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【現代思想とジャーナリスト精神】

「大失敗の亡国外交」、日刊ゲンダイが的確に批判した日ロ会談の本質

「大失敗の亡国外交」、日刊ゲンダイが的確に批判した日ロ会談の本質


                   櫻井 智志

 以下に掲げる記事をお読みいただくと、今回の日ロ会談の実質的内容が明確にあらわれてくる。

 これでは、日本外交を蓄積してきた伝統は、破壊された。いわば対米も対ロも、安倍首相の外交は御尊父安倍晋太郎元外相からはなにも学ばず、卑屈な「ドレイ的マインド」外交しかできないということだ。

 欧米首脳は、伊勢志摩サミットで一瞬のうちに安倍首相の「外交能力」「政治能力」を見抜いていたことだろう。

 そんな屈辱的な全体像をどうとらえ、テレ朝「報道ステーション」TBS「news23」は、安倍首相に多くの時間を提供し、国民懐柔のためのイメージ操作の時間となんら批判色のないあいづち報道をおこなったのか。報道の自殺行為ではないか。

 改めて、外交や報道が、日本ではどれだけ詭弁や巧言令色に彩られ、本質が民衆には届かないような「日本というシステム」に、外交の危機、報道の危機そしてそれ以上に、日本国の政治と統治の破滅的な色彩に彩られた危機を強く感じる。






(以下の記事は日刊ゲンダイが有料配信に限定した記事なので、引用箇所の転載をお断りします。)

=====引用開始==================

【日刊ゲンダイ 巻頭特集】

大失敗の亡国外交ショーを実況中継 戦慄するプーチン狂騒
2016年12月17日

プーチンにまんまとやられた(C)JMPA


 2日間のプーチン大統領訪日が終わったが、16日行われた共同記者会見でのロシア人記者のプーチンへの質問が、今回の首脳会談の“不毛”を物語っていた。ひとりは訪日とは無関係な「シリア情勢」への対応を問い、もうひとりは「日本のホスピタリティー」への感想。首脳同士の個人的な関係によって、安倍首相が領土問題で何らかの結果を出していたなら、ロシアメディアは大騒ぎでプーチンを問いただしたはずだ。

 結局、北方領土について出てきたのは「元島民の自由な往来」ぐらい。安倍が「大きな一歩」と意気込んだ共同経済活動にしたって、注目された「特別な制度」も「(その制度を作るため)交渉を開始することで合意した」という次元だからドッチラケだ。日本のメディアは「特区のようなもの」と簡単に解説しているが、主権を主張するロシアと法的立場を害さないことを求める日本では、交渉のテーブルに着くことさえ実際は不可能。「特別な制度」なんて気の遠くなるような話だ。


 筑波大教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。

「プーチン大統領には、そもそも北方領土を引き渡す気など最初からなかったことが、今度の訪日ではっきり分かりました。これだけの大変な歓迎を受けながら、『手ぶら』でやって来た。それどころか、まるで年越しの集金に来たかのようでした。お金だけはしっかりもらって帰る。それほど経済援助が欲しかったということでしょう。極東に回せる連邦予算は半減してしまっていますからね」

■「ウィンウィンの関係」に元島民も苦言

 極東の産業振興を中心にした「8項目の経済協力」で、プーチンは総額3000億円規模を手にした。領土問題は全く進展していないのに、これじゃあ、成果ゼロどころか食い逃げだ。

 ところが、安倍“お抱え”のNHK女性記者は、「ODA(政府開発援助)ではありませんから、食い逃げではない。ビジネスです。ウインウインの関係です」とどこまでも援護する。安倍本人も会見で、「ウインウインの日ロ協力の大きな可能性を開花させたい」とか強調していたが、NHKの中継に登場した択捉島の元島民は「ウインウインの関係というのは疑問。ロシア側にとって(いい話)としか思えない」と断言し、スタジオに微妙な空気が流れていた。

 元島民の手紙をプーチンに見せたりと、安倍が毎度の情緒に訴える手法を繰り出しても、今度ばかりは、さすがに世論もダマされないんじゃないか。

 そんな屈辱モノの外交ショーを実況中継し続けたテレビも酷かった。特にNHKは、遅刻連発の高飛車訪問を“プーチン閣下”とばかりに上空に特別機が見えたところから追い掛け、空港に到着すれば、ヘリコプターで車列を空撮。民放のワイドショーは、夕飯に何を食べた、日本酒はこの銘柄、プーチンは温泉には入ったのか、などと大ハシャギだった。

 山口県の安倍の地元は、300人が日ロ両国の旗を振って、歓迎のお出迎え。「もともと1000人に声が掛かっていたが、400人しか集まらず、待ちぼうけをくらって、300人に減った」(地元関係者)とはいえ、いやはや、2日間にわたって、朝から晩まで“プーチン狂騒”。いったいどこの全体主義国家か、と背筋が寒くなってくるのである。


EUはロシア制裁を強化(右=独メルケル首相、左=仏オランド大統領)/(C)AP

EUを呆れさせる制裁破りの矛盾外交

 ヨイショ報道の裏で、世界は緊迫の度を高めている。

 欧州連合(EU)が現地時間の15日、ブリュッセルで開いた首脳会議で、ウクライナ情勢をめぐって実行中の「対ロシア経済制裁」を来年7月まで6カ月間延長する方針で一致したのだ。独メルケル首相と仏オランド大統領が強く求めたという。

 そんな日に、対ロシア制裁に加わっている日本の安倍が、プーチンと温泉旅館で酒を酌み交わしているのだから、EUの首脳たちは不愉快なはずだ。そのうえ、見返りゼロで3000億円も献上する。一体、どんな国なのかとア然だったことだろう。日本の外交的信用は吹っ飛んだ。


 国際ジャーナリストで早大客員教授の春名幹男氏がこう言う。

「訪日直前の日本メディアとの会見で、プーチン大統領は『領土交渉』そのものをしないことを明確にし、冷や水を浴びせました。日本側は『経済協力するから話し合いを続けて』と、プーチン大統領に懇願して来てもらったようなものです。そのうえ、成果は何もないのに、来てくれただけでお駄賃を渡した。『この程度で日本は大盤振る舞いするのか』と欧米は呆れていますよ。こんなものは通常の外交交渉とは言えません。安倍首相はウクライナ問題の本質が全く見えていないのです。ロシアが恐れているのはNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大です。この地政学的な問題で日本がどんな役割を果たせるのかを念頭に置きながら、ロシア制裁に反対するのならまだ分かる。ところが安倍首相は、G7と制裁で足並みを揃える一方で、制裁破りのような矛盾した行動を取る。筋が通りません。もはや日本外交は崩壊しています」


 それなのに日本のメディアは、「G7とは協調して」という安倍の背反した言葉をそのまま垂れ流す。日本の孤立を決定づけた外交大失態に誰も言及しないのだから異常だ。

■18年大統領選向けの選挙活動

 3000億円規模の経済協力については、NHKのロシア特派員ですら、「G7の一角の日本との間でこれだけの経済協力を得た。ロシアは孤立していないという成果になる」と解説していた。日本はまんまとプーチンに利用されたということだ。


 前出の中村逸郎氏は、プーチンが訪日した真の狙いをこう読む。


「プーチン大統領は、今月初めの教書演説で2018年3月の大統領選の事実上のスタートを宣言しました。ライバルがいるわけでもないのに焦るのは、有権者の無関心を恐れているからです。直近の連邦選挙も投票率が低かったですからね。『日本から経済支援を引き出した』ということで有権者の関心を高められる。つまりプーチン大統領は、日本に選挙支援をもらいに来たようなものなのです」


 共同記者会見後、プーチンは安倍と一緒に柔道の総本山・講道館を訪れ、演武を見学。黒帯のプーチンが安倍を道場に誘い出す“冗談”で場を沸かせたのだが、“安倍サマ”のNHKはこの講道館訪問までしっかり生中継していた。


 最後に安倍は「プーチン大統領の来日は歴史的出来事」と締めくくっていたが、これはどう見ても、「お土産付き観光旅行」でしかない。こんな亡国外交を、安倍官邸の大甘見通しを受けて何カ月も前から盛り上げてきたメディアの罪も重い。


======引用終了===========

*写真は今回の安倍・プーチン会談の危険性をもっともよく見極め批判をあきらかんにしたドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領。日刊ゲンダイ該当記事に使用されていた写真です。







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