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【近未来からの警告~積極的平和主義の先に】<4>

2015-08-11 12:58:52 | 
http://www.nishinippon.co.jp/feature/warning_from_future/article/174881

【近未来からの警告~積極的平和主義の先に】<4>
米国から 「監視社会」 侵害される私的情報
2015年06月11日 14時02分


 案の定、秘密裏に警察が動いていた‐。米国の首都ワシントンを拠点に、低賃金で労働者を酷使する「ブラック企業」へ抗議活動を行う全米学生組織の幹部を務めていた大学院生ギャレット・シシド・ストレインさん(26)は2年前、不思議な体験をした。

 開催が非公表の抗議活動が、なぜか突然現れた警察官に制止される例が相次いだ。「捜査員が潜入している」と、ある女性を名指しした情報が入ったのは2013年5月。情報漏れを確信し、不当な潜入捜査をやめるよう求めて提訴。警察側は女性が捜査員だと認め、学生組織を監視していた実態が明らかになった。

 01年の米中枢同時テロ後、米国では「社会の安全確保」の大義の前に、人権やプライバシー保護が揺らいでいる。国防総省が反戦デモに参加した活動家らに関する情報を集め「言論、集会の自由を侵害している」として、06年には全米市民自由連合(ACLU)が、裁判を起こした。

 ストレインさんは「今や当局は反体制的なあらゆる団体への監視を強めているようだ」と懸念する。

   ■    ■

 米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者が13年に暴露した、国家安全保障局(NSA)による市民の通話履歴やインターネット情報の大量収集。ニューヨークの連邦高裁は今年5月、通話履歴の収集は根拠とされた愛国者法215条を逸脱し、違法と判断した。同条の規定は1日、失効した。

 テロ対策を目的に01年に制定された愛国者法だが、起草に携わった連邦議会の議員たちでさえ想定外の拡大解釈を米政府は重ね、さまざまな個人情報を吸い上げるシステムをひそかに構築していたのだ。

 「国民の個人情報を可能な限り集めたいと考えるのが政府の性分。ひとたびこの種の法律を手にすれば、いずれ一線を越える」。プライバシー保護運動を主導する米図書館協会ワシントン事務所のエミリー・シェケトフ所長(65)は言う。

   ■    ■

 バージニア州のアーリントン中央図書館。返却された本のバーコードを端末機にかざしながら、貸出担当のエミリー・アルマンドさん(29)は言った。「この時点で、誰が何の本を借りたかという記録は自動的に消えます。これなら外部から記録の提供を求められたとき、『残っていません』って断れるでしょ?」

 冷戦時代から続く記録の提供を求める当局と、図書館との攻防。全米の大半の図書館は同種の電子システムを導入済みだという。ある人物がどんな本を借りたのか、共用パソコンで何を調べたのか。捜査当局にとって図書館は情報の宝庫。図書館側は、いかにして記録を残さないかに、知恵を絞っているという。

 一方、日本では、国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法を14年に施行した安倍晋三政権は、米国との軍事的一体化を進める安全保障法案の成立を目指す。国民への情報提供を絞り込む一方で、米国の後を追うように、テロ警戒などを理由に市民に過剰に目を光らせる息苦しい社会が待っているのではないのか。

 防ぐ手だてはあるのか。シェケトフさんの答えは明快だ。「政府がおかしなことをしていると感じたら声を上げる。一人一人の日本人が政府をしっかり監視する意識を持つことです」

=2015/06/04付 西日本新聞朝刊=

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