タイ国経済概況(2024年1月)

1.景気動向
(1)国際協力銀行は、第35回目となる「2023年度わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告」を12月14日に発表した。本調査は同年7月から9月にかけて行われ、534社から回答を得た。中期的な有望事業展開先国・地域(今後3年程度)では、タイはインド、ベトナム、中国、米国、インドネシアに次ぐ6位で、昨年より1ランク下がった。「現地マーケットの今後の成長性」や「インフラが整備されている」点が引続き評価されたほか、「第三国輸出拠点」としても有望との評価だった。一方、回答企業の50%近くが課題として「労働コストの上昇」のほか、多くの企業が「他社との厳しい競争」「技術系人材確保が困難」を挙げた。

(2)日本貿易振興機構(JETRO)は12月13日、「海外進出日系企業実態調査(全世界)」の調査結果を発表した。海外拠点ネットワークを活用し、世界83ヵ国・地域の日系企業7,632社より有効回答を得た。2023年に「黒字」を見込む企業は63.4%、「赤字」は18.3%で、「黒字」の割合は前年(64.5%)から1.1ポイント低下した。黒字企業の割合が減少するのは、2020年以来3年ぶりとなる。また、景況感を示すDI値は、全地域合計で前年の14.6ポイントを大きく下回る4.5ポイントだった。2023年の中国のDI値は、2年連続-15ポイント前後で推移。ベトナム(-3.7)は前年から28.7ポイント減った。インドのDI値は44.4ポイントで前年に続き主要国・地域で1番、次いでメキシコ(34.1ポイント)が高かった。

(3)世界銀行は12月、2023年のタイの経済成長率見通しを10月に発表した3.4%から2.5%に引き下げた。同じく2024年予測も、10月の3.5%から3.2%に引き下げた。タイ政府が計画する給付金1万バーツ政策は、2024年~2025年の成長率を0.5~1.0%押し上げると推算した。アジア開発銀行(ADB)も同じく、12月発表のレポート「アジア経済見通し2023年12月版」の中でタイの2023年見通しを2.5%に引き下げた(昨年9月に3.5%の見通しを公表)。ADBは、輸出額の減少や、予算編成が遅れたことによる財政不安を下方修正の理由にあげた。一方、経済協力開発機構(OECD)は12月、2024年のタイの経済成長率を3.6%とする予測を発表した。

(4)タイ工業連盟(FTI)が12月20日に発表した11月の自動車生産台数は、前年同月比▲14.1%の16.3万台だった。内訳は国内向けが同▲15.5%の7.0万台、輸出向けが同▲13.0%の9.3万台。新型コロナ前の2019年11月の生産台数15.4万台を上回った。また、11月の国内新車販売台数は同▲9.8%の6.2万台で、輸出台数は同+13.2%の10.0万台。新型コロナ前の2019年11月の販売台数が7.9万台、輸出台数が7.5万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。

(5)FTIが12月20日に発表した11月の自動二輪車生産台数は、前年同月比▲11.4%の21.1万台で、5ヵ月連続のマイナスを記録した。2019年11月の生産台数は20.3万台であり、新型コロナ前の水準を上回った。内訳は完成車(CBU)が同▲5.8%の17.8万台で、完全組み立て部品(CKD)が同▲33.1%の3.3万台。また、11月の国内新車販売台数は同▲9.8%の6.2万台で、輸出台数は同+13.2%の10.0万台。新型コロナ前の2019年11月の販売台数が7.9万台、輸出台数が7.5万台であり、輸出台数は新型コロナ前の水準を上回った。


2. 投資動向
(1)12月19日、2024年から2027年の4年間にわたるEV推進第2フェーズ(EV3.5)の支援策が閣議決定された。タイ政府は、2030年までにタイで生産される自動車の少なくとも30%(乗用車72.5万台、オートバイ67.5万台)をEVにする目標「30@30」を掲げており、本支援策はその一環で、EV業界全体に対する投資支援を目的としている。また、本支援策は2023年末に失効した支援策EV3.0の後継策であり、既にEV3.0に申請した企業もEV3.5に参画可能である。支援策の一環としてEVの購入時に次の補助金が支給される。価格が200万バーツ以下でバッテリー容量が50kWh以上のEV乗用車には、24年は10万バーツ、25年は7.5万バーツ、26年と27年は5万バーツ。価格が200万バーツ以下でバッテリー容量が50kWh未満のEV乗用車には、24年は5万バーツ、25年は3.5万バーツ、26年と27年は2.5万バーツの補助金が付与される。価格が200万バーツ以下で、バッテリー容量が50kWh以上のEVピックアップトラックには、タイ国内産に限り10万バーツの補助金が付与される。価格が15万バーツ以下でバッテリー容量が3kWh以上のEVバイクには、タイ国内産に限り1万バーツの補助金が付与される。また、物品税に関しては、700万バーツ以下のEV乗用車は8%から2%に減税、200万バーツ以下のEV乗用車は2024年から2025年までの2年間、最大40%の引き下げが行われる。本支援策に申請する企業は、2026年までにEVの国内生産を開始する場合は、補助金を受けて輸入したEV完成車の2倍以上の生産台数、2027年開始の場合は3倍以上のEV国内生産することが条件となる。


3. 金融動向
タイ中央銀行(BOT)の発表によると、2023年の11月末時点で金融機関預金残高は24兆7,793億バーツ(前年同月比+0.9%)、貸金残高は30兆5,867億バーツ(同+2.3%)といずれも増加。また、9月27日にBOTは政策金利を2.25%から2.50%に引き上げた。また、11月29日の金融政策委員会(MPC)において、政策金利を2.5%に据え置く決定をした。


4. 政治動向、その他
(1)タイ政府は、観光税の導入を無期限延期することを決定した。以前の計画では、空路で入国する場合は1人300バーツ、陸路と海路での入国は1人150バーツ徴収予定だった。スダワン観光・スポーツ相は、まずは観光客を多く呼び寄せ、観光収入を増やしたいしたい考え。また、タイ政府は12月12日、日本人の訪タイ出張者は、滞在が30日以内であれば商用ビザの取得を免除すると閣議決定した。期間は2024年1月1日から26年12月31日までで、3年間の長期運用になる。タイ政府は、この閣議決定について「タイにとって日本は3番目に大きい貿易相手国であるため」と説明した。なお、当該免除措置を受けるための条件が、2023年12月29日付で日本のタイ大使館ウェブサイトに掲載されている。

(2)タイ空港公社(AOT)の発表によると、2023年11月のタイ主要6空港(スワンナプーム、ドンムアン、プーケット、チェンマイ、チェンライ、ハートヤイ)の利用者数は、前年同月比+26.9%の938.9万人だった。国際線は同+53.1%、国内線は同+2.8%で国際線が好調。2023年1月~11月の6空港利用者数は、前年同期比+76.2%の9,544,7万人。同期間の空港別では、スワンナプームが前年同期比+89.1%の4,647.1万人、ドンムアンが同+74.5%の2,447.2万人、プーケットが同+87.7%の1,251.7万人、チェンマイが同+56.0%の737.4万人、チェンライが同+16.3%の173.7万人、ハートヤイが同+7.8%の287.7万人だった。タイ国政府観光庁(TAT)は、年末年始期間の観光収入の大幅増を見込んでいる。


(注)本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
投資等に関する最終決定は、お客様ご自身で判断されますよう宜しくお願い申し上げます。

情報提供:三井住友銀行バンコック支店 SBCS CO., LTD.


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