京の昼寝~♪

なんとなく漠然と日々流されるのではなく、少し立ち止まり、自身の「言の葉」をしたためてみようと・・・そんなMy Blogに

『うつせみ』

2006-03-16 | 洋画


私たちは永遠に、よりそう。

 

■監督・脚本  キム・ギドク
■キャスト イ・スンヨン、ジェヒ、クォン・ヒョゴ、チュ・ジンモ

□オフィシャルサイト  『
うつせみ

 この世は夢か現か、幻か……。 ひとは誰しも孤独を抱え、ぽっかりした虚空を埋める誰かを待ち続ける。夫によって家に閉じ込められた女ソナ(イ・スンヨン)。 抜け殻のように生きるソナのもとにある日、留守宅を転々とするミステリアスな青年テソク(ジェヒ)が現れ、ふたりの秘密の旅が始まった。 言葉を交わすことなく孤独な魂がそっと寄り添っていく。 旅の果てにようやく訪れた、愛と喜びに満ちた時間。 はかなくも今だかつてない幸せが、ふたりを包む。


 おススメ度 ⇒★★★ (5★満点、☆は0.5)
 cyazの満足度⇒★★★☆


 不思議な感覚の映画だった。 

 この映画を語るには、是非観て欲しい。 それは、決して言葉では表現しにくいタイプの映画だと思うからだ。

 今までの恋愛の中で、ただこの人のそばにいるだけで安心なできるという人は誰しも居ただろう。 何も語らず、何も期待せず、ただそばにいるだけでいい。 この人とずっと居たい。 そんな感じを感じる映画だった。

 “うつせみ(空蝉)”とはその字の如く蝉の抜け殻。 この映画が描く“うつせみ”とは、人間としての生きた肉体から抜け出した人間の魂のぬけがらでは決してないのだろう。 生身の人間として一緒に暮らしていても魂の通わない人より、精神的な部分で繋がりに、少しジェラシーを感じさえした作品だった。 

 主人公のミステリアスな青年テソクは昼間地区を定めてその一区画の一軒家はアパートのドアというドアにDM貼っていく。 そして夕方(夜)、そのDMが貼られたままの家(つまり留守宅)に侵入し、まるでそこの住人かのように一晩生活し、その生活を繰り返している。 導入部分からこの青年がどんな方向に走っていくのか興味津々と言うところだ。 平たく言うと「ツカミはオッケー!」って感じで(笑)
 この後の展開がどうなっていくのかノッケから引き込まれていきました。
 
 そしてそんなことを続ける中、いつものように留守だと思って忍び込んだ豪邸で、彼はいつものように料理を作ったり、洗濯をしたりする。 実はそこには独占欲の強い夫に苛まれ、気に入らないと暴力を振るわれ、まるで抜け殻のように生きていたソナがいた。 
 彼を侵入を知りながらひそかに彼の行動を覗き見ていたソナ。 ここから二人の逃避公的摩訶不思議な近隣ロードムービーが始まる。

 なんどとなく、二人は一夜の宿を探しつつ、言葉を交わすこともなく、ただ二人はそれまでの自分たちが最も必要だった人間としての温かさを互いに感じ始めた。 言葉がなくても、二人乗りのバイクで寄り添う二人にそれ以上の幸せはない。

 そんな放浪の旅を続けていく過程で、ある事件に巻き込まれ、話は意外なほうに展開していくし、韓国映画特有の“痛い”手法も登場するが、離れ離れになってしまった二人は、その二人の愛の強さゆえに、思わぬ方法で再会を果たす。 それは決してスタイリッシュではないけれど、ゆったりのした時間のなかで、会えたことの幸せを噛み締める二人の珠玉の時間だったと見てとれた。

 ちょっと面白いのは、留守宅に侵入してはまるで自分の家のようなふるまいで、料理を作り、食器を洗ったり、洗濯をしたり、そしてその留守宅で壊れているものがあれば修理する。 これは一宿一飯の恩義だろうか(笑)
 また離れ離れになってしまい、心の穴を埋めるが如く、彼を過ごした家を訪ねるソナの行動も理解できない範疇ではなかった。

 監督は2004年にベルリン国際映画祭『サマリア』、また同じ年にヴェネチア国際映画祭『うつせみ』と、続けて二つの最優秀監督賞を獲得したキム・ギドク。 なかなか彼の描く世界は、誰しもが描きそうでいて描けなかった、人の心のスキマをうまく埋めてくれるような映画作家だと思う。 次回作もチェックしたい監督だ。


 『うつせみ』、韓国では“空き家”なんですね~



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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トラックバックありがとうございました (朱雀門)
2006-03-17 20:49:38
こんばんは

確かに言葉にするのが難しい映画ですね。テソクの不思議な行動は、そのまま映画の不思議さにつながっていたように思います(掲載しておられるセルフショットのカットも、考えれば考えるほど不思議な光景でした)。



一宿一飯の恩義・・・面白い表現ですね。近代以前の社会ならテソクのような放浪男もそれほど違和感のない存在だったのかも知れない。映画の中にお金が出てこなかったのも気になる点であります。

返信する
こちらこそ~ (cyaz)
2006-03-18 00:42:51
朱雀門さん、TB&コメントありがとうございますm(_ _)m



>テソクの不思議な行動は、そのまま映画の不思議さにつながっていたように思います

たしかにそうですね!



>セルフショットのカットも、考えれば考えるほど不思議な光景でした

何かを残しておきたかったのでしょうかねぇ・・・。



>映画の中にお金が出てこなかったのも気になる点であります

もしかしたら『シックスセンス』的要素がそこにあったのかもしれませんね^^



返信する
こんにちは♪ (ミチ)
2006-07-18 14:40:25
「うつせみ」って日本語では源氏物語を思わせてとてもいい題名だと思うのですが、韓国では「空き家」ですか・・・。

そしてこの映画の原題は「3番アイアン」でしたっけ?

テソクが唯一盗み出したゴルフのクラブですよね。

とてもセンスあるタイトルだと思いました。
返信する
不思議な感覚~ (cyaz)
2006-07-18 23:04:53
ミチさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>韓国では「空き家」ですか・・・。

そうみたいですねぇ^^



>そしてこの映画の原題は「3番アイアン」でしたっけ?

そうですね!

僕はゴルフやらないのですが、そこにも意味があるんでしょうね(笑)

返信する
(^o^)コ(^-^)ン(^0^)バ(^-^)ン(^0^)ハ (とんちゃん)
2006-09-27 21:44:18
「つかみはオッケー!」 笑えます(*≧m≦*)ププッ

確かに そんな感じでした。自然に テソクになって、人の家を 覗き見する感覚を味わっていましたよ^^



ヌード写真にはドキドキしたりして(男かっ!笑)

返信する
ダチョウ~ (cyaz)
2006-09-28 00:56:19
とんちゃんさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m



>「つかみはオッケー!」 笑えます(*≧m≦*)ププッ確かに そんな感じでした。

何とも表現しづらい映画でしたが(笑)



>自然に テソクになって、人の家を 覗き見する感覚を味わっていましたよ^^

これって事件ですけど、妙にやっぱ見たいですよね(笑) 覗き趣味ですが(笑)



>ヌード写真にはドキドキしたりして(男かっ!笑)

あらら・・・

返信する
Unknown (kimion20002000)
2006-10-24 01:03:34
TBありがとう。

なんか、観客のほうが、おいおい、住人が帰ってきたらどうするんだい!とあらぬ心配にドキドキしてしまいましたねぇ(笑)
返信する
違ったドキドキ感~ (cyaz)
2006-10-24 08:49:21
kimion20002000さん、TB&コメント、ありがとうございますm(__)m



>おいおい、住人が帰ってきたらどうするんだい!とあらぬ心配にドキドキしてしまいましたねぇ(笑)

そこがまたこの映画の不思議なところと、潜在的に持つのぞき見的趣味が加わって美味しゅうございました(笑)
返信する
Unknown (nakaji)
2007-01-11 01:08:41
ことしもよろしくお願いいたします。

うつせみの意味わかりましたわ~
そっちのほうがなんとなくこの映画にあってますよね~
返信する
視点~ (cyaz)
2007-01-11 08:19:45
nakajiさん、TB&コメントありがとうございますm(__)m

>ことしもよろしくお願いいたします。
こちらこそよろしくお願い致しますm(__)m

>うつせみの意味わかりましたわ~ そっちのほうがなんとなくこの映画にあってますよね~
ですよねぇ~
面白い視点だったんですけどね^^
返信する

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