弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

デリバティブ,仕組み債バブル

2012年01月30日 | ⑤法律問題について
去年の頭の報道から,弁護士業界,隣接士業の間では,デリバティブバブルがおこっているようです。

平成18年(2006年)のリーマンショックの前後に,銀行・証券会社は,法人・富裕層などの顧客に,デリバティブ(為替デリバティブ,金利スワップ,為替先渡取引などの金融派生商品)と仕組み債(仕組み投資信託,仕組み預金なども含む)の勧誘を少なからずしています。
そして,リーマンショックの影響で,多額の取引損など顧客に損を与えるケースが少なからずあるようです。

(バブルと言ったのは,被害の多くはリーマンショックの影響を受けており,その影響を受けた商品の満期が3~7年,広くは1~10年で,リーマンショックと金融庁や銀行・証券業界の対応から見て,事件にピークに限りがありそうだからであり,かつ,それを見込んでこの業界に新規参入したり,宣伝したりする弁護士や隣接他士業が増えているからです。)

金融庁の影響などで,全銀協やFINMACの金融ADRがある程度実質化しているそうで,証券被害弁護士などデリバティブに詳しい弁護士以外でも,まあまあ悪くない解決ができるかもと言った感じになっているようです。

しかし,デリバティブの仕組みやリスクについて詳しくない弁護士のみが関与すると,本来問題となるはずの論点で,ADRのあっせん委員が気づかない論点や軽視している論点が,無視ないし軽視されるおそれがあります。
最悪訴訟になることを見越して,デリバティブの訴訟対応に少なからず自信がある弁護士が弁護団に入っていないことは,相談者・依頼者の期待可能性を減少させるおそれがあり,被害救済側の弁護士としては,そういう弁護士・弁護団はどうなんかな?と思う点がないことはないです。

(ADRのあっせん委員の方が裁判官よりデリバティブに対する理解はある場合が多いので,悪くない解決がされる場合はないことは少なくないです。しかし,業者側がADRのあっせん案を飲む可能性がどのくらいあるか,統計的に見てなかなか判断が難しく,中にはあまりあっせん案飲まない傾向にある業者があるのではないかと思い,受任時にはADRで終わらず最悪訴訟に発展することも,念頭に置くべきだと思います。)。

ただ,私を含めた証券被害弁護士の一部には,相手が主要銀行だと,今後の主要銀行との付き合い方などに疎く,経営的・総合的にベターなアドバイスができるか自信がない者もいるようです。

そこで,証券会社などを相手にした事件は,我々証券被害弁護士やそれ以外のデリバティブや仕組み商品に詳しい弁護士を入れていると,そういった主要銀行問題などがなく,とりあえず安心なのかなと思います。
相手方が,主要銀行を相手の事件は,特に中小企業の法務や金融政策に詳しい弁護士を入れないと不安ですので,両方できる弁護士か,どちらかをできる弁護士を合計2人以上入れる必要があると思います。

デリバティブ・仕組み商品の事件は,最先端の金融被害の事件なので,証券被害弁護士としても1人だけでやるのは,私の目からすると,少し不安な場合があります。
そういう場合には,デリバティブに詳しい弁護士を,複数入れた方がより安心かなと思います(ここらへんは担当弁護士の判断になりますので,一概には言えませんが・・・)
それでも証券会社・銀行を相手に勝てるかどうかは難しい場合は,金融工学に詳しい専門家も入れてチームを組む必要はあるのかなと思います。

まとめると,商品の仕組みが難解で,被害金額の大きい事件では(被害総額数千万円から数億円の事件),
①主張銀行相手の場合は,主要銀行対策をできる弁護士,デリバティブ等に詳しい弁護士が必要で(両方できれば1人でもOK),さらに,できれば金融工学の専門家の助言を受けられる体制が整うのが望ましい。
②主要銀行以外の銀行,証券会社を相手の事件は,デリバティブに詳しい弁護士が必要で,さらに,金融工学の専門家の助言が受けられる体制が望ましい。
って感じでしょうか。

ところで、
証券被害の分野は,本当は泣き寝入りすべきでないのに,泣き寝入り人が多い気がします。
一概にはいえませんが,歴史的に見ても,訴訟で勝とうと思ってもすぐにはなかなか勝ちにくく,訴訟で勝てるようになるまで,多くの敗訴判決を出しながら,それでも歯を食いしばって,それらを踏み台にし,ようやく裁判所が真実を見つめ,勝訴できるようになるという流れがあるようです。
依頼者も弁護士も,やるにはそれなりの覚悟が必要です。

しかし,デリバティブの分野では,金利スワップの福岡高裁判決,為替オプションの大阪判決(いずれも未確定),その他仕組み商品の勝訴判決があるだけ,まだいい方なのかなと個人的にはまだ戦いやすいと勝手に楽観しています。

とりあえず,悩んでいるなら,相談料なんて被害額に比べるべと,かなりやすいですから,デリバティブに詳しい弁護士に相談だけでもすることをお勧めます。
(相談に行っても,依頼をしない選択は当然あるので,話によっては断るつもりで行けば,出費は最悪相談料のみでとどまります。)

ただ,バブルに乗っているだけの弁護士・専門家とそうでない者の見極めだけにはご注意いただきたいと思います。
僕自身も,一人でやる自信がなかったら,最初からか途中から他の弁護士を入れるつもりです。
とりあえず,私の入っている神戸先物・証券被害研究会*では,複数体制で受ける準備をしています。



出会い系サイト詐欺の受任

2012年01月04日 | ⑤法律問題について
昨年の12月,全国の弁護士で出会い系サイト詐欺(「さくら」を使った,いわゆる「出会えない出会い系サイト」詐欺)の110番が行われ,兵庫県弁護士会でも実施しました。

私も,参加したかったのですが,昨年の12月は例年以上に超多忙で,日程が合わず,110番に参加できませんでした。

しかし,110番の担当弁護士から,私のところに紹介があり,12月に1件受任しました。
内容もなかなか難しい案件だったので,弁護士費用もかかって費用倒れになりはしないかと,受任するかどうか悩んだんですが,本人の強い希望で受任することにしました。

結果はおかげさまでうまくいきました。このようなスピード解決になったのは,意外でした。
クレジットカード決済部分(約100万円)については,決済済みのものも含めて,全部取消処理されることになり(返ってくるのは今年の1月末と2月末の2回),現金決済部分(振込分)についても,半分以上返してもらうことになりました(これは年末に返ってきました。)。

カード決済分については,まだまだ予断は許せませんが,カード会社や決済代行会社がらみで,決済代行会社が直接私に取消処理をすると言っているので,十中八九うまくいくでしょう。

現金部分について減額したのは,これ以上言うと交渉が決裂し,仮差押えや民事訴訟を提起せざるを得なくなりそうだったからです。
これらの裁判手続きをすると,法テラスを通じての委任契約だったので,追加の着手金を頂くことになって,余分に費用と時間がかかるから,依頼者のために実を取ったのです。
本当はこういう業者に対しては,不法な利益が残らないように,徹底的に戦うべきなのでしょうが,依頼者の利益が第一なので,泣く泣く妥協しました。
(法テラスでなくても,示談交渉の着手金を押さえて受任した場合には,仮差押えや民事訴訟をする場合には,追加の着手金を頂きます。でもたぶん被害金額が小さかったのでかなり押さえたものにするんでしょうね・・・)。

個人的には,一度,出会えない出会い系詐欺業者を相手に,仮差押えや民事訴訟などをして,徹底的に戦ってみたいですね。

ちなみに,弁護士に頼むと,弁護士費用(着手金,実費,報酬)がかかって,うまくいかないと,着手金と実費は返ってこないので(報酬はうまくいかないと発生しない),費用倒れになる可能性があります。
費用倒れがこわい方は,最寄りの消費生活センターに相談されるとよいと思います。
センターの良いところは,相談員が弁護士よりたくさんの事案を経験している可能性が高いこと,国民生活センターのパイオネットというシステムで,全国のセンターと情報共有ができていることです(弁護士も,弁護士法23条照会という手段で,時間と少しだけの費用をかければこの情報の一部を入手することができます。)。
訴訟等の裁判手続きはできないのですが,被害金額が小さい方や,未決済のクレジットカード部分が大半を占める方には,いいかもしれません。
また,弁護士への相談も,相談だけで依頼をしない選択肢もあるので,30分5250円なら(事務所によって異なるのでご注意ください。),費用倒れになっても,それほど痛くはないと思います。
なお,うちの事務所の場合は,受任した場合には相談料は頂いておりません。
相談だけで終わった場合にも,一定の資力以下の方の場合には,実質的に相談者から相談料を頂かない場合もありますので,お問い合わせください。

最後に,今回私はうまく解決しましたが,100%いい結果が出せるわけではありませんので,その点はご注意ください(これは他の弁護士,消費生活センター,その他も同じです。逆にそういうことを言う専門家は信用できません。)。
すべての事件でも言えるのですが,どうしても勝訴の見込みというものは不確定要素があります。
たとえば,証拠が足りないとか,微妙な事案で裁判所の判断が分かれる可能性があるとか,勝てても相手方が倒産する等と言った場合です。
その点にご留意ください。


新年のご挨拶2012

2012年01月01日 | ⑫雑談
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年は,日本全国大変な1年でした。

私個人も,消費者保護委員会関係の活動やあぐら等の弁護団活動など,とても多忙な1年でした。
証券関係ではデリバティブや仕組み債などについて大阪の証券研究会に出席し,勉強の1年でした。
過払い事件,先物事件が減り,昨年の事務所の売上自体はパッとしませんでしたが(一応黒字ではありましたが,前年比は下りました。),種まきの1年だったと思います。

今年も,昨年と同じく,種まきの1年だと思っています。
ここで頑張って,弁護士人口増加の荒波の中でも,5年10年生き残れる弁護士になるべく精進したいと思います。
そのためには,腕と心を磨き,多少の利益にならないような良いことも続けることも大事と思っています。

今年は,うちの事務所にはじめて,司法修習生が来るようになります。
人に見本となって物教える立場になるわけですから,今まで以上に身を引き締めて,頑張ってまいりたいと思います。

当事務所の年始の業務開始は1月6日金曜日からです。

今後ともご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

平成24年元旦。