ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

不意に鎌倉・湘南・江ノ島

2008-01-27 22:19:06 | 
江ノ島か・・・。テレビで江ノ電、七里ヶ浜、茅ヶ崎あたりの特集。
20年前のこの辺の景色となんら変わらぬまま、今も若者の人気スポットになっている。

20年前、鎌倉にC子と旅行したことがあった。夏の真っ盛り。鶴岡八幡宮に向かう通りの木々のセミの鳴き声が、今も耳に残る。
江ノ島でお参りをして、鎌倉の大仏を見て、2人して江ノ電の窓越しに海をずーっと眺めていた。
数ヶ月に一度しか会えない中で、平穏で何にもとらわれない「非日常」のひと時だった。いつかこんな平穏な生活が僕らに訪れないものか。当時の僕の置かれていた環境からすると、おおよそありえない夢のまた夢のような時間だった。

何の準備もせずに来たものだから、海水パンツもない。僕は、こんな夏の海を前にして泳がない手はないと思った。C子と茅ヶ崎の砂浜に下りて、シャツとズボンを彼女にあずけ、トランクスのまま海に飛び込んだ。脱げそうになりながら思いっきり泳いだ。
それを、浜辺にしゃがみC子は微笑みながら見ている。であれば僕は、なおさら強がって一生懸命泳いだ。そして程よく疲れ、浜辺へ戻る。

「パンツ丸見えだぞ」

その時のC子の服装は、胸元からひざにかけてボタンで留めるつくりの、薄絹でできた涼しそうなワンピースで、海のほうを向いてしゃがんで座っていたため、本当に丸見えだった。
あまり人気もない場所だったし、油断していたようだ。
C子はプーッと真っ赤な顔をしてほっぺを膨らませた。

「なによ。エッチだね・・・」

ハンカチを借りて顔をぬぐい体を拭いた。乾くまで僕らは一緒に砂浜に座って、しばらく遠くの海を見つめた。二人とも妙に黙りこくってただひたすらに海を見つめた。

鶴岡八幡宮への行きすがら、ジージー泣くセミを捕まえては道行く子供にあげた。
セミを取るのは昔とった杵柄で大得意、C子はしきりと感心していた。
通り沿いのお店は、どこも興味深いみやげ物があって、観光客で賑っている。
何か買ってあげたかったが、何しろお金もギリギリしかなく、断念せざるを得なかった。だから、僕が出来ることといったら、せいぜい彼女の前でおどけたり強がって見せたりすることで精一杯だった。

さて、今日は、どこに泊まろうか。何の計画もなく来た旅である。電話帳で調べて素泊まりの旅館を探した。今では、そこがどこだったかすっかり記憶のかなた。
突然の来客にも関わらず、そこの仲居さんは優しく僕らを迎えてくれた。

「ご夫婦でご旅行ですか」「お風呂はお二人で入れるようにしてありますからいつでもおっしゃってください」

とてもこそばゆかった。二人で顔を見合わせ、ばつの悪い思いをした。
二十代の二人は、本当に若夫婦に見えたであろうか。相当、貧乏な夫婦の旅行に見えたんだろうか。それでも仲居さんは、そんな僕らにとてもよくしてくれた。

東京の上野あたりの安旅館で一泊。丁度、東京の下町の盆踊りを見た。横浜の山下公園の前のホテルに一泊。横浜はそれ以来一杯思い出が詰まっている。そして鎌倉で一泊。3泊4日の短くも儚い旅であった。

江ノ島の風景を見て、こんなことを思い出してしまった。

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