スポーツライター・オオツカヒデキ@laugh&rough

オオツカヒデキは栃木SCを応援しています。
『VS.』寄稿。
『栃木SCマッチデイプログラム』担当。

逆境を味方に。黄金の左足で連覇達成!!

2005-04-29 18:57:31 | その他のスポーツ
体重差は実に30キロ以上もあった。

容易に自らの形を作らせてくれない。

吊り手を取るが、引き手が取れずに苦戦が続く中、篠原信一の練習パートナーを務めてきた村元(135キロ)の圧力に屈する。

鍔(つば)迫り合いの末に、場外へと足が出てしまった。

まさかの反則を冒す。

ポイントを先に奪われた。

しかし、この逆境を鈴木桂治(103キロ)はプラスに捉えた。

「先生が攻めなさいと言っていると思った」。

その言葉通りに、すぐさまポイントを奪い返す。

焦ることなく、王者は冷静だった。

体を倒しながら内股を仕掛け、間髪入れず小内刈りを繰り出した。

村元が崩れ落ちる。

その瞬間、体重差は帳消しになった。

アテネを制した黄金の左が炸裂した。

ポイントをイーブンに戻す。

優勝候補の棟田を判定で、若手のホープ高井を内股すかしで破る快進撃で決勝へ駒を進めてきた。

天皇杯を掲げたいのは、村元も同じ。

ポイントを失ったものの、その後も必死に食い下がる。

勝敗の行方は旗判定に持ち込まれた。

2-1。

僅差だったが、鈴木桂治が連覇を果たした。


嘉納杯で見事な復活劇を演じた代償として怪我を負った、仇敵・井上康生が不在の大会。

モチベーションの低下は否めない。

加えて手術した肘のコンディションも万全ではなかった。

優勢勝ちで緒戦を切り抜けたはいいが、準々決勝では高橋の返し技に冷や汗をかいた。

思わず開始線に戻る際に、「あぶねー」と口にした。

それでも、なんとか準々決勝を通過し、準決勝では得意の内股が飛び出し、尻上がりに調子を上げた。

そして、前回王者として決勝の舞台に上がり、一旦は窮地に追い込まれるも攻める気持ちを忘れなかったことが優勝へと繋がる。

前日の会見の席上で口にした「気持ち」。

技、体が完璧でなくとも心で勝つ。

世界の頂点に上り詰めたことで鈴木桂治は、一回り大きくなった。

心の傷が癒えた井上康生、怪我から回復した鈴木桂治の次なる戦いが俄然、面白くなってきた。

全日本柔道選手権決勝 旗判定 鈴木桂治2-1村元辰寛

最新の画像もっと見る