京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

「さよならの扉」/平 安寿子

2009-07-12 | Book

さよならの扉/平 安寿子(中央公論新社)

 

 

 53歳で末期癌を宣告された夫。 突然愛人がいたことを打ち明けられた専業主婦の妻・仁恵と、弁護士事務所に勤務し優秀な独身OLの愛人・志生子。 この二人の40代女性が夫の死後に妙な係わり合いを持っていく。

 妻と愛人の関係。 こういう組み合わせだと、誰しもドロドロした修羅場を勝手に想像してしまいますが、この物語での関係はちょっと違います。 今までにはない、不思議な二人の女性の関係を、女性視点で描いた物語です。

 いがみ合っている方がこういう関係は面白いと思うのですが、微妙に愛人との距離を詰めていく仁恵と、なるべく一線を引きたい志生子。 二人の織り成す距離感と、昼ドラのようなギスギス・ドロドロ感はなく、むしろ天真爛漫・大ボケの仁恵と、繊細でデキる志生子の会話のキャッチボールがなんとも面白い。 しかも志生子の父の死と家族の、仁恵と娘二人も巻き込んで。

 
人生なんて、何がキッカケで思いも寄らぬ方向に進むものなのだが、この物語にもオチにホロッとさせる仕掛けが終盤に用意されている。 それが二人の求めていた結論であり、死んだ二人に愛された亭主への本当の意味での弔いだったのだと思える。

 登場人物も限られているし、一人ひとりに傾注できるから、もう少し肉付けして映画化しても面白いかもしれない。 主人公の仁恵と志生子、そして亭主。 死んでから生まれる不思議な三角関係に、もしかしたら、先に逝った亭主の汗をかかない不倫履歴と、回想の記録を、二人のそれぞれに愛した女の会話で彩られる新しい関係を描いた作品だとも言える。 それは男性陣にとって、さほど背筋の凍るほどの物語ではないところが、少し残念ではあるのだが・・・。



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