タイ国経済概況(2024年3月)

1.景気動向
(1)国家経済社会開発委員会(NESDC)が2月19日に発表した速報値によると、2023年通年の経済成長率は前年比+1.9%で2022年の同+2.6%から減速。観光客数の回復がプラス要因だったが、輸出不振が響いた。1人当たりのGDPは7,332米ドルと、前年の7,094米ドルから伸びた。NESDCは2024年について前年比+2.7~+3.7%と予測していたが、今発表で+2.2~3.2%に下方修正した。また、タイ国家統計局によると、2023年第4四半期の失業率は0.8%で、2015年第4四半期以来8年ぶりの低さとなった。これは新型コロナ前の水準(2019年第4四半期は0.98%)よりもさらに低い。15歳以上の労働人口4,067万人のうち最多業種は商業・サービスで、全体の47.3%の1,925万人だった。

(2)エネルギー省の発表によると、2023年のタイの二酸化炭素(CO2)排出量は前年比▲2.4%の2億4,400万トンだった。タイ環境研究所(TEI)のウィジャイ氏はこの結果を受け、工業部門で新技術を導入していることが要因の一つとの見解を示した。そして、重要なことはどの燃料を使うかであり、例えEVが普及しても、その電力が石炭に由来していればCO2は増えると指摘。2023年の燃料別の排出量は石油が1億500万トン(前年比▲1.1%)、石炭が5,900万トン(同▲15%)であり、石炭の使用量が大きく減っていることが読み取れる。同氏はまた、タイは地球温暖化の影響を受けやすい国の上位10位に入るとも指摘。タイ政府は2050年までにカーボンニュートラル、2060年までにネットゼロを目指す。

(3)タイ工業連盟(FTI)が2月22日に発表した1月の自動車生産台数は、前年同月比▲12.5%の14.2万台だった。内訳は国内向けが同▲33.6%の4.7万台、輸出向けが同+3.9%の9.5万台。新型コロナ前の2019年1月の生産台数17.9万台を下回った。また、1月の国内新車販売台数は同▲16.4%の5.5万台で、輸出台数は同▲0.1%の8.7万台。新型コロナ前の2019年1月の販売台数が7.8万台、輸出台数が8.2万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(4)FTIが2月22日に発表した1月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲5.6%の22.5万台で、7ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年1月の生産台数は21.8万台であり、新型コロナ前の水準を上回った。内訳は完成車(CBU)が同▲8.3%の17.8万台で、完全組み立て部品(CKD)が同+6.5%の4.7万台。また、1月の国内販売台数は同▲3.3%の15.4万台、輸出台数は同▲16.4%の3.5万台だった。2019年1月の販売台数が14.9万台、輸出台数が2.6万台であり、ともに新型コロナ前の水準を上回った。


2. 投資動向
(1)タイ投資委員会(BOI)は2月6日、2023年の投資奨励申請件数が前年比+16%の2,307件、投資金が同+43%の8,483.18億バーツに達し、いずれも直近5年で最高値であることを発表した。世界中の大企業が安定した基盤がある投資先を探している昨今、タイ政府の積極的な投資促進政策により投資先としてタイが選ばれた形。投資金額の多い業種順で、電気電子機器が3,421.49億バーツと全体の40%を占めて1位、次いで自動車および部品が822.82億バーツで全体の10%、農業・食品が744.16億バーツで全体の9%と続いている。

(2)タイ国家電気自動車政策委員会(EV委員会)は2月21日、企業が商用として使用する大型トラックやバスを対象に、バッテリー式電気自動車(BEV)に移行した場合、奨励金を付与すること、またEVバッテリーセル製造業者を対象に助成金を付与することを承認した。タイ投資委員会長官のナリット氏は、この措置はいわゆるEV3.0およびEV3.5一連の措置を完了させるものであり、ネットゼロ目標達成を支援できると述べた。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2024年の1月末時点で金融機関預金残高は24兆9,879億バーツ(前年同月比+2.1%)、貸金残高は30兆6,871億バーツ(同+2.6%)といずれも増加。政策金利は2.5%に据え置かれた。


4. 政治動向、その他
(1)2月15日、上院議員選出に関する官報公示がなされた。官報によると、国家平和秩序評議会(NCPO)が任命した250人の上院議員の任期が2024年5月に満了し、同月に選挙が行われる予定。また、2017年憲法の規定により上院議員の定数は現在の250人から200人に削減される。選挙では20の専門分野からそれぞれ10人が選出される。出馬条件は40歳以上で、10年以上専門分野の職業に従事していた人。最初は市町村レベルの選挙を実施し、その後県レベル、全国レベルと候補者が絞られていく仕組み。各段階で、候補者が互いに投票し合う方式だ。最終的には各専門分野ごとに上位10人が選ばれ、合計200人を構成する。

(2)2月26日の観光・スポーツ省の発表によると、2024年1月の訪タイ外国人旅行者は前年同月比+41.5%の303.5万人だった。国別にみると、中国が同+453.7%の50.9万人と最多で、マレーシアの同+11.4%の32.2万人、韓国の同+31.3%の22.3万人と続いた。日本は12位で、同+60.2%の7.4万人だった。また、観光・スポーツ相のスダワン氏は、今年の訪タイインド人旅行者数の目標を200万人に引き上げるようタイ国政府観光庁(TAT)に通知。現在タイ政府はインド国籍保有者に対し、昨年11月10日から今年5月10日までの半年間、一度の滞在につき30日間ビザ免除する観光誘致策を実施している。スダワン氏はまた、インド大手航空会社・旅行会社と面談し、航空便の増加等を要請した。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。


情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.



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