どんぴ帳

チョモランマな内容

はくりんちゅ329

2008-11-09 23:54:45 | 剥離人
 二週間ぶりに作業用コンテナのシャッターを開け、必要な機材を外に放り出す。

「じゃ、正木さんと正男ちゃんは、屋内の二基のタンクね、で、ハルさんとヨッシーは、この一番大きなタンク、そう言う事でお願いします」
 それぞれのチームに作業を割り振ると、まずはハルと堂本が担当する、屋外の一番大きなタンクのマンホールを開けて、中に入って見る。
「おお!おおお!おおおおぅ!」
 私は思わず中に入って驚嘆の声を上げた。
「なんじゃこりゃ…」
 薄暗いタンクの中には、あり得ない本数の単管パイプが立てられている。
「おおっ、凄いじゃんこの縦地(縦方向の単管パイプ)の数!」
「うひゃひゃひゃ、何なのこれは、木田さん!」
 正木とハルが、あまりの凄さに爆笑している。
「うわぁあああ…」
「何か凄い…ですね」
 須藤と堂本も、繁々と足場を眺めている。
「しかも木田さん、まぁーたこんな場所に足場板が入っちゃってるらしいよ」
 ハルは、床から50cmほどの高さで壁面に沿って円周上に設置された足場板を、右足でガンガン蹴っている。
「外す、訳には行かないか…。外すなら底板を決めて(完全に終わらせて)、一段目の壁面をやっつけてからですね」
「そうだよねぇ」
「このままで底板のコーナー部は撃てますかね?」
 私はハルに訊いてみる。
「出来るとは思うけど、イイよ、やり難かったら引っ剥がしちゃうから」
「じゃ、それで行きますか」
 私はそう言いながら、二段目の足場をぐるりと眺める。
「二段目はまあ、問題無しと、あれ?梯子はって…、あれかぁ?」
 探して見ると、マンホール右手の壁面に、昇降梯子らしき物が見えている。
「これ、単管パイプじゃんよ…」
 私は見るなり閉口した。我々の作業は、水を使うウォータージェット工事なので、滑ることに関してはかなり神経質だ。特に単管パイプは太さが太く、濡れると滑り易いので、これを昇降梯子にすることはあまり歓迎出来ないのだ。
「しかもなんだ、上の開口は三角形かよ…」
 三段目の全面足場に見える開口が、三角形に見える。
「何だかねぇ、どうしてこういう足場になっちゃうんだか…」
 ハルはブツブツと言いながら、単管パイプをよじ登って行く。
「うひゃひゃひゃ、木田さん、この開口、狭いよぉ!っちゃあ、何なのよ、この単管はぁ!」
 ハルの大柄な体では、三角形の開口部は出入が苦しいみたいだ。
「とても事故の反省を基に作った足場とは思えないなぁ」
 私もブツブツと言いながら、単管パイプを登る。気休めの様なセルフロック(動きに応じてワイヤーを出したり巻き上げたりする装置)が昇降梯子の最上部に装着されているのだが、今一つこの機械、信用出来ない。
 それは、機械自体の信用というよりも、セルフロックや安全帯が役に立った時、命は助かるかも知れないが、腰に相当なダメージを受ける可能性があるからだ。

 三段目のステージに上がると、そこは全面足場になっていて、一瞬、特に問題は無さそうに見えた。
「木田さん、ここはどうすんの?」
 ハルがタンクの中心部を指差す。そこは、底板から太い金属のパイプが通っていて、周囲の天井よりも30cmほど窪んだ状態になっていた。
「届かないかもしれませんね…、ここに一段ステップを組んでもらいましょうか?」
 ハルは首を小さく左右に振る。
「いいよ、とりあえず俺がやってみるからさ、駄目なら何か台になるものを用意してよ」
「すみませんねぇ」
 私はハルに答えると、再びタンクの外に出た。

 タンクの外では、TG工業の田中が何やら言いた気に、私を待っていた。



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2 コメント

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獅子身中の虫 (カミヤミ)
2008-11-10 20:07:03
スタジオに行く姿を一年に見られただけで、あの先輩達は、付き合ってる。とかあの事件は、木田くんが起こしたに違いない。ありもしない話を否定するのは、疲れますね。
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地下鉄サ○ン事件 (どんぴ)
2008-11-10 20:37:56
 思い出すなぁ、あの事件。
 心配して会社に電話をした、あの日の僕…。
「木田君が事件を起こしたのかと思った」
 そう言われた時には、それまでの人生で最も凹みました。もうベコンベコンに。
 その後、警視庁からの事情聴取を受け、身柄を拘束され、
「拘置所は寒い…」
 と弁護士に語り…。

 あれ?途中から『○室○也』の芸能ニュース記事に変わってしまった(笑)
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