□作品オフィシャルサイト 「僕がジョンと呼ばれるまで」
□監督 風間直美、太田茂
■鑑賞日 4月17日(木)
■劇場 東京都写真美術館
■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)
<感想>
日本で開発された認知症改善プログラムをアメリカはオハイオ州にある
平均年齢80歳以上の認知症を患う高齢者介護施設を舞台に、その認知症
改善プログラムに取り組む入居者たちの姿とその成果を追うドキュメンタリー。
エブリン(93歳)は認知症と診断されて2年。 自分の名前も書けず、ジョンとの
会話も噛み合わなかったか。 しかし彼女にも大きな変化が表れる。
趣味の編み物を再び始め、笑顔でジョンに話しかけるようになった。 そして、
かつてお得意だった辛辣なジョークまで復活した。 彼女たちは仲間と一緒に
学ぶことで、大切なものを思い出していく。
この映画は「脳トレ」で知られる川島隆太教授らが開発した、スタッフと一緒に
読み書きや簡単な計算を行なうことで認知症改善を目指す「学習療法」を
実践する認知症患者のリアルな状態を追っている。
まるで生きることに意欲を失くした高齢認知症患者たち。 しかしながら、毎日
決まって施設のスタッフと対峙し、小学一年生で習うような簡単な足し算や、
1~10(出来るようになれば30まで)までの番号札を、紙に書いてあるその
番号と同じ番号に置くという簡単な作業を繰り返すことにより、認知症患者たちは
日々変化を見せてくる。
一番凄いと思ったのは、認知症患者たちが、この取り組みを通して、次第に
明るくなり、活発になってくることだ。 スポットを当てているエブリンに至っては、
毎日、そして一度聞いては、そのあとも繰り返し名前を聞く作業を怠らない
ジョンに対し、半年の間に「僕の名前は?」と聞く、ジョンに対し、はっきり「ジョン」と
答えたことだ。
そして家族からのヒアリングで「昔は編み物が得意で、孫の誕生日にはいつも
手編みの プレゼントをしていた」ということをヒントに、再び編み物を始めさせる。
その効果は絶大で、認知症患者の中でもリーダーシップを発揮できるくらい、
積極的な行動を取るようになる。
そのうち、廃墟のような施設内がまるで水を得た魚のように活き活きとしてくる。
スタッフは決して難しいことを要求しているわけではなく、日々繰り返し気長に
学習療法を実践していく。 日本でもこの学習療法を取り入れている施設もある
ようだが、実際に両親が認知症を患い、住所さえ書けないようになってきているので、
家族側の提案で住所の読み書きを始めてもらったが、もっと施設の認知症患者に
携わる側から、こういう事例を基に学習をしていただきたいものだ。
要支援、要介護の認知症患者に接する方全てにこの映画を観ていただきたい。
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