
○国宝 大神社展
九州国立博物館【福岡県太宰府市】

・・神社など建物は見当たらないのに立派な鳥居があって、
その向こうには裾野を広げ静かに佇む山・・
たとえばそんな風景を、子どもの頃は不思議に思ったものでした。
古来日本人には、人知の及ばぬ自然を畏れ敬い、崇め奉るという信仰がありました。
山や海、島、岩や木などの対象そのものに神を見いだす精神は素朴でも純粋に感じます。
時代が下がるにつれ、信仰する人々によってその地に社殿が設けられるようになると、
神の姿を表した像や絵画、神のための調度類や装束、武具、祭具や供物、
さらに信仰の証や神の守護への感謝を込めての献上品など、
様々な文物が納められるようになりました。
九博の今回の特別展は、そうした各地の神社に大切に伝えられてきた数々の宝物を、
いちどに目に出来る貴重な機会になっています。
展示は全部で6章に分かれていますが、今回はその流れがゆるやかで自然に感じました。
巡回展とは言え、九博オリジナル展示も少なからずあるようで、
湧き出る興味を素直に追っていけば、自然に順路を辿れる、という展示に好感度大でした。
個人的には、やっぱり九博の特別展はこうじゃなくっちゃ、と思います(^^)

最初の「祀りのはじまり」の章で目を引くのは、やはり沖ノ島出土品です。
沖ノ島は玄界灘に浮かぶ孤島ですが、古来より島自体が信仰の対象とされ、
現在でも祭礼時以外の上陸が禁止されています。
こうした特殊な環境故に、作られた場所も時代も多岐にわたる数多くの貴重な出土品が見られ、
すべてが国宝に指定。海の正倉院と称されているのです。


この織機は両手に乗るほどの大きさの精巧なミニチュアですが、
ケースの中の実物は写真以上に繊細で美しく、思わず見とれてしまいます。
同様の織機は伊勢神宮にも納められているそうです。
各地の神社に、こうした美しい古神宝が数多く伝わっているのですね。
続く「古神宝」の章では、神に献上された装束や調度類など、
その時々の時代を反映した品々がたくさん展示されています。

こうした古神宝以外にも、社殿を飾る調度や祭具、
有力者の繁栄祈願の奉納品、寄進物、それに勿論数々の古文書など、
神社に伝わる文物は数多くあります。
地元福岡縁の展示品も多く、
たとえば最近我が家も祈祷してもらったばかりの宮地嶽神社からも、
境内よりこのような出土品が。

金銅製壼鐙、7世紀のものだそうです。シルクロードを通って来たのでしょうか。

こちらも7世紀古墳時代ですが、さすがにこの巨大な太刀が丸ごと残っていたわけではなく、
出土した僅かな部分から全体像を割り出した復元品とのことですが、
その復元の過程も写真入りで解説され、光り輝く大太刀は展示室の中でも迫力満点でした。
この時代の技術の粋を集めて作られたのでしょう。
当時の有力者の権力の大きさ、ひいてはこの地方の繁栄が見えるようです。
ところで神社と言えばお祭り。
14世紀、手向山八幡宮(奈良)にて祭礼で使用された神輿が展示されていました。
優美で上品な神輿です。

一方でこんな迫力の浮彫りも五面。

舞楽で使用された、住吉大社(大阪)に伝わる面楯だそうです。
そう、今回個人的に、ひとつだけ残念だったのは、
福岡や近隣の祭りについての展示や解説が殆どなかったこと。
個性豊かな祭りの多い土地柄、
ぜひ九博オリジナル展示としてコーナーを設けてほしかったな、と思ったのでした。
(個人的には櫛田神社と山笠を強力推薦するんですが 笑)
さて、最後の章。

「第6章 神々の姿」と題された展示は、
その名の通り、さまざまな神像がずらりと並ぶ様子が圧巻です。

神様には、女性も壮年の男性も、若者もおられます。
仏像と異なり、決められた型像があるわけではないので、
その姿も表情も千差万別、たいへん個性豊かな神様たちです。
この表情は誰かに(もしくは特定の誰かに)似ている・・と思う像もいくつもありました。
展示室全体が清々しくて、心が引き締まるような印象なのは勿論なのですが、
でも一方でなんとなく賑やかというか、親しみやすく楽しい雰囲気があるのは不思議です。
神様たちも、ここで他の神様たちと一緒になって、案外交流を楽しんでおられるかもしれません。
--------
まだ会期前半の特別展ですが、期中の展示替えも多いようです。
私が見学した日には公開されていなかったけれど、見てみたい作品もあり、
できれば再訪したいと思っています。
☆九州国立博物館「国宝 大神社展」は3月9日(日)まで。

※この記事はぶろぐるぽにエントリーしています。
また、記事中の写真は九州国立博物館さまよりご提供いただきました。
転載はご遠慮ください。
九州国立博物館【福岡県太宰府市】

・・神社など建物は見当たらないのに立派な鳥居があって、
その向こうには裾野を広げ静かに佇む山・・
たとえばそんな風景を、子どもの頃は不思議に思ったものでした。
古来日本人には、人知の及ばぬ自然を畏れ敬い、崇め奉るという信仰がありました。
山や海、島、岩や木などの対象そのものに神を見いだす精神は素朴でも純粋に感じます。
時代が下がるにつれ、信仰する人々によってその地に社殿が設けられるようになると、
神の姿を表した像や絵画、神のための調度類や装束、武具、祭具や供物、
さらに信仰の証や神の守護への感謝を込めての献上品など、
様々な文物が納められるようになりました。
九博の今回の特別展は、そうした各地の神社に大切に伝えられてきた数々の宝物を、
いちどに目に出来る貴重な機会になっています。
展示は全部で6章に分かれていますが、今回はその流れがゆるやかで自然に感じました。
巡回展とは言え、九博オリジナル展示も少なからずあるようで、
湧き出る興味を素直に追っていけば、自然に順路を辿れる、という展示に好感度大でした。
個人的には、やっぱり九博の特別展はこうじゃなくっちゃ、と思います(^^)

最初の「祀りのはじまり」の章で目を引くのは、やはり沖ノ島出土品です。
沖ノ島は玄界灘に浮かぶ孤島ですが、古来より島自体が信仰の対象とされ、
現在でも祭礼時以外の上陸が禁止されています。
こうした特殊な環境故に、作られた場所も時代も多岐にわたる数多くの貴重な出土品が見られ、
すべてが国宝に指定。海の正倉院と称されているのです。


この織機は両手に乗るほどの大きさの精巧なミニチュアですが、
ケースの中の実物は写真以上に繊細で美しく、思わず見とれてしまいます。
同様の織機は伊勢神宮にも納められているそうです。
各地の神社に、こうした美しい古神宝が数多く伝わっているのですね。
続く「古神宝」の章では、神に献上された装束や調度類など、
その時々の時代を反映した品々がたくさん展示されています。

こうした古神宝以外にも、社殿を飾る調度や祭具、
有力者の繁栄祈願の奉納品、寄進物、それに勿論数々の古文書など、
神社に伝わる文物は数多くあります。
地元福岡縁の展示品も多く、
たとえば最近我が家も祈祷してもらったばかりの宮地嶽神社からも、
境内よりこのような出土品が。

金銅製壼鐙、7世紀のものだそうです。シルクロードを通って来たのでしょうか。

こちらも7世紀古墳時代ですが、さすがにこの巨大な太刀が丸ごと残っていたわけではなく、
出土した僅かな部分から全体像を割り出した復元品とのことですが、
その復元の過程も写真入りで解説され、光り輝く大太刀は展示室の中でも迫力満点でした。
この時代の技術の粋を集めて作られたのでしょう。
当時の有力者の権力の大きさ、ひいてはこの地方の繁栄が見えるようです。
ところで神社と言えばお祭り。
14世紀、手向山八幡宮(奈良)にて祭礼で使用された神輿が展示されていました。
優美で上品な神輿です。

一方でこんな迫力の浮彫りも五面。

舞楽で使用された、住吉大社(大阪)に伝わる面楯だそうです。
そう、今回個人的に、ひとつだけ残念だったのは、
福岡や近隣の祭りについての展示や解説が殆どなかったこと。
個性豊かな祭りの多い土地柄、
ぜひ九博オリジナル展示としてコーナーを設けてほしかったな、と思ったのでした。
(個人的には櫛田神社と山笠を強力推薦するんですが 笑)
さて、最後の章。

「第6章 神々の姿」と題された展示は、
その名の通り、さまざまな神像がずらりと並ぶ様子が圧巻です。

神様には、女性も壮年の男性も、若者もおられます。
仏像と異なり、決められた型像があるわけではないので、
その姿も表情も千差万別、たいへん個性豊かな神様たちです。
この表情は誰かに(もしくは特定の誰かに)似ている・・と思う像もいくつもありました。
展示室全体が清々しくて、心が引き締まるような印象なのは勿論なのですが、
でも一方でなんとなく賑やかというか、親しみやすく楽しい雰囲気があるのは不思議です。
神様たちも、ここで他の神様たちと一緒になって、案外交流を楽しんでおられるかもしれません。
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まだ会期前半の特別展ですが、期中の展示替えも多いようです。
私が見学した日には公開されていなかったけれど、見てみたい作品もあり、
できれば再訪したいと思っています。
☆九州国立博物館「国宝 大神社展」は3月9日(日)まで。

※この記事はぶろぐるぽにエントリーしています。
また、記事中の写真は九州国立博物館さまよりご提供いただきました。
転載はご遠慮ください。