがない。「代表」の肩書きを持つトップ4人と幹事長と選挙対策本部長と国民運動本部長と役員室長とその他多数の副本部長のコンセンサスを取って回らなければいけないのだから。

  競合相手の組織が機能不全に陥っており、すぐには有効な打ち手が繰り出されて来ない場合のマーケティング展開なら、じっくり時間をかけて開発した、優れた「商品(マニフェスト)」を配りまくり、広告や人海戦術で絨毯爆撃をしていけば良いわけで、それならばこのようなコンセンサス型組織でも良かっただろう。

 だが今回の選挙は誰もが予期しなかった不意打ちの短期決戦であり、しかも競合相手の小泉首相がすごい勢いで強烈なポジショニングを打ち出している。刻一刻変わる戦況をスピーディーに吸い上げて自分のポジショニングを見直し、それをトップの発するメッセージやアクションに即座に結びつけなければならないような今回の選挙戦では、今の民主党のような組織体制には決定的に不利と僕には思われる。

後編につづく


■ PROFILE
関西生まれの30代男性。大手経済誌記者としてマーケティング分野を中心にさまざまな業界・企業を取材したのち、2004年末に記者を辞め、サービス企業に転職。「R30」のペンネームで、マーケティング的見地からビジネスや社会事象の評論を行う趣味のブログ「マーケティング社会時評」を更新中。ブログ界で高い注目度と影響力を持つ。将来の夢は専業主夫。

R30::マーケティング社会時評 http://shinta.tea-nifty.com/nikki/  


 

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コメント
 
 
 
郵政より (医療 過誤)
2005-08-29 06:21:30
今度は消費税上げるときやがった。 潰れろ小泉・・・身障者改悪法案廃止しろ!!
 
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