はくりんちゅ204

　私は所長の鴻野から、
「処理水をもう一度使えないのか？」
　という難問を突き付けられていた。

「出来なくは無いですけど、その処理水を使うことでポンプにどんな影響が出るのかは分かりません」
　私は正直に鴻野に話した。
「処理水を再利用すれば、理論上は毎日水を供給する必要は無くなるんだろう？それに産廃の量も激減するんじゃないの？」
「ええ、それはおっしゃる通りです」
「じゃあ、一度検討をしてみてよ」
「…分かりました」
　鴻野の言うことは筋が通っており、反論できない私はもう一つ問題を抱えることになった。

「あ、それから…」
　鴻野がまた口を開いた。
「民家が側にあるから、くれぐれも騒音問題には注意してね。その機械、音は凄いの？」
　私と渡、そして大澤の顔に、困惑の表情と、諦めの笑みが浮かぶ。
「ええ、若干、若干ですが音が出ますね」
「まあ、多少出ますわ」
　大澤は黙って頷いている。
「出るってどの位？」
　鴻野が禁断の言葉を繰り出した。
「えーっと…」
　メーカーとしての変な責任感か、大澤が言いあぐねている。
「大体100dB（デシベル）です」
　私は開き直って答えた。
「100dB？それってかなり大きいだろう」
「ええ、電車の鉄橋の真下程度…ですかね」
　これも私は正直に答えた。
「どうにかなるの？でなきゃ工事なんて出来ないよ」
　鴻野の言うことは、またも正論だ。騒音が酷ければ、周囲の民家から苦情が来て、工事どころでは無くなる。
「ま、カバーかなんかを考えますわ」
　いきなり渡が口を挟んだ。
「そうですか、分かりました。じゃあ木田さん、だったかな？まずは今出た課題をクリア出来るのかどうかと、見積りを出してもらおうかな？」
「分かりました」

　私は、一体いくつの課題と問題点があるのか、すっかり分からなくなっていた。