初日、五人で入場したR社ウォータージェットチームは、今日で総勢三人になってしまっていた。
三人と言っても、ガンの撃ち手は二人しかいない。これは緊急事態だ。しかも私にとってハルは、小磯の舎弟という印象だったので、いつ目の前から居なくなっても不思議では無い。現にさっき、ハルは携帯電話で小磯と話しているはずだった。
私は半分諦めの気持ちで、二人に声を掛けた。
「今日は僕もガンを撃ちますからね」
ハルは特に返事をするでも無く、作業用コンテナに入ると、小磯のエアラインマスクを脇に抱えて出て来た。
「ハイ、これは今日はお休みね!」
そう言うとハルは、小磯のマスクをメッシュカゴの上に置き、ポンポンと叩いた。
「ほら、ノリ子!今日は二人しか居ないんだから、しっかり働けよ!」
「任せて下さいよ!」
ノリオは無邪気に笑いながら答える。
一瞬は完全に諦めたハルの存在だったが、どうやら小磯の進退とは関係なく、仕事を続けてくれるらしかった。
ここで私は、ふと考えた。
通常のガン撃ちローテーションなら、二時間撃って一時間休憩となり、三人で二本のガンを回す事になる。そうするのが常識的なセオリーだ。
しかし私は、今日はそうしてはいけない気がした。私は自分の直感を信じる事にした。
「ハルさん、ノリちゃん、今日のローテーションは、まずは二人で二時間撃って下さい。その後、二人で一時間休憩を取って下さい。このローテで行きますね」
「ん?じゃあ休憩している間はどうするの?」
「僕が一時間、一人でガンを撃ちますよ」
「大丈夫なの?木田さん」
ハルは少し笑っている。
「いくらなんでも、一時間くらいは平気ですよ」
「木田さんがイイなら、俺は構わないよ」
ハルは、なんとなく嬉しそうだ。
私は、ハルとノリオが一緒に休憩を取る事を、重要視していた。
小磯が戦線を離脱、いや、私が強制的に離脱させた為に、ハルの士気はかなり落ちている筈だった。ここでガン撃ちを通常の三人ローテーションで回すと、ハルは休憩時間に独りきりになってしまう。今、この場に必要なのは、ハルに孤独感を感じさせない事だった。
幸いにも、ハルとノリオは非常に仲が良い。休憩を同時に取らせれば、それだけでも気が紛れるだろうと言うのが、私の考えだった。
そして私の考えを知ってか知らずか、ハルはノリオと楽しそうに休憩に向かって行った。
フライトデッキには、私と唸り声を上げているハスキーだけが取り残されている。言い様も無い孤独感を感じるが、ここは監督としての踏ん張り所だった。
私は久しぶりにエアラインマスクを装着すると、キャットウォーク(猫走り:甲板の脇に設置されている、移動用の非常に狭い通路)の中に入り、ガンを構えた。
「キゅィイいいン、バシュぅウウウうう!」
5ジェットノズルから超高圧水が噴き出し、肩にガンの反動がぐっと加わる。
「おお!やっぱ凄いわ、この反動!」
圧縮空気が脳天から吹き出すエアラインマスクの中で、私は大声で独り言を叫んだ。
気付くと、さっきまで小降りだった雨足が、一気に強まって来ていた。
三人と言っても、ガンの撃ち手は二人しかいない。これは緊急事態だ。しかも私にとってハルは、小磯の舎弟という印象だったので、いつ目の前から居なくなっても不思議では無い。現にさっき、ハルは携帯電話で小磯と話しているはずだった。
私は半分諦めの気持ちで、二人に声を掛けた。
「今日は僕もガンを撃ちますからね」
ハルは特に返事をするでも無く、作業用コンテナに入ると、小磯のエアラインマスクを脇に抱えて出て来た。
「ハイ、これは今日はお休みね!」
そう言うとハルは、小磯のマスクをメッシュカゴの上に置き、ポンポンと叩いた。
「ほら、ノリ子!今日は二人しか居ないんだから、しっかり働けよ!」
「任せて下さいよ!」
ノリオは無邪気に笑いながら答える。
一瞬は完全に諦めたハルの存在だったが、どうやら小磯の進退とは関係なく、仕事を続けてくれるらしかった。
ここで私は、ふと考えた。
通常のガン撃ちローテーションなら、二時間撃って一時間休憩となり、三人で二本のガンを回す事になる。そうするのが常識的なセオリーだ。
しかし私は、今日はそうしてはいけない気がした。私は自分の直感を信じる事にした。
「ハルさん、ノリちゃん、今日のローテーションは、まずは二人で二時間撃って下さい。その後、二人で一時間休憩を取って下さい。このローテで行きますね」
「ん?じゃあ休憩している間はどうするの?」
「僕が一時間、一人でガンを撃ちますよ」
「大丈夫なの?木田さん」
ハルは少し笑っている。
「いくらなんでも、一時間くらいは平気ですよ」
「木田さんがイイなら、俺は構わないよ」
ハルは、なんとなく嬉しそうだ。
私は、ハルとノリオが一緒に休憩を取る事を、重要視していた。
小磯が戦線を離脱、いや、私が強制的に離脱させた為に、ハルの士気はかなり落ちている筈だった。ここでガン撃ちを通常の三人ローテーションで回すと、ハルは休憩時間に独りきりになってしまう。今、この場に必要なのは、ハルに孤独感を感じさせない事だった。
幸いにも、ハルとノリオは非常に仲が良い。休憩を同時に取らせれば、それだけでも気が紛れるだろうと言うのが、私の考えだった。
そして私の考えを知ってか知らずか、ハルはノリオと楽しそうに休憩に向かって行った。
フライトデッキには、私と唸り声を上げているハスキーだけが取り残されている。言い様も無い孤独感を感じるが、ここは監督としての踏ん張り所だった。
私は久しぶりにエアラインマスクを装着すると、キャットウォーク(猫走り:甲板の脇に設置されている、移動用の非常に狭い通路)の中に入り、ガンを構えた。
「キゅィイいいン、バシュぅウウウうう!」
5ジェットノズルから超高圧水が噴き出し、肩にガンの反動がぐっと加わる。
「おお!やっぱ凄いわ、この反動!」
圧縮空気が脳天から吹き出すエアラインマスクの中で、私は大声で独り言を叫んだ。
気付くと、さっきまで小降りだった雨足が、一気に強まって来ていた。
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