宙場館

市町村文化圏に住む、あるしがないアマチュア楽隊人の日々

10年前

2005-03-21 09:16:39 | ニュース
 1995年3月19日。私は東京・渋谷のオーチャード・ホールにいた。目的は初めてのオペラ鑑賞。演目は小澤征爾・新日本フィルによる「セヴィリアの理髪師」だった。

 オペラに行ったといっても、懐に余裕は無いので席は後から2列目。出演者の顔は見えない席だったが逆に字幕が常に目に入るので、言葉は分からなくてもあらすじを理解することができ、とても楽しい午後の一時を過ごした。

 終演後は池袋に出て買い物と夕食を済ませ、宿をお願いした横浜の友人宅へ向かおうとした。いつもならJRで横浜へ出て相鉄線、というルートだが、この日は、なんとなく余韻に浸りたい気分であったのに加え、友人は当日仕事のため伺う時間も21時30分過ぎの約束だったこともあり、東横線でのんびりと向かいたいと考えた。こうなると、東横線に乗るまでも池袋から丸の内線、大手町乗り換え千代田線、霞ヶ関乗り換え日比谷線、という何とも手間がかかる乗り方を選んだ。

 霞ヶ関の乗り換え時刻は21時になろうとしていた。乗り換え通路を歩くのは自分一人。こんなところで通り魔強盗に刺されて殺されても、見つけられるのは明日の朝かな、なんてことを考えながら日比谷線のホームに向かった。

 翌朝、友人宅で目覚めた私は東京の地下鉄が止まっている、というニュースを知った。予定ではもう一度東京に戻る予定だったが、少々異常な状況であることを感じ、予定を切り上げて自宅に戻ることにした。そして、昨晩の続きのように相鉄、小田急、JR御殿場線、東海道線と乗り継いで帰宅した私は、前夜日比谷線に乗ったホームで何が起こったかを知った。

 もし、あの場所で前夜の下見が行われていたら…。