伊澤屋

ミリタリー同人誌サークル「伊澤屋」の広報ブログ。

注釈を加筆しました。

2012年04月06日 15時22分33秒 | Weblog
「序」からずっと読んでくれている読者の方からの御指摘で、小説なのだから難解な軍事用語等に注釈があると良いとあり、そこで「序」「報告書1」「報告書2」のそれぞれ最後に注釈を加筆しました。
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ジオン第八連隊記  作者あとがき

2012年03月18日 17時05分18秒 | Weblog
おかげで先週日曜平成24年3月11日、無事に最終報告書を提出できました。

去年9月11日から半年間付合って下さった多くの読者の皆様、大変有難うございました。

「もう、6話まで読んだけど特にあの台詞…」と感想下さったT氏、
「このナマナマしさ自伝っぽいですね」と直球ど真ん中に仰ったN氏、

いずれも一つの時間、空間を共有した戦友であります。
作者の私から胸一杯の感謝の言葉をここに送ります。

この物語は日本国、ジオン公国、地球。過去、現在、未来全ての人々に奉げます。



                                伊澤 忍
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ジオン第八連隊記 最終報告書  『復興(あす)への咆哮』

2012年03月11日 14時46分18秒 | Weblog
機動戦士ガンダム ジオン第八連隊記


最終報告書 『復興(あす)への咆哮』



「コントロール。リクエストテイクオフフォーレモネード05」
「レモネード05。ジオン訛りが強くてよく聞き取れません」

「そう来なくっちゃ。目標、ジャブロー一点狙い。出る!」
「レモネード05。クリヤードフォーテイクオフ」

「あいよ!」


ジオン降伏の翌朝0080年1月2日早朝(ヤープト時間)。アリマ大尉の操縦するガウはジャブローに最後の特攻を仕掛けるべくカ・ンサイ空港を離陸した。機は途中で航法ミスの為タヒチ沖に墜落しアリマ大尉は連邦軍の捕虜にされたがその後の生死は不明だ。


こっち時間の2日にジオンが降伏して以来周囲の動きが慌ただしくなってきた。
当初は休戦、運良く「対等講和」だと考えていたらグラナダ条約とは実質ジオン共和国の無条件降伏であり

「ジオン共和国は、平和的な手続きを以って『地球連邦への復帰』を決定した」

など現実を直視する勇気も持てない敗北者の負け惜しみもいい所だった。
もうカンペキ残務処理モードに入っているな。
4日仕事始めでショップに出てみれば


「シモムラとヒノモトに年賀状来てるぜ。 夫婦でもねえのにな。例のお母さんからだ」
「ん。『…お蔭で、タカシもすくすくと育っています』だと。呑気なもんだ。だから敗けるんだよ。ってウチ等も敗けたけど」

「おいこらシモムラ。地球連邦とジオン共和国は『休戦条約を結んだ』んだぞ」
「申し訳ありませんでした小隊長。共和国政府の公式見解に従い物を言うよう気を付けます」

「なぁ〜〜に気取ってんだぁ。 って放送だ」


「…達す。 本日、各小隊長所定。繰り返す。各小隊長所定」


「小隊長所定だー。ブレイク、ブレイクゥー」


新年顔出して届いた年賀状確認しただけでもうブレイクって後何すればいいんだ。
連邦軍に再就職狙って内務班で参考書開いてお受験勉強するなんて奴絶対いないし。


「小隊長。自分、都議会傍聴行ってきます。緊急時連絡先は都庁議事堂です」
「ああ承知した。 もう帰ってこなくてもいいぞ」


小隊長随分な言い草だ。 俺は今日が初日の都議会第1定例会を傍聴に都庁に向かった。



「教授。これは願ってもない良い提案です。渡りに船です」
「ああ…レイ大佐。彼の才能を失うのは本当に惜しい。だから…だ。」



暫定州も、更に運が悪ければ都もオシマイだ。この日の第1回定例会で審議に出席していた議員は議席の1割にも満たなかった。
そんな中、祖国の独立は水泡に帰し内心の尊厳以外は全てを奪われる身となった老都知事は悲しみも苦しみも憤りも他一切の情念を交えず年頭挨拶の演説を閑散とした議場に向けて続ける。

俺も「文学青年」になったねぇ。泣くなんて事はゼッテー無えけど何と無く人の生きる世のはかなさ、人も国も問わず存在する無常観みたいなもんなんて見えてきたわな。


「本日の会議は、これにて散会とさせて頂きます」


震災前と全く変わらない議長の一声で今日の会議は終わった。 



「さぁて、と。何か喰って帰るべぇ」
「あのう…本日傍聴されたテンコウ・シモムラさんでしょうか?知事が中庭でお待ちです」

「ふぇ?? 俺を捕虜にして連邦に手土産って算段かね? まあいいわ。会うって伝えてくんなよ」



都庁中庭


「来たぜ。知事は負け犬を笑うのかい?それとも俺を捕虜にして手土産にすれば命は助かるか」
「今頃になってこんな事を言えた身ではないが兵隊さん、これまで何度も都議会を傍聴に来てくれた事に礼を言いたい。 よく帰りにあの銅像を御覧になっていたと思うが」

「ん…まあな。『小便親父』の像か。俺の親父が丁度あんな顔だからさ」
「あの銅像は、御存知と思うが最後の府知事で最初の都知事が造らせたんだ」

「きっと、俺ン所の連隊長みたいにメッチャ下品な奴だったんだろうなと思うよ」
「彼は…後世の歴史家からは『下品ではあったが、かつてヤープト一の商都だったオオサ・カを復権させようとした』と評されている。比べて私は下品なだけで都民の為に何もできなかった」

「自分を責めるんじゃねぇよ。らしくねーぜ」
「兵隊さん。もしクニに帰ったら所帯を持つことです。子供を持つことです。 …それなら、どんな屈辱にも耐えて開ける未来がある。私は、政治家として筋の通った事の収め方をします」

「そいつぁこっちに来てから聞いた一番性質の悪い冗談だ。 ん、あばよ。達者でな」


律儀なジジイだね。当選したらもう民意なんぞ知るか馬鹿野郎!!って奴とばかり思っていたが。
あれ?これまであったジュースの自販機が無いぞ。って昔おばあちゃんに聞いた「旧世紀の火葬場の臭い」というか切った爪を薪ストーブで焼いたような臭いがする。 …って人が燃えてるぞ!


「消火器は!?どこにも無いぞ!!」
「蛇口が元栓から止められてやがる!」
「チクショー自販機のジュース買ってぶっ掛けて消せーー!! って自販機無いぞー!」
「防災用毛布持ってきてェ、叩いて消せーー!って毛布どこだー!?」


生きたまま微動だにせず燃える都知事の傍には石油缶。 「坊主のバーベキュー」 が見ている前で 「じじいのバーベキュー」 になって焼死しちまった。


「お前さんも、大した政治家だったぜ」



嫌なもん見ちまった。帰隊したら内務班で寝よ!物喰う気分にもなれねえや。
うおー辿り着いたぞ国は潰れたが俺の領土だ寝台だ。ん!寝る!


「シモムラ上等兵。連隊長室に出頭」


寝ようとしたら放送って何だ。十字勲章剥奪か不名誉除隊とか不利益処分っぽいな。


「シモムラ上等兵は、出頭しました」
「シモムラ。教授は知っているだろう。挨拶しろ」

「キョージュ、キョージュが連邦から戦犯指定されないように俺の証言が要るんならするけど」
「馬鹿者ッ!教授はもうご自分が戦犯の汚名を被せられてでも学生や部下の職員を守るご覚悟がお有りだ。戦犯や抑留にされないようにしてやるというのはお前のことだ」

「私が戦犯にも抑留にもされずに済む?連隊長。この時期に凄いお年玉ですね」
「そうだ…。教授、こいつに説明してやって下さい。 あ、私は最近難聴になりまして」

「和尚。和尚は以前ルウム戦役で撃沈された『イオージマ』に乗務していたというね」
「撃沈されてねえよ。大破しただけだ。俺がダメコンで最後まで粘ってボカ沈だけは防いだんだ。縁起でもねえな」

「そこでだ。その艦隊勤務の経験を生かしてだよ…戸籍も住民票も消して新しくして全くの別人になって外洋へ漁に出てそのまんま平穏な人生に転換しないか」
「?」

「だからァ!今のお前がいなくなって全くの別人になるのを教授がやって下さるって言うんだ!」
「シモムラ和尚。御坊さえ良いと言ってくれればすぐにでも出来る。手遅れになる前にやりたい」

「断る」
「シモムラ!ふざけろテメェ!!助かりたくねーのか!?」

「武人らしく潔く…なんて気は更々無いですが私はこれまでずっとジオン公国の名前を背負って仕事をしてきました。敗者として裁かれるのも同様にその名前を背負ってですべきでしょう」

「すみません。こいつは優秀なのですが強情な奴で…トラウトマン予備役少将、ってもとい!」
「大佐。この段階になってもう暴露ても構わんよ」

「キョージュが水産高専で教える前は連邦海軍に居たっていうのは知ってたよ。軍の仮設風呂で右腕に連邦マークの刺青があったの見て『消しちまえよ』って俺言ったのに消さなかったのな」
「和尚。強情なのはお互い様みたいだな」


軍籍抹消存在証明完全隠滅で外洋にトンズラという話は流れた。あとは生死決定待ちだな。
共和国化の動きが予想以上に早くて、「凱旋」なんては勿論無いがそうでなくても最低限名誉ある形でのクニへの、ナ・ンバへの帰還という脚本も消失した。



月でのグラナダ条約調印から17日後の宇宙世紀0080年1月18日(ヤープト時間翌19日)。
ドン海(旧称ヤープト海)に浮かぶ地球連邦海軍の攻撃型空母「ドクト」の艦上でジオン公国地球方面軍司令官マ・クベ中将は地球連邦に対するジオン共和国としての降伏文書に署名しジオン独立戦争は我々の敗戦で完全に終わった。
降伏文書への署名後、司令官は軍服姿のまま手錠を掛けられ連邦軍に連行された。



「おっちゃーん。ヤープトハイトはまだ使えるかい?連邦ハイトも一応持ってきたけどさ」
「ああヤープトハイトもジオンハイトもまだ使えるよ。長く酒屋やってるが今日が一番大繁盛さ」


俺の軍人としての最後の仕事は連隊の解散パーティーで呑む酒の買出しだった。


「もう一々縫わなくたって、糊で貼っ付けるだけで構わねー」


戻れば部隊解散を前にして階級章のバーゲンセール。一階級進級してのグラナダ兵長で俺にとっての独立戦争は終わった。


「仮埋葬の遺体の改葬までできたのは不幸中の幸いでしたね」
「連邦軍だってやりたくねえんだろこんな仕事」


進駐してきた連邦軍への投降と降伏を前にして連隊は解散式を行った。


「我々は、最後まで勝てなかった」


その連隊長の言葉に涙ぐみ、更には号泣する者も多かった。式は淡々と進み、終わった。


「ヒノモト兵長。俺から少々遅めのお年玉がある。有り難く受け取れ」
「?免許証…ラマイ・パク?これって?」

「こんな最悪の事態もあろうかとな、震災直後の遺体捜索でお前と同年代くらいの優等民族の女の遺体からかっぱらっておいたんだ。これ持って本人になれ。連邦の鬼に喰われずに済む」
「シモムラ兵長!」

「うわー。シモムラおんぼうだー」
「最低だな」
「坊主のくせに死者の尊厳を何だと思ってるんだ」


文脈上非難でなく絶対に賞賛の言葉の数々だな♪ その直後だった。普通の皮膚でなくなってしまい久しい俺の右頬に生温かい、湿ったような感触が来た。


「私からの、もらったお年玉へのお返しです」

「うっひょー!国は負けたがシモムラには生まれて初めてのボーナスだぜ!」
「儲けたな!」

「それでは、また会う日まで! ラマイ・パクは生存しているのでこれから戸籍を回復してきます」

「あいつ…よっぽど慌ててたのかな。ケロイドの方にしていきやがったよ」
「お前の顔でケロイドじゃない所ってどこにあるんだよ」




「ジオーニェッツ、ダワイ、ダワイ (ジオンの糞野郎共、急げ急げ)」


降伏した八連隊の残存将兵は全員がシベリアもしくはモンゴルの強制収容所に分散収容された。
連邦軍に対し降伏したジオン軍将兵と反連邦派のアースノイド約500万人がシベリア、モンゴル、アラスカ他の強制収容所に抑留されそのうち1割強の約60万人が故郷の土を踏む事無く収容所で息絶えた。

強制収容所、ラーゲリで一番処遇が厳しかった時期は…あれはもう何もかも訳が解らなくなっていた頃だがラーゲリがティターンズの管轄下に置かれた0085年から、後で聞いたグリプス戦役が終わる0088年まで辺りだ。 死んだ奴は大部分がその時期に死んだ。

俺はその後更に2年間シベリアでの抑留生活を送り0090年に恩赦でダモイ(帰郷)した。

クニに、ソーラ・レイに改装されずに残ったナ・ンバに戻ってみたら


「スペースノイドの真の独立の為に!我々と共にエゥーゴと、連邦の横暴と闘おう!!」


と説教臭く勧めてくる奴がいてよく見たらそいつはラーゲリで看守だったティターンズ将校だった。
勿論その場でギタギタのボコボコに殴打してやって縛り上げてエゥーゴに突き出した。

クニに戻っても、良い事なんて何も無かった。


以上で、俺のみっともない負け惜しみの言い訳は終了である。



                            『ジオン第八連隊記 復興(あす)への咆哮』 完


                                        (C) 伊澤屋/伊澤 忍  2671 
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ジオン第八連隊記  報告書12 『白旗』

2012年02月26日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記 復興(あす)への咆哮


報告書12 『白旗』



TELLL... TELLL...

「はい。八連隊七中隊庶務係、シモムラ上等兵です」
「技術本部第一実験場解析班トキノリ兵長です。 父から私宛のクリスマスプレゼント、本日無事到着受領しました」

「それは良かった。定期便のスケジュールがえらい逼迫しているから予定通りに届くかどうか心配でしたが一安心しました」


0079年12月25日、もう夕方で課業終了間際だったか。
地球発の官用機利用で発送した伝説の名品「チビ四駆」が無事届け先に着いたと係長の家の坊ちゃんから電話が入って俺は一安心した。もっとも明日には連邦とのクリスマス休戦が失効して無害行動区のココを除けばそんな不要不急の連絡どころじゃなくなるからな。正しい判断さね。
昨日は明けの代休。(大体レセプションで呑み過ぎ行動不能)今日以降は年末年始準備だよ。

しかし係長の坊ちゃんは若くてもしっかりしている。父の死に直面してもその事で電話口で泣く事も無く仕事に一切私情を挟まずにただ「クリスマスプレゼントがちゃんと着いた」とだけ伝えてくる太い神経は正真正銘の職業軍人だ。俺なんて七回生まれ変わっても真似できんわな。

本国からの行き帰りで遺族弔問と墓参の為のスペシャル便が連邦のコアブースター(って名前だったと思う)に追い回された?とかやばい情報もあったが無事帰れたようで幸いだ。


「シモムラ。大晦日には民生協力でそれぞれの家々と今年は仮設商店街を廻るナ・マハゲをやるんだがこれにヒノモトが当初の計画通り参加する。そこで、お前も一緒に…って、あ。待て!止めとく。俺がそう考える自体間違いだった!お前の顔はお面無しでも本物の鬼か妖怪だ!」
「中隊長。正解です」

「テメェ!上司を前にしてガキ相手の教師気取りのつもりか!? 気合入れる!」


俺は嬉しいよ。 父を失っても動じない兵士がいる。もう何も考えたくなくても意味も無く他人に突っかかって罵倒して悲しみをちょっとでも忘れさせてくれる上司がいる。有難い環境だ。


「…気合入れるのは後だ。言い忘れてたがお前に異動の命令が来ている。明日付けで当中隊の庶務係は解散。お前は第一小隊に配置だ。ってゆーかウチには今もう一小しか無いんだが」
「一小隊長は、確か先週にカハライ中尉からナンザキ少尉に交代しましたね」

「そうだ。カハライは白兵戦専門だから内密に宇宙に上げた。ナンザキは新規配置の部下の申告の受け方とか知ってるかどうかわからん。『教練は凄い苦手です』とか呑み会で言ってた奴だ」



12月26日 朝  


「申告します!シモムラ上等兵は第七中隊第一小隊に着任を命じられました!」
「着任を許可する」

「お前の入営期別見ると今年の10月には上等兵から兵長に進級してる筈だが」
「小隊長も御覧になっての通りィ!全身の重篤な火傷で進級禁止の処置でありますッ!」

「ふぅ…お前は歩兵のモスも持っていなくて慣れん仕事で大変だろうが頑張ってくれ」


先行き不安だ。元々七中自体が徴兵入営したての新兵かもしくは非戦闘兵科からの転科者の教育の為の「学校」みたいな立ち位置で予備ナンバーだったのがいつの間にやらレギュラーだ。
定数が連隊で3個大隊6個中隊なのにナンバー、番号は七まであると…な。気が重い。


「ようこそ! シモムラ上等兵がウチに配置されたの歓迎します。今夜は小隊で会食しません?」
「ヒノモト上等兵『殿』!私はヒノモト上等兵殿と違い歩兵のモス、資格も持っておらず一小にいても穀潰しの恥ずべき身でありますッ!上官から敬語で話されるなど立派な人間では到底なく殴る蹴る罵倒されながら一から技能を学ばねばならない私はクソでありますッッ!!」

「…えっ、シモムラ上等兵。 何て言うべきなのか部下の私にそんな丁寧に敬語で話さないで下さいよ。歩兵のモスでは上って古兵からそう接されると、かえって何かやりにくいです」
「私はこれからは、ヒノモト上等兵殿の命令を聞く事にするのであります!」

「そうですか。では、連邦軍との直接の戦闘になった時以外は今まで通り私の上官でいて下さい」
「了!」


「オバチャンといい舞妓はんといい同業の兵隊さんといい、シモムラはもてるねェ」

中隊長だか武器下士官だか誰の声だ?
連隊補給科と酒保に行って歩兵や白兵戦の教程は無いか探したら「無ぇよ」と。
考えたら教科書や取説読みながら目の前の敵と戦って殺せる奴なんている訳ないか。
ん。余震なのかそれにしては小さいが気持ちほんの少し地面が揺れた。

「ワーニング!ワーニング!警報『R』。各員決められた対処を行え!」


いきなりけたたましい放送がかかった。警報Rって放射線かよ!速やかに近くの建物に退避するのが準則だ。ワ・カヤマのアレは俺等がしっかり収束させたしココからはメッチャ遠い。
一体何の騒ぎだって言うんだ。気分良くないぜ。


「シモムラ上等兵は、戻りました。先ほど対放射線ワーニングが発令されたのを聞きました。」
「戻ったか、って準則上外歩いていいのか?まあココならまだいいが」

「はい。なるべく放射性の塵に触れないよう各建物内を通りながら中隊まで戻りました」
「悪い結果だな…。コーヤコーヤ山が連邦軍の核攻撃を受けてたった今消滅した」

「!」
「近隣都県のモニタリングポストに異常が無いからこいつは純粋水爆だ。1発目のこれは警告だ。この分だと次は旧式水爆、放射能ドバーッの最悪な奴が来やがるな」

12月26日 ヤープト時間0903i、地球圏標準時同日0003z(ゼブラ)だった。


一瞬、正直な話コレはあくまで中隊長得意のキツい冗談で、「コーヤコーヤ山時間」即ち遅刻が御利益などと毎度の如く遅刻、すっぽかしが常態化ししかも侘びの言葉の一つ無い同山の阿呆坊主ども煉獄の業火で焼き殺されやがれとかいう意味で警報Rついでに真剣極まる表情で名演技したんだとしか思えなかったが(俺も、冗談に引っ掛かったフリをして一旦は驚く真似をしたのだ)次第に正確な情報が軍民で交換されるにつれ認めたくないが真実と判ってきた。

予想の必要すら無いが官民問わずヤープトの世論は沸騰、それどころか赤熱した。


「南極条約もよう守らん腐れインケツ連邦に絶対報復しろ!旧式原爆なら1週間で作れるぞ!」
「ジオン軍の技術者も引き込んで、ワ・カヤマの材料で『ダーティー爆弾』今日即刻作れ!」
「無害行動区なんて無くても、もううちらも独自の軍隊作ってジオンと共同戦線だ!」


これら憤りに対しては


「ヤープトは南極条約を批准していない。馬鹿じゃないのか」
「所詮、世を捨てた坊主たちが更にいっぱいバーベキューになっただけじゃないの」


前者はタカ派で差別主義者の連邦軍人。後者は連邦政府の警察大臣夫人か憲兵総監夫人だかの無神経極まる答だったか。 これらがあり良くも悪くも歯車が回り始めた。
ジオン公国と地球連邦で結ばれた南極条約では交戦国は軍事占領地を交戦国間の合意無く

・併合してはならない。
・独立させてはならない。
・交戦当事国以外の第三国に引き渡してはならない。

と旧世紀の万国公法以来続く交戦法規が踏襲されたが連邦側の「ヤープトは南極条約を『批准していない』ではないか」という暴言を前にこれまで「連邦も条約を守る限りは」と腰の重かった総帥府もヤープトの暫定州から国への昇格、完全な独立と国交樹立の方向へと舵を切った。



「ん、『ジオン公国とヤープト国の間の国交樹立基本条約』ってうちら側の奴はこれでいいんかな」
「コーヒーとかこぼして汚すなよォ。正文の原本の予備なんて今頃になって幾つもないんだぞ」

「こっちの作業の方がヤマだな。『日慈国交樹立基本条約』って中世語だとこの漢字でいいのか」
「ネイティブの国語学者とキ・ヨミズ寺の貫主がこの漢字でいいって言ったぞ!縁起良い字だと!」

「うち等の…軍旗じゃなくて国旗だ。ヤープトの旧国旗は用意できてるか?」
「旧じゃなくて『新』国旗って呼ばなきゃ。近くの洋裁屋で大小両方出来てる」

「条約の調印は…現時点ではここだけの話にしとけよ。まだ正月元旦でしかも役所や報道がもうすぐ閉まる、動きが鈍ってくる時間帯の宇宙世紀0080年1月1日1530ゼブラ。ヤープト時間だと日付越して2日0030iだ。まさかこんな時間だとは思うめぇ」
「うち等側の条約調印全権代表は第四飛行団長のタモガミ准将か。あのヒトごっつナショナリストだからきっと『今から最高のお年玉だぁ!』ってメッチャ喜んでるだろうな」



「しっ、放送だ」
「達す。手空きの要員は総員連隊講堂に集合。本国からの重大決定を伝達する」


連隊講堂。

「連隊長の本官から伝えるのも辛い報せだ。ここにいる大部分の兵士諸官にとって故郷たる我々の48バンチコロニー ナ・ンバは内部住民を疎開させた上で今次戦争の決戦兵器たるソーラ・レイへ改修される。既に3バンチ マハルはこの改修を終えている。 年明けにも住民疎開と改修作業が開始される為家族のいる者は…方面軍通信団に調整し秘話レベルは最大に指定してあるので連絡を取れ」
「うっひょぉー」


俺は敢えて親父にもお袋にも電話とかはしなかった。「秘話レベルは最大にしてある」って…連邦の傍受部隊だって無能じゃないしナ・ンバで民間人の一般家屋にある電話なんざ話す内容丸裸筒抜けだ。 「意図的にわざとらしく」 形を整えた連隊長お得意の心理戦だと俺的に解釈した。



明けて宇宙世紀0080年1月1日15時09分(ヤープト時間同2日00時09分)

TELLL... TELLLL...

「はい。八連隊当直将校モリ中尉です。何?全軍で戦闘行動を停止、直ちに停戦と?」


                                      報告書12 『白旗』 完



次回予告

今の俺に、今更何を言えって?


次回 最終報告書 『復興(あす)への咆哮』

最終回拡大スペシャルだ。見ろよな♪


                                        (C)伊澤屋/伊澤 忍  2671
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ジオン第八連隊記  報告書11 『それまで、国があれば』

2012年02月12日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記 復興(あす)への咆哮


報告書11 『それまで、国があれば』



「んんっ…んっ、はぁ、はぁ、あああっ…あああぁぁ〜〜ッ!!あっ!凄い。凄いッ!!あああっ、あああぁ〜〜〜!!凄いわ!凄いわッシモムラ和尚、いいっ!あ!ああぁあ〜ッ凄い!凄いッ!凄く気持ちいいっ!気持ちいいのぉっ!ああっ!ああッ!!」


「あの身障カップル、お盛んねェ」


「…ったくよォ、腰と背中もんでやってるくらいで気持ち悪い喘ぎ声出すなよ。やるのが嫌になるぜ。ってゆーかそれにしてもオマエ本当変な凝り方してやがるな」
「だってぇ、気持ちいいんだもんさ。ま、『変な凝り方』って両脚があった頃に比べて筋肉の使い方が偏ってるからどうしても…ね。やだ。なんか泣けてきたよ」

「泣いたって新しい脚は生えねーよ。そうだ、チビ助共。俺が来ないときは時々姉ちゃんの背中乗ったり足の裏踏んだりしてやれよ。あと右脚の切断面は間違っても絶対に蹴飛ばすんじゃねーぞ」
「了!」

「軍隊用語かよ…こういうネタは本ッ当よく覚えるもんだな」


オオサ・カ都内。被災者用仮設住宅。俺が「かかりつけ」か?自殺を思いとどまらせ面倒でも義足を造ってやったバカ女の為に、製品の義足のアフターサービスと診察っつーのか全身マッサージしてやる面倒な作業工程。近所のおばちゃんに色々噂されたってもう別に気にもならんな。


「ああ、こいつぁクリスマスイブの前日23日にやるお楽しみ会の案内だ。暇なら観に来ればいい」
「ん!お笑いもあるのかぁ。右脚無くなったのも忘れて楽しめそうだわ」

「そんなとこだ。 ん…そうだ。お前の為にジオン軍として公式の通り名を俺から授与してやる。
『かかし女』 でどうだ」
「何だよそれーー!?やだよカッコ悪ぃー」


兵士としては限り無く無能な俺がこんな、脱線した分野だけでも人の役に立ってるのかと考えると例え自己満足でも少しは気が安らぐ。少しは、な。もう部隊に戻らんと。


「和尚さん、あのコとはお熱いのかい?でも何であれウチの近所から自殺者出さずにしてくれたのには感謝するさね。でもさ…あの娘が自殺一歩手前まで追い詰められてたのも一種解るんだよ」
「オバチャンおだてるなよォ。 でも舞妓や芸者ってそもそも前借金に縛られた労奴で最後は性病に罹って使い捨てとかヒサンなんだろ?なら片脚と引き換えでそうならねー方がまだいいわな」

「えぇ〜ッ?情報古いよ。ここじゃ舞妓って医者や弁護士になるよりもっと難関の超エリートよぉ。準公務員って言っていいんじゃない?連邦軍は官官接待も全部官費で気前良かったからねェ」
「! 俺だったらそれだけの将来失って絶望したら自殺してるよ。…何であれ、あの小さな妹と弟だけじゃやれる事には限界がある。もし俺がくたばったり捕虜になったりしたらオバチャン頼むわ」

「あいよ」


人心を掌握したつもりで全然出来ていない。修行が足らんな。俺。



「シモムラ上等兵は、戻りました」
「おぉ、戻ったか。すぐにカ・ンサイ空港に行け。お楽しみ会の出演者達が揃ったから打ち合わせだ。MIN以外に凄い大物が来るから失礼の無いように、な」

「凄い大物が!…って中隊長、私のような問題兵を行かせたら不味いのではないでしょうか」
「大丈夫。『大物』っていっても…ある意味お前の『兄弟』だから。解ると思うが内務班や近所でベラベラ自慢して話すなよ」

「了」



「座席は足りるかー?どうも予想より人出が多いぞ」
「会場側の予備のパイプ椅子出せばどうにか足りるんじゃないですか?」


12月23日1700。開演を1時間前に控えてお楽しみ会の会場の公設演芸場は熱気を帯びていた。
残念ながら俺は客じゃなくて舞台の裏で後方支援部隊だよ。便所よく済ませて手筈を確認して
どこかでしくじったら復旧策は…ああ〜頭痛くなるぜ。何でもいいから上手く行け!

1800幕が上がり、開演すると一番手は公国の誇る女性歌手のMIN。
宇宙、地球を問わず 「漫画の主題歌のお姉さん」 と言った方が通りが良いと思う。
ほぼ一曲終える毎繰り返される衣装の早替わりはMSの帰投弾薬補給、再出撃よりも忙しい。


「次!ロ・クメイカ・ン時代ドレスから女将スタイルに換装! はぁぁ〜忙しい。まるでタ・カラヅ・カの早替わりみたいね」
「その『早替わり』も元は寺院の仕事の流儀、仏教文化ですぜ。はい!女将スタイル準備完了」

「MIN、出る!」
「いなせで惚れますぜ!赤紙来たらウチの八連隊に配属希望頼みますよッ!」


狂って死ぬほど忙しかった。 MINの衣装早替わり要員が終わってから俺は照明係や空調係ももれなくしてやっと観る側に回れたのは催しもほぼ終盤に差し掛かった頃になった。

堂々最後を締めるのはグラナダ基地駐留の総帥府特殊宣伝部長を務めるミノル・トリハダ中将。
無所属廃人、モッズ系。年齢は42歳厄年で兵科はMS操縦将校及び芸能将校。

通り名は 「グラナダの道化師」。

実は「大物」とはこのトリハダ中将だ。アースノイドで地球のキョ・ウト大学法学部大学院を卒業して地球連邦軍士官学校への入校が決定していたにも関らずその栄達の道を蹴って密航でサイド3ズムシティに渡り苦学の末進んだ公国軍士官学校を首席で卒業。極めて異色の軍人だ。

大学院で後輩だったイオシダ区議が水面下で調整を取って今回の地球での演説会が実現した。
演説会が始まるや否や、その「毒」はこれまで連邦政府が唱える生命や友愛といった弱体化プロパガンダで骨抜きにされてきたヤープト人達を異常なフィールドに嫌でも引き込んだ。


「生活保護を、受けております!」
「自己破産して、選挙権も無い…」
「もっと公安にマークされたいんです」


こちらの言葉で言えば、正しく 「ドッカンドッカン」 と観客が笑った。観客席が笑いの渦とはこの事だな。正直これほどの笑い声を聞いたのは震災発生以来というか独立戦争開戦以来だった。


「それではッ、質問タ〜イム!!自由質問なので、ね。遠慮無く♪」


予想外の好反応を得て、中将もノリにノッているのが肌で判った。


「はい。中将はアースノイドなのに何故連邦士官学校を蹴り公国士官学校へ進まれたのですか」


会場の空気が凍りついた。トリハダ中将の腰の弾帯にはレーザーガンが吊るされている。
この質問を被占領民の挑戦、反抗と受け取れば今ここで 「この無礼者!!」 とキレて質問の主の青年を射殺してしまう事だってできるのだ。観客全員が脂汗を流し推移を見守った後中将は


「ん!この質問は…良くぞ聞いてくれましたッ!! 御存知の通りそもそも連邦はヤープト人をアースノイドだなんて思っていませんよ。 『お前等ヤープが同じアースノイドだって?笑わせるな!』 で終わりです。 現に私が連邦軍士官学校に受かったからお祝いにト・ヴィタシ・ンティの『ちょんの間』で●春しようと向かっても…『ポマード臭い。帰ぇんな』ですからね。女までもが露骨に私を見下した態度を取りやがるんですよ。全く!」


俺は、我ながら肝っ玉小さいが…ほっと胸を撫で下ろした。冗談抜きで一触即発の状況だった。それを固い同盟関係を再確認させる最高の材料に変えてくれた中将に深く感謝する他無い。


「どうかお顔をよく見せて下さい。ん、今舞台を降りてそちらに行きますので、ね。」


中将は「ストライクゾーンど真ん中」の質問主と固い握手を交わした後、予定には無かったヤープト旧国歌を熱唱。暫定州と都、区、軍が総力を結集したお楽しみ会は最高の夜となって幕を閉じた。

終演後出演者や作業員、地元民代表が集まってのレセプションでは俺も連隊長もMINもトリハダ中将もイオシダ区議も呑んだ。喰った。騒いだ。 おそらく、場合によっては緩慢な死を前にして一種やけくその高揚感みたいな気持ちがあったんだと思う。その位でないとやってられないもんな。
勿論「不謹慎だ」なんて下らないケチを付ける輩は一人もいなかった。連邦の報道は除いて、だ。



「めく●の女が杖を突く〜輪●しようそうしよう〜●姦しようそうしよう〜〜♪
つ●ぼの女の喘ぎ声〜〜●姦しようそうしよう〜輪姦しようそうしよう〜〜♪」

「連隊長!鼻歌でも何て下品な歌を歌われるんですか!味方の報道ももうかばいませんよ!」
「何だと?地球連邦軍の体育会系の精神の素晴らしさを朗々と歌い上げた名曲だぞ。ニワビト、ササキ、貴様等も一緒に歌わんか!」

「連隊長は…そうやって連邦もジオンも敵に回して戦争をやり続けるお考えなんですね」

「獣●ーー!!」


「レイ大佐。本官の地元だから言うんじゃないがヤープトは良い土地だ。マ・クベにも言って早い所完全な独立まで行かなきゃな。ギレン総帥は硬派だからすんなり認めるかどうか微妙だが」
「内政権はもう完全に付与していますよ!あとは外交権も含めた完全な主権の確立です。」

「お話中すみません!本国からトリハダ中将とMINさんに特別緊急のテレックスが来ております」

「ん…地球での任務を終えたら速やかにグラナダに帰還しゲルググへの機種転換課程を履修した上で総帥府特殊宣伝部長から最終防衛線囮部隊長に異動と?レイ大佐。僚機やらないか」
「私は旧ザクと旧ザクイェーガーしか操縦できませんが当該機種が調達できれば喜んで」

「MINさん。公演大成功で本国からお褒めの言葉とかですか。 って悲しそうですね」
「和尚…本当残念だわ。赤紙来ちゃった。ズムシティの首都防空大隊に年明けにも出頭って」

「気を落とさないで。歌手生命終わりって意味じゃないし生きていればまた舞台に立てますよ」


悲喜こもごもだ。 悲しいけどつくづくこれって戦争なんだと感じるよ。


「あれ、かかし女じゃねえか。レセプション招待されてたのか。和服似合うなぁ、お前。ちゃんと雪駄履けるように義足の親指分けておいたのは正解だったな」
「その呼び方縁起でもないから止めてよ。 軍に命を救われた被災患者代表ってことでね」

「ん…義足で歩くのも舞を舞うのも大分慣れただろ。何かの間違いで俺が偉くなったらジオン軍としてマジな仕事で正式に官官接待の御座敷に呼ぶぜ。俺はシンショーでも差別しない方針だ」
「それまで、国があればね」

「国って、ヤープトか?ジオンか?」
「両方」


                                  報告書11 『それまで、国があれば』 完  



次回予告

甘いんだよ。本当甘過ぎるんだよ。手前ェらにそれだけの胆っ玉と人徳でもあるとチョーシこいてやがったかそれとも只の救い難い馬鹿が権限行使して最終判断下したのか。
一旦喧嘩売ってやり始めたら、殺り始めたらどんなに正々堂々戦ったなんて理屈並べても降参したらもうノーサイドなんてフェアプレーの精神なんざ通用するかよ。手離さなくていいカードも全部相手を信用して喜んで手離してその後の結果を見るか?てめぇ死にやがれ。
 

次回 報告書12 『白旗』

駄目な商人が決まって言う泣き言だ。 「そ、それじゃあ話が違う」 ってな。



                                       (C)伊澤屋/伊澤 忍  2671  
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ジオン第八連隊記  報告書10 『太陽の塔 (後編)』

2012年01月29日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記  復興(あす)への咆哮


報告書10 『太陽の塔 (後編)』



「おいおいおい…」
「嘘だろ」
「悪い冗談だ」


後述していく事になるが大体前回言った「原子炉組」に身を投じた年配将校、上級下士官連がおそらく発したであろう所感だ。

俺は直接その場に居た訳じゃないからいかにも当事者ぶった偉そうな言い方をするのは避ける。
しかし、こういった気持ち以外にはならないのがフツーじゃないだろうか。
震災直後に壊滅的な障害を起こした原子炉は旧世紀の骨董品同然の「分裂炉」だった。



オオサ・カ都内 八連隊七中隊


「畜生!クソジジイめブッ殺してくれる!階級章が付いてたって構わねー!軍法会議上等だッ!」
「おやシモムラ、お帰り♪ 先任か?お前と入れ替わりで『現地』に行ったぜ」

「係長が?中隊長。まさか……」
「軍機だ。それよりお前に功一級ジオン十字勲章が届いてる。本来なら『正門組』は何て事無い軽作業だから貰えない筈がな、先任が方面軍司令部にねじ込んで引っ張ってきたんだ」

「???」
「勲章代の350ハイトは先任が払っておいてくれたんだ。後で先任が戻ったら礼を言っておけよ」



これより3日前、連隊本部


「これは私がやらないと絶対駄目でしょう」
「…そうだ。電気、溶接から重機操縦まであらゆる工兵任務に通じた貴官でないと決して務まらない困難な仕事だ。しかも貴官は、トキノリ曹長はムンゾ自治共和国の時代からの古参だったな。 …大変嫌な話だがその時代からの経験が要る」

「連隊長。奥歯に物が挟まったようなおっしゃい方はしないで下さい。ムンゾの時代からの古参って…私はそもそも元は連邦軍人ですし」
「トキノリ曹長!私はそんな理由でコレを命じるんじゃない! それに我がジオン軍が建軍された初期は要員の大部分がスペースノイドへの差別待遇に怒って離脱した連邦軍人の経験者で…その事は解るだろう!」

「ふっ、承知しとります。準備にかかりますわ」

「…っと、当然だが身体検査受からんと現地には行けないぞ。ほら、用紙」
「分かっていますって。 ん〜署名要るんですよね。次席軍医 中尉 キンタロウ・モリ。  軍医長 少佐 ハジメ・ニワビト。  連隊長 大佐 ガラハ・レイ。  へっ、これで良し。と」

「おい!勝手に他人の名前書くなよォ〜〜!」
「血圧や血糖値で落とされたら嫌ですらね。まぁ〜良いじゃないですかアバウトアバウトで」



長々と「判決理由」を読み上げた後に死刑判決を言い渡すみたいなのは俺はしたくない。
結論から言って、係長はワ・カヤマ原発の旧式分裂炉の暴走を阻止し廃炉にもっていくため炉心に直接入っての作業の過程で一度に大量の放射線を浴び過ぎた事が原因で亡くなった。

ショップでその事実を聞かされた時、俺は涙の一つも出なかった。
係長のことだ。地震でブッ壊れて放射能ムンムンの旧式分裂炉炉心を目の前にして笑顔で


「ここにいる全員が満遍無く被曝して満遍無くビョーキになるよりはどうせだから私一人が思いっ切り盛大に被曝して一人だけ潔くくたばった方が割りに合いますわな」


とか最後に言い残して向かったのか。


それと前後して、 サイド3 ズムシティのどこか
技術本部 第一実験場


「トキノリ兵長。お父さんが生きておられる間に会って顔を見せてやるんだ。今なら会える」
「班長、それはできません!志願してこのかた、仕事に私情を挟むなといつも父が言っていた以上…自分はここでの任務を続行します!」

「命令だ。行け!」
「…了」



誰が言ったか

「大衆の記憶力の悪さに期待しよう」

と。
係長の公務死はそれにも当らなかった。 最大級の軍機で報道も一切されなかったからだ。軍という巨大な組織体にあって定年間近の老下士官の死は任務達成の想定内の結果だった。


                                    報告書10 『太陽の塔 (後編)』 完



次回予告

命題として 「勝利の美酒より旨い自棄酒は存在し得るか」 と。自棄酒、ヤケ酒の定義によっても答は変わってきそうだが俺は最悪の自棄酒特に、他の何よりも愛していた、夢見ていたものを奪われた後その状況を再確認した上で呑む酒は多分旨くないと自分的に推定する。もう来週がヤマの、意識不明でベッドの上に横たわる末期症状最終局面の我が子を前に(最後の)誕生会だと、きっと治ると良いね。と病室の飾り付けをする母を敗北主義だと叱るインテリはそのまんま半殺しにしても構わないけどな。 俺的にはオッケーだ。
もはや敗北も、破滅も、そして栄光も名誉も無く何よりも無様な死も前にして呑む酒が突き抜けた感覚で旨く感じるのかも知れん。 多分そんなんじゃないか。


次回 報告書11 『それまで、国があれば』

畜生!酒が旨いぞ! もう知るか。明日起きたら死んでても構わねえ!



                                       (C) 伊澤屋/伊澤 忍  2671      
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ジオン第八連隊記  報告書9 『太陽の塔 (前編)』

2012年01月15日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079  ジオン第八連隊記 復興(あす)への咆哮


報告書9 『太陽の塔(前編)』



「うぅぅぐおえぇぇ〜〜ぅ、ぅぶうえぇぇ〜〜っっ、おぉべっ、あぐわぁ〜口ン中がモロ不味いわぁ〜〜」


俺は昨夜係長と呑んだ際にどうやら一歩間違えばジオン軍そのものが吹っ飛んじまいそうなトンデモなく重大なナニかを聞かされたようだ。絶対ド偉い事を聞かされたのは覚えている。
だがその肝心の内容が皆目思い出せない。


「シモムラ、随分と辛そうだな。原爆一度に5杯も呑むからだ。とことん学習しない奴だな」
「全く気持ち悪くなどないのであります!今すぐにでも無害区を離れ前線に配置されてもォ…」

「へっ、口だけは達者だな。 お前…昔士官学校と航空学生を受験したって言ってたよな」
「はい。でも私が受かる訳がありません。画に描いたような記念受験でしたけどね」

「なら…記念受験でなくてマジな話で、ノーマルスーツを着てやる仕事がある。するか?ウチと九連隊と四飛団は勿論キャリフォルニアベース整補連隊も加わる『一大国家的事業』だ」
「!絶対します。熱望します」

「お前ならそう即答すると思って中隊を留守にする間の交代の要員とかももう確保しておいた♪」


いざ志願して、やる当日になると軍服は不可で平服で行け。軍隊手帳は勿論様々な店舗の会員証類だの本人が確認できるような奴は持つな。とその時になって様々な追加注文が付いた。
「集合地点」に着けば、官用車のバスでなく…ってゆーかバスですらなく幌付きのトラックの荷台に隠れるように乗車し「要員」は若年の下士官兵は殆どおらず軒並み年配の将校か准尉曹長級の上級下士官ばかり。兵長以下は俺の他2人位しかいなかった。


「クソ。俺がくたばったら娘の学費が…まぁ、軍人になった時からこーいうのは覚悟してたがよォ」


それだけ高度な技術を要する任務に俺が? 胸が躍った。


「便所休憩の後車内でノーマルスーツに着替えろ。着替えの際は狭くても車外には出るな」


途中のSAで降りて標識を見るとワ・カヤマ県と。ラテンなノリの(←偏見っぽいが)遅刻坊主の巣窟のコーヤコーヤ山のある県だな。旧世紀から長期不況と人口減少でヘロヘロになっていた土地だがここで重要な任務とはなあ。遣り甲斐が有りそうだ。


「早く着ろォ!着方分かる奴は分からん奴に教えたれー」


慌しい。 その後更に2、30分ほど荷台で揺られて曇ったビニールの覗き窓から外に目をやると、 ああ…こういう事か。騙された。一杯喰わされた。曹長の階級章を付けたクソジジイに捨て駒にされた。 もう恨みを晴らす手段も機会も無いかもな。

遥か遠くに、荘厳な古代神殿を思わせる原発の原子炉建屋とクーリングタワーが立ち並ぶ景色が見えた。 へへヘ…あのクソジジイ、やってくれるぜ。確かにノーマルスーツ着用でないと絶対できない仕事だ。
原発の敷地内に入るとちょっと場違いな、航空軍の赤い大型化学消防車が停まっている。


「核汚染の懸念で、元いたカ・ンサイ基地に戻れなくなったんだ」


小隊長の中尉が表情一つ変えず説明してくれる。


「降車、降車ァ! おいこら!お前ら兵隊は原子炉組じゃない降りるな。ヨコタ軍曹の指揮下に入って別の任務だ。な〜に真面目な話本当に安全な場所だ。信用しろ。これが命令書だ。現場に着くまでこの命令書は開くなよ」
「追加ァ!原子炉組以外も作業中にヘルメットのバイザーは絶対開くな!」

俺たち10、20代の兵隊たちの配置は原子炉他主要部から遠く3、4kmか離れた発電所正門での報道(勿論完全に無許可取材だ)や地元一般人の(勇敢過ぎるぜ!→)野次馬への対応だった。


「確かにノーマルスーツ着用で完全装備でないとできない仕事ですね…ってゆーかこれノーマルスーツじゃなくて外見同じですけどフライトスーツですし!放射線防護能力ありませんよ!」
「シモムラ、ぼやくなよ。 と言うより線量計見てもココは平常値だぜ。判るだろ?」

「…『壊れてる線量計』ってオチじゃなくて計測器検定も通った信用できる奴ですからね」
「そういう事。ウチ等は命令書通りにやればいいさね」


別にプロパガンダ抜きで、この時要員に渡されていたのは「計測器検定」も合格し検定印も押されたちゃんと正常に作動する線量計だった。兵隊たちに対しこういった部分ではジオンは連邦より遥かに「面倒見が良かった」と言って嘘は無い。


「何故取材できないんですか!公国と暫定州との信頼関係を考えても、人々の知る権利…」
「この場所での放射能の値が許容限度を越えており特殊な装備も無く立ち入って取材する事が不可能だからです。この線量計の計測値をご覧になって下さい」

「……えっ?これって? おぁああっ、うわっ!ふんぎゃああぁぁ〜〜〜!」
「逃げろーーっ!まじやべーー!!」


さっきまでジオン地上軍にスカウトしたくなるくらい勇敢だった報道陣、撮影クルーたちは顔面蒼白になり次の瞬間血相を変えて蜘蛛の子を散らすように一斉に帰ってしまった。


「おい、マジでここの放射線量ヤバいのか?」
「まさか!この線量計デモ機能で好きな数値出せるんですよ。命令書にも報道対応でこうしろって書いてありました」

「命令書って…よく隅々まで読んでるもんだ。シモムラ、お前って似非坊主になって御人好しのヤープト人どもに詐欺やりまくったらきっと儲かるぜ。『嘘も放便』だな」
「だからァ!似非坊主じゃなくてリアル坊主です」



だいたい同時刻。 キョ・ウト郊外のどこか。公式にはそれほど機密性も高くない戦略上重要でもないとされている補給処の整備場。


「砲身を黄色く塗って『災害派遣』のプレートを車体前後に付けて…か」
「安全通行の保障だよ♪」

「敗戦を実感するね」
「まだ敗けてねぇよ」

「しかし…放射線防護とか密閉性っていうの考えたらマゼラアタックに排土板付けるんじゃなくて捕獲品の61式の方が良かったんじゃあないかなあ」
「でもこいつだってキャノピーは鉛入りガラスの特注品だしその外側に中性子防護板も追加した頼れる奴だぜ」

「それより整備長。漢字で『災害派遣』って字がもし間違っていたら恥ずかしいぜ。その手のスカは連邦の笑い者にされると上層部からの評価がヤバい」
「大丈〜夫。旧世紀の原発事故で出動した戦車の報道写真でもこの字と同じだったし中世語に詳しいネイティブの国語学者の最終確認も受けた」



以上は、現地で排土板装備のマゼラアタックを操縦して瓦礫と残骸の撤去任務に従事した機甲科の大尉から任務の全日程を終了した後の打ち上げで雑談がてらに聞いたやり取りだ。
関係者総員の所見として、マゼラアタックよりも捕獲品のロクイチがあったらそっちにしたかったという事だった。

しかし…俺はいわば「安全地帯」でノーマルスーツ(実際には、外見は同じだが放射線防護能力の無いフライトスーツ。地上配備のドップやワッパの乗員とかが着用する奴だな)で「コスプレ」して歩哨をしていただけなので任務終了後に軍病院の全身放射線計即ちボディーホールカウンターで数値を計っても全く異常は無く行く前と変わらない事が確認できた。
報道向けの信用性を高めるために軍とは関連性の無い都立や民間の病院の検査も受けた位だ。むしろこっちの方が俺的に面倒臭くてしかも辛気臭くてよっぽど病気になりそうだった。

一番最前線で任務に当たった原子炉組連の結果については不明だ。

俺は前にも言った通り地上軍に異動する前は宇宙攻撃軍の軽巡「イオージマ」乗務で所属は機関科。戦闘配置ではその恒常任務以外に適宜ダメコン要員という役どころだった。
自慢じゃないがズムシティの機関学校(その後暫くして航海学校と統合された)では学校長褒章を受章する位の模範兵だった。
その際座学で、艦船用機関か発電用かとか用途によって多少違いはあるが宇宙世紀の現在原子炉、反応炉(リアクター)はどんな旧式も含め皆「核融合炉」になっておりジオンの先端技術たる

「ミノフスキー・イヨネスコ型反応炉」

は別格として宇宙でも地球でもまだ融合炉になっていない、旧世紀時代の国宝か重要文化財?レベルな「核分裂炉」なんて運転コストはともかく制御不能の暴走や汚染の危険性もシャレになんねーから1台も残っていないと教官から教わった。

軍のあの警戒ぶりは?何より人的資源が貴重なジオンが現場の兵士の為、分裂炉でなくても念には念を入れていたのだと一義的には考える。

でもな、もしかして地球連邦として 「劣等種のヤープには、旧世紀の分裂炉で十分だ」 という判断でヤープトに危険極まりないバクダンを押し付けてたってセンもあるとしたら凄い気分悪いな。

まぁ、放射能で健康被害が表面化するって、自覚症状が出るまで俺が戦死せずに生きていられるって保証も無いんだが。


                                   報告書9 『太陽の塔 (前編)』 完



次回予告

知るのと、知らないのとどっちが幸せかって野暮なコト聞くねえ。 「人間、一生知らない方が幸せな事もある」ってそいつは当事者じゃないから「後世の歴史家」目線で酒のグラスを傾けながらカッコつけてキザに言えるってだけのハナシだ。 
知っても知らなくても結果どちらにしろ不幸だった。
美しい悲しみなんて、ねーよ。美しい悲しみよりも分からず屋の上司と阿呆なコウハイに挟まれてハンバーガーの具にされて毎日下らねードタバタ喜劇してた方がちっとも美しくねーけど実際よっぽど幸せだっての。


次回 『太陽の塔 (後編)』

不良債権処理、完了。 したと俺は伝える。見て確認するか? 


                                       (C) 伊澤屋/伊澤 忍  2671   
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ジオン第八連隊記  報告書8 『親父と、チビ四駆』

2012年01月01日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記  復興(あす)への咆哮


報告書8  『親父と、チビ四駆』



「…なあ、シモムラ。昔流行ったチビ四駆ってヤープトだとまだ売ってるんかな」
「あの20年位前にあった奴ですか?」


俺の直属の上司、八連隊七中庶務係長のトキノリ曹長は「粋」だ。「野暮」と会話なんてしない。
どれくらい粋かって?軍人よりツ・キヂの魚河岸で仲卸の社長やった方がずっと似合うくらいだ。
俺みたいな野暮なクソが仕事で何らかの報告を上げる際に会話の中に「あの〜」とか「え〜〜と…」なんて無駄な接続詞を挟もうものなら

「あ〜〜〜ッ!!もういい!」

と強制終了。以後の話なんて聞いてもらえない。 その係長がか?あたかも初心者が専門家に教えを請うような「謙虚な」口調で遥か以前に絶版になったレトロおもちゃの情報について俺に訊いてきた事に馬鹿でクソな俺もたまげた。この日はクリスマスイブの前日23日に軍民合同でやるお楽しみ会の準備調整とかでえらい忙しかったのだがその合間お茶タイムにこの話題だ。


「経済制裁時代に絶版されたのは知ってる。でもヤープトって今にも潰れそうな下町のおもちゃ屋や駄菓子屋で恐ろしく昔の名品が売れないまま倉庫の奥に『寝てたり』するだろ。倅のクリスマスプレゼントに贈ったら凄い驚くんじゃないかと思ってな」
「地震や津波でも被害受けなかった生き残ってるお店とかを探せば絶対ありそうだと考えます」


ここで予備知識の無い第三者に説明しておくと、『チビ四駆』とはMSの駆動推進系で知られるツィマットにかつてあった玩具部門から発売され宇宙世紀58〜61年くらいに爆発的に流行した脳波操縦式のラジコンカーのことだ。ナ・ンバにその工場があった。
手動リモコンでも音声認識でもなく「鉢巻アンテナ」と呼ばれる専用コントローラーを用い頭の中で考えたままに走る姿に、級友の兄貴から借りてやらせてもらった俺は大いに感動した。
ただ、知る通り不発に終わった58年の共和国宣言の翌59年から本格化した連邦の経済制裁で以後製造が不可能になり惜しくも絶版に追い込まれた。
誕生日に親に買ってもらおうと楽しみにしていた俺は落胆し、ナ・ンバでは大人も含め反連邦暴動が起きそうな勢いだった。それだけ人々から愛されていたのだ。地球側メーカーも何度かパチ物、海賊版を造って売り込もうと画策したが結局同じ性能の物は最後まで造れなかった。


「チビ四駆の改造部品や強化パーツとかって付けるのに本体削り直したりする必要あるんかな」
「ツィマットの純正品ってなっていたら、本体改造しなくてそのままポン付けできますよ」
「ん…」


これまで「野暮とは話さない。それでも話したいなら通訳を付けろ」という粋として、極めて硬派な姿勢を崩さなかった係長がこんなに普通に「親父」として話したのを俺は初めて聞いた。


「今週どっちにしろ俺日曜に休日勤務だからさ。100ハイト預けとくから改造部品も含めて買っといてくれないか。釣りが出たらお前にやるからさ」
「了。ただお釣りは返しますよ」

「お前…俺が普通の父親だって今頭の中で考えただろ。笑ったか?」
「私に限ってありません。でも係長にそんな小さなお子さんがいるなんて初めて聞きましたよ」
「阿呆!ウチの倅はもう20歳だ!いつまでも子供っぽさが抜けなくて困ってるんだ」


俺は内心安心した。係長がただ虚勢を張るため「粋」「いなせ」のそれらしい「ノリ」を周囲に垂れ流しているのではなくちゃんと上司として、家庭人として確固とした価値観があり公私ともそれに基づいて部下の俺に命令を下しているんだと再確認できたからだ。この人に服従すればジオンが勝っても敗けてもちゃんと生き残れる。と俺は確信した。


「全く!何て無駄話させやがるんだよ。シモムラは当日歌手のMINの衣装早替わりの要員だったろ。ウチは女いないから坊主の法要の仕事思い出しながらイメトレとシミュレーションやっとけよ」
「了」


「へーーっくしゅん!!」
「どうしたヒノモト。風邪か」
「いえ中隊長。ただ、誰かに噂されているのだと…」


「シモムラ上等兵、舞妓さんの彼女出来たって聞きましたよ。今度会わせてもらえません?」
「テメー馬鹿か!?彼女じゃなくて患者だ!つーかフリークスS■Xって今頭の中で笑っただろ」


こいつ顔とスタイルは滅法良いがひたすら馬鹿女だな。だったらいっそ命じられた日曜のお買い物は探すのも含めてこいつをパシリにして全部やらせるか。


「ヒノモト上等兵!直々にある作業を命じるとするかな!今週の日曜ある特定の物品をォ…」
「はい!」
「…やっぱ、止めとくわ。 ってゆーか女に言ってもわかんない案件だろうから無駄だ」


女にチビ四駆がどうのこうの言ってもわかんないだろうし何より命じられた仕事をさぼるのは俺の美学じゃない。直接探して確保しなきゃな。

日曜、偉い難儀した!生き残ってるおもちゃ屋や駄菓子屋を最初十何軒か回っても絶版されてから長くことごとく品切れ。最終的に駄菓子商組合の情報網だか何かで最終ロットの在庫が残っている店が見つかりオバサンの生存を確認の上そこでの購入に成功した。


「古い品物だから動作確認はこの場でしてから買ってくんな」
「ああ承知。それにしても懐かしいな」


幼き日の記憶通り、頭の中で考えたまま面白いほどよく走った。


「お兄さん素質あるわぁ。実はニュータイプなんじゃない?」
「おだてるなよォ。 良し…と、品質検査完了。改造部品込みで120ハイトだったね」

「毎度あり!」


週明け、ショップで無事「収穫」を目にした係長の喜びようは格別でもう普通じゃなかった。


「呑まないか。明日は歩哨も体力測定も入ってないだろ」
「喜んで!」


確か独立戦争の期間を通じて係長と呑んだのはこれ一回だけだったと思う。親子ほども歳の離れた上司と呑むのってのは特に人徳ある上司相手だとどちらかと言うと親父に旨い物喰わせてもらうみたいな感覚だ。


「100ハイトじゃ絶対アシ出たろ。今夜は俺がおごるよ」
「いえ、先月倹約したから自分で払えます。 …モリ中尉。原子爆弾一杯お願いします」

「あいよ!」

「いつも観察してるとお前って酒は原子爆弾ばっかだな。第一不味いだろ」
「不味いから、それこそが行です」

「よく言うぜ!」


「原子爆弾」とは概ね大陸風の呑み方でビール6に焼酎もしくはウイスキー4で作ったクソ不味いカクテルの総称だ。俺としてはルウムで獲得した「坊主のバーベキュー」の通り名を忘れない目的で、たとえ翌朝盛大に二日酔いしても酒はこれ一本槍だった。


「倅は…実は志願兵も徴兵もどれも受かってなかったんだ」
「?」

「本来なら倅は兵役不適格のまんまシャバでくすぶってる筈だったんだ。それを俺が兵務庁に手を回して本人に絶対判らない形で志願兵合格で入営の扱いにさせて以後倅の給料は国じゃなくて俺が支払ってるんだ。知らぬは本人ばかり也で親が金出して戦争ごっこさせてるんだ。みっともねーよなー」
「きっと悪い冗談だと思いますが、それでも兵役逃れするよりずっと立派な行動じゃあないですか」


俺は庶務係として、毎月中隊各員の俸給や納税について嫌でも知る立場にあった。
その際それぞれの俸給明細に目を通していくと係長の納税額が将官級のVIP並にいつもべらぼうに高く異常なほど「高額納税者」なので一体何かと常に疑問だった。

「倅の給料は俺が支払ってる。戦争ごっこさせてるんだ」

という言葉で、全部繋がった。


「俺は、倅の欲しがる物は何でも与えたさね。自転車でも専用の勉強部屋でもエレカでも何でもだ。だが…兵隊の採用通知だけは引っ張って来れなかった。ヘボい親父だ。帰って笑えよ」
「私は…現時点で非常に悪酔いして今お聞きした事を1時間後まで覚えていられないと考えます」

「ああ、そうしてくれると本当有難い。軍機だからな」


                                     報告書8  『親父と、チビ四駆』 完



次回予告

人は土を手にし、水を手にし、最後に太陽を手にしそれを自在に御せると自らの力を誇った。人が大地に立って初めからあるおてんと様ではなく人が創ったその太陽はしかし、時として人が御せなくなり牙をむく祟り神だった。それを知った時、人は恐怖し溜まったツケを払う事になった。


次回『太陽の塔(前編)』

不良債権のなすり付けは、やめよう。


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ジオン第八連隊記  報告書7 『生かせ、いのち』

2011年12月18日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記 復興(あす)への彷徨


報告書7 『生かせ、いのち』



「だからぁ〜〜、民間人達相手に法話する時だけは上等兵じゃなくて将校になってくれって言ってるだろぉ〜〜〜。なッ、俺の大尉のマント貸してやるからよォ〜〜」
「中隊長。私は現実に上等兵です。軍法に反して進級はできません。第一壇上で威厳ある将校だったのが後になって街で見かけたらただの列兵だったのでは詐欺だと怒られますよ」

「全く…あの馬鹿め抗命罪だぞ。先任、どうにかできんもんかな」
「中隊長。奴の勝手にさせておいて構いませんよ。あいつルウムでバーベキューにされて進級も一切禁止されたのを今でも根に持って当て付けでやってるんですよ。いずれフォーマルな処罰喰らわせてやれば良いんですし」


中隊長と係長のそんなコレ聞こえよがしな嫌味を背にしながら俺は法話の会場へと急いだ。
日にちは少々前後するが俺は民生協力の一環として災害派遣の作業とは別に被災者向けに何度か法話の実施を命じられこの時も敢えて仕事としてはなく私的に代休扱いにして(やっぱり係長の言う通り『当て付け』だわな)それに行った。
都バスを数系統乗り継ぎ会場の体育館まで行く訳だが復興、再生の進んでいく街を車窓から眺めるだけでも心が休まる。  ん、この時は乗車してすぐだった。


「兵隊さん、どうかお座りになって下さい。ウチも主人が軍人だった頃戦傷で下半身不随になってそれから食事や手洗の世話が大変でとても苦労して、主人はもう亡くなりましたが今でも…」
「お姉さん。私は傷痍軍人ではなく健常者です。なのでお姉さんからお席を譲ってもらう訳にはいきません」

「おや、これはとんだ失礼を!」


実はビルマ戦線からヤープトに移動してきてからこういった事が何度かあった。お年寄りから電車やバスの座席を譲られるのだ。しかも口を揃えて傷痍軍人の俺をいたわりたいと有難い言葉をかけてくれる。その度に自分は健常者だからと説明するのだが、もしかして俺は嘘をついているんだろうか。そんなハズは無いよな…。

今回俺の法話を聴きにきてくれるのは遺伝性や先天性でなく、震災で重度の後遺症、障害を負う事となった「新規」の身体障害者の人たち。法話やる僧侶の人選は連隊や都も考えてるんだろうがそれでも気が重くなる仕事だ。

そんなこんなで会場体育館舞台の演壇に登壇し法話の始まり始まりである。


「私は只の身障だからあまり偉そうな事は云えないんですけどね」
「お師匠さん。ここにいるのは全員シンショーだぜ!」


相手の懐深くまで入り込んでガッチリ民心を掴むのと空気を読めず軽口叩いて離反させるのとは正しく紙一重の差だ。俺の法話ごっこ?は将官だの佐官だのVIPの演説とかじゃないから責任なんぞ知るか!でまだ自由が利くがそれでも神経を使う。俺はちゃんと考えているぞ。

暖房の無い体育館だから自己満足で意味も無く長々と打つのは禁物だ。特に冷えて近くなる便所の都合を考えれば切りの良い所で終わりにする。


「和尚さん。本当にいいお話だったよ。来てよかった」


帰路、さっきの観衆の一人から声を掛けられてみれば何とも妖艶な美しさを見せる女。障害を負った家族がいてその介助に付き添って来たのだろうか。  …と、よく見たら片足が無い。「ご新規さん」だ。


「私…さ、舞妓になる為に何年も頑張って修行してたんだ。でも地震で死ねもせずにこうなっちゃって何も残んなくなっちゃった。早く死ねないかなぁ、ってね」
「……」

「ジオン軍で重度の負傷した兵隊さんが尊厳死する場合とか楽に死ねる特別の薬とか無いかなー。あったら私の内臓とか皮膚とか使える部品みんな提供するからそれと引き換えで欲しいよ。駄目なら穴に生き埋めか断食自殺か即身仏でもいいからそのお作法伝授してもらいたいな。この先残りの人生生きてて…ぶぉぇ!」
「このクソ女!!そんなに死にたきゃ俺が今この場で殺してやる!でもゼッテー楽に死なせるか!思いっきり苦しめて息の根止めてブチ殺してやる!!」

「あがっぐびばぼべぼごえーっっ、だべかどべろーー!!」


「和尚、気持ちは解るが止めるんだ!彼女がそう考えても仕方無いんだ!」
「止めるな畜生メ糞ぉーー!!」


俺は地球に降りてこのかた、ビルマ戦線で連邦兵を白兵戦で絞め殺した時以来の憎悪と渾身の力を込めて自殺願望旺盛なバカ女をブチ殺しにかかったが周囲に止められた。


「ぐえっ、ぐぼっ、げげげえ〜〜っ。畜生ォー!南極条約違反で告発してやるーー!!」
「ああ、告発でも復讐でも何でもしてくれりゃいい。ただしコレを見てからだ」


俺は女の前で上衣の袖とズボンの裾を捲り上げてルウムで「坊主のバーベキュー」になった時のクソほどの値打ちも無い勲章、重度の醜いケロイドの火傷跡を披露してやった。


「…うえっ、ぶええっ!ぶうおえええぇえ〜〜〜〜!ぅぅうおええぇ〜〜〜!」
「何も、見るなり吐く事ぁねーだろ」

「解ったよ…自殺とか以前に私より苦労していても生きてるのもいるって意味だろ」
「何も解っちゃいねーな。手が何だ。足がどうした。目が何だってんだ。義手義足白杖で代用が効く!ダメになった人生の代用品は無えんだ。 そうだオメー、病院の患者データは持ってるか?」

「あ、ああ。ケンジョーだった頃かかってた病院の都共通の奴が確かあるよ」
「上出来だ。ウチの衛生科から医師会に連絡して身体歴取り寄せりゃ俺の造ったぴったりの義足が出来るぜ。歩兵やるのは無理だが舞妓の仕事くらいなら余裕でやれるいいのを造ってやる」

「本当かい!?坊主と役人お得意の放便と不渡り手形じゃなくて!?」
「本当だとも。ジオン脅威のメカニズムでな。現にズムシティの首都防空大隊には義手や義足のMSパイロットだっているんだぞ」


仕事が増えた。成り行きで自殺を思いとどまらせたバカ女の義足を自作するために翌日以降俺は衛生科や都医師会と調整に当たり平日の課業終了後と休日は航空軍のカ・ンサイ基地の修理中隊と車器中隊に通い詰めて工作機械相手に本職の義肢装具士よろしく製作作業に精を出した。


「最近よく来ていつも帰隊時刻ギリギリまで粘ってるあの地上兵は一体何者だ」
「何か精密な奴を造ってるみたいですが、どうも縁起の良くない品物ですよ。何でも義足だとか」

「そうか…作業中はゴーグルと安全手袋はさせろよ」



                                      報告書7  『生かせ、いのち』 完



次回予告

粋と野暮の間には通訳が要る。いつもそれを感じるさ。言葉なんては重ねれば重ねるほど嘘っぽくなるもんだがやっぱ会話でコミュニケーションは取れるようにしたいよ。しかし容赦の無い厳しい「粋」「いなせ」はそれも敢然と拒否する。俺はなれそうもないが、こんな親父がほしかった。


次回 報告書8 『親父と、チビ四駆』

本当の優しさとは、厳しさがあって初めて生まれる。


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ジオン第八連隊記  報告書6 『棺』

2011年12月04日 19時30分00秒 | Weblog
機動戦士ガンダム0079 ジオン第八連隊記 復興(あす)への咆哮


報告書6 『棺』



「…ん。この荷物は、と。20バンチ オニガシマ・コロニー宛か。ってヒノモトのだ。あいつ本当に家族想いだな。」
「シモムラとは大違いだ!見習え!!」


俺にとって毎日係長に怒鳴られ叱られるのは仕事の一部だ。震災発生から半月以上が過ぎ部隊にも普段のペースが大体戻ってきた。俺はあれから非番の日に連隊や自治会のお膳立てで地元の学校、仮設住宅で法話をやったり坊主らしい事も多少した。とは言ってもジオン軍で「宗務科」ってマスコミ用語で言う従軍僧侶や従軍牧師に相当する兵科は俺が徴兵、入営する1期前だかに廃止されてしまった訳だが。ただ

「シンショーのごっこ遊びだ」

なんて陰口叩いてた奴は兵隊でも民間人でも一人もいなかったと思う。不幸だの危機だのに直面するとニンゲン何だかんだ言って信心深く?なるもんだ。


「しっ、放送だ」
「……2中、4中、7中内名ナンバー小隊総員、及び中隊本部の手空き要員に告ぐ。 第三種戦闘軍服に手袋とヘルメット着用で舎前に集合。ヘルメットはプラヘルでなくテッパチ。将校は上衣にマント着用。 繰り返す…」


「シモムラ、行ってこい」
「了」


地上用野戦服じゃなくて三種?ここ最近三種なんて殆ど礼服みたいなもんだ。一体何の仕事だ。


「おいこらっシモムラ!テメーは三種じゃなくて衣だ馬鹿野郎ォ似非坊主!あ〜〜もういい、内務班から衣だけ持ってきて後から現地で着替えやがれッ」
「ふぇ?」


7中隊長の「下品キューピー」ことササキ大尉は三種でマントを翻してもやはりサイコーに口が悪い。しかしこの慌しさなんだが凄い偉い人でも来るのか?
シワス。師走…中世ヤープト語で師即ち僧も走るほど忙しいのが語源というがそのまんまだな。

「乗車、乗車ァ!」

何ともせわしなく前後を憲兵パトカーに固められた官用車に乗って着いた先は再開発に失敗した学園都市ニューヒガシイマサ・トの運動場にされる筈だった空き地。 気持ち良くなる広さだ。
その片隅に歩兵に厳重に守られた沢山の大きな箱が並んでいる。



棺だ。

並んでいる箱は上面蓋にジオンの国章が印刷された棺だった。


「…本来は、ウチ等の為に用意された奴だったんだ」


中隊長の言葉はいつに無く重かった。絶対必要なんだが、辛い仕事だ。
震災発生から半月以上経過し被災した火葬施設も多くが復旧のままならない中で都下、近県から氷やドライアイスをどうにか調達して遺体を保管する努力も限界に達し、結論生態認証を行っている銀行やカルテの残っている歯科医師会等の協力を得て本人が確認できた遺体は特例措置で仮埋葬が実施される事となった。

重い棺を各4人で担ぎ埋葬の穴まで運び見渡す限り棺が並べられていく。


「全ての英霊に対し、敬礼!」


中隊長の発する号令に合わせて棺に向かい兵士たちが一斉に敬礼する。
棺に納められた犠牲者は民間人の他任務中に巻き込まれたジオンの軍人軍属、それ以外に捕虜収容所や拘置所で死亡した連邦兵も混じっていた。


「……於一切、我等与衆生、皆共成仏道」


俺は僧として、ケロイドの顔とこれだけは小奇麗な衣で合掌読経する以外の事は何もできない。
その時だった。怒りの表情で顔を真っ赤にした少年が穴から連邦兵の棺を引きずり出しバールで蓋をこじ開け遺体をこれでもかこれでもかとぶん殴り始めた。


「やめろボウズ!いくら敵だからって仏さんだぞ!」
「坊主が俺をボウズって呼ぶなァ!!去年俺ん家のおばあちゃんは飲酒運転の連邦兵の自転車に撥ねられて死んだんだ!!なのにこいつらァア…!畜生ォ!!」


俺は怒り心頭な少年の腕を捻り上げ、まあ…こう言った。


「オメーのおばあちゃんを飲酒運転の自転車で撥ねて殺したクソ連邦兵が地震の巻き添えでくたばった?そいつは良かったじゃねーか。おめでとさん! だけど死んだらみんな仏様なんだからもう悪口言ったりいじめたりしちゃ駄目だぞ」


ひ弱で御人好しでひたすら喧嘩に向かないヤープトの民族性に感謝する他無い。怒りで顔を真っ赤にしていたおばあちゃんっ子の少年は俺のいかにもソレらしい出鱈目に納得し連邦兵の遺体を更に損壊する行為を止めた。


「ごめんなさい…上から土を被せて埋葬するの、俺もやります」
「円匙でおばあちゃんの仇の遺体の顔切り裂くとかされたらたまらん。駄目だ」


「よくあの修羅場を収めてくれた。さすがは腐っても僧侶だな。んッ…礼を言う。しかしな…さっきお前が言った『死んだらみんな仏様なんだからもう悪口言ったら駄目だぞ』ってやっぱ仏典に書かれてる教訓とかなのか?」
「まさかぁ! あの仇討ちのボウズにはわからなかったけど旧世紀の中世ヤープトでエ口小説家から尼僧に転職したババアが法話だとか抜かしてほざいたたわ言のパロディです」


「んなろぉテメェ…。さっき礼を言ったのは完全ナシだ。帰隊したら泣くまでボコる。あと今週『テメーだけ』夕食抜きだ。返事ィィ!!」
「はい!!」


内務班なり中隊単位なりで「連帯責任だな」と言わずにわざわざ「テメーだけ」(←こいつが重要だよ♪)と明言したのは中隊長が立場的に行政上の難しいナニとかはともかくこの時の俺の機転に本気で感謝していたからだと思う。実際俺は仏典からの引用だとかテキトーな「放便」は用いず


「ババアのたわ言のパロディ」


と正直に話したからな♪ いい仕事をした後は自分自身も本当に気持ちいいもんだ。 


                                           報告書6 『棺』 完



次回予告

人って嫌な生き物だ。「おめでとう」よりも「ざまあ見ろ」の方が遥かに興奮してしかも爽快だろ?平時でも戦時でもな。俺もそうさね。ムカつく敵が何十人単位だかで吹っ飛んだり黒焦げになったりしてそれでも不運な奴がまだ死ねずに散々苦しんでるトコ見たら最高に酒と飯が旨いわな!
でもな、馬鹿な俺でも敵と味方の、懲らしめてやる奴と守るべき愛する者の区別くらいはつく。愛する者の身に起きた不幸に「お気の毒」と感じたりお悔やみを言う位の知能はあるんだ。そこん所ヨロシク!!


次回 報告書7 『生かせ、いのち』

俺が言うと、偽善だ。


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