London Dance Diary

ロンドンのコンテンポラリーダンス情報を中心に日々の出来事を綴ってゆきます。

ノスタルジー

2012-10-16 11:24:00 | 偏見いっぱい!読書感想文

最近読んだ本:五木寛之著 「下山の思想」

最近うちの旦那がご飯のときにかけるBGMは李香蘭と渡辺はま子。1940–50年代頃の歌なので私はタイムリーで聞いた訳ではありませんが、郷愁を誘う名曲ぞろいで、日の入りが駆け足で早まる秋のロンドンにはぴったりです。我が家がたちまちWong Kar-Wai監督の’In the mood for love’や振付家Pina Bauschの’1980’を思い起こさせる雰囲気に。

こんな背景のなかで読んでみたのが五木寛之著の「下山の思想」です。実はわたくし、この本を書店で見た時は「しもやまの思想」と読んで、「しもやまって誰?」と寝ぼけたことを思ってしまいましたが、手に取って納得。これは「げざん」と読むんですね。登山に対しての下山のことです。五木氏は人生、日本という国家を登山に例え、どのようにこれからの時代下山をしてゆくか、また下山することを楽しんでゆこうとこの本の中で提言しています。

多分、中国やインド、そしてサッカーのワールドカップにオリンピックをひかえたブラジルなんかが登山の真っ最中って感じなんでしょうね。私の住む大英帝国はコロニアルパワーも衰えてピークは遥か過去のこと。今はヨーロッパの島国としていろいろな経済問題を抱えながらゆるやかに下山しているところでしょうか?土俵際経済のギリシャは山から転げ落ちちゃったと言っていいんでしょうね。未曾有の震災、原発事故に見舞われた日本、これからどう下山してゆくのか、閉塞感をどう乗り越えてゆくのか、政治家もあんまりあてになんないし、先々心配なことばかりです。

私個人はというと、目標にしていた修士も修了していよいよこれから人生の後半戦という感じがしています。下山が始まったところ。日本でダンスを教えていた頃は少しでも新しいものを取り入れなければと躍起になっていましたが、最近は古いものを見直していくという姿勢に変わってきました。その点、五木氏の提唱する「ノスタルジーのすすめ」の章は共感できるものがありました。ノスタルジーに浸ることは時として下山の彩りになると言うことでしょう。

ただ、昨今は時代の流れるスピードがかなり速いような気がします。先日も知人のバースデーパーティーで私の携帯電話を見た友人が大笑い。「まだ、そんな機種使ってんの?」「ふるーい』と、馬鹿にされました。聞けばみんなスマートフォンの愛用者。うーん、スマートフォンが便利なのは分かる。だが、私の携帯だって何も不便は感じないぞ。それに5、6年前に替えたばかり…。まぁ、しかし、私が現在進行形で使っている携帯電話が「懐かしいもの」の対象になっているのが現実の様です。いろいろなものがその存在価値を吟味されることなく時代遅れなものとして切り捨てられてしまうのはちょっと寂しい気がします。

新しいものもいいけれど、ノスタルジックなものに囲まれて生活するのも悪くないと思っているわたくし。(うちの旦那もかなり年季が入って味があるし…。)折りたたみの携帯電話も壊れるまで使い続けるつもりです。(★★★★☆) 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿