CORRESPONDANCES

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石井好子 (10) 入院初日 手術・再起

2010年09月05日 06時22分01秒 | 追悼:石井好子

封筒を無くしているので日付がわからない。2年前の秋。腰の手術のための入院初日の心境が語られている。今日見つけた。

Bruxelles(ここには私の本名が入っている)様
ご無沙汰しておりました。
あなたの手紙はいつもいつも私にとって楽しみな貴重なものです。
大切にとってときどき読み返します。
私やっとひまになりお手紙する次第です。
今日入院したのです。家にいるとバタバタ、アタフタ、あっという間に午前二時、どういうわけか必ず午前二時なのですね。
今まだ午後9時、ひとりで何もする事がないってすばらしいでせう。
でも手術はけっこう大変みたい
それと闘うのも十日くらいかかるみたいで1ヶ月の入院。
入院グッズ買い集めたり、ドタキャンした仕事、十四コンサート、お詫び、代役で、毎日めまぐるしく過ぎまして、今新しい戦いに入る寸前のお休みです。
東京タワーがここから見えるのです。
みのもんた氏も私の弟も同じ腰の狭窄病で手術成功してますから、私も多分大丈夫です。
でも大事とって年内休業ということにして手術にのぞみます。


86才の再起と思っています。
85才で歌はやめると前から言ってましたし、85才の終わり頃、7月29日立川パリ祭で腰痛の中でも歌いきれた時ほっとして、これでやめられるとも思ったのです。
あなたはわかってくれると思うけど、私一生懸命歌ってきましたし、最後の力ふりしぼって29日まで歌えたこと、神様に感謝と、そう思ったのです。
その思いは今もありますけど手術してみて又気が変るのかどうなるのか分かりません。
1ヶ月の入院生活、その後私は歌いたくなるのかどうかも分からないです。といいながら今回の入院、夕方は病室でレオ・フェレセルジュ・ラマのCDを聞きました。シャンソンのCDも久しぶりに聞いた次第です。何か古い作家のパリの小説みたいなの、入院中に読みたいなと思っています。教えてくださいね。
では元気になりましたら、又すぐあなたにお手紙出します。3週間くらいだめみたいですが心配しないで下さい。
私は大コンサートに向かうつもりで、8月体調を整え、今とても元気ですから
じゃ又ね、お元気で、お大切に
石井好子



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引きのタイミングを考えながらも、86才の再起を心に誓われていたのだと思う。
ー東京タワーがここから見えるのです。ー
の一行を見たとき、お見舞いに行こうと思った。
ー古い作家のパリの小説みたいなのー
を探そうとも思った。
腰の手術を決意することが、どれだけの大決心が要ることかということもよく分かっていた。そして入院初日の午後9時にようやく手に入れた一人の時間の心の中。全部理解できていた。
なのに適切な本は思い至らず、病院に駆けつけることもしなかった。
こんな時にまで観念的存在でありつづけようとした自分自身を卑怯だと以来ずっと後悔している。

追記:2010年9月13日
体調は大コンサートにむかえるほど万全だったことが再確認できる。腰の手術をして、弱点を克服した上で歌手としての生き方を熟考したかった。そのためにリスクを覚悟で、手術を決断された。その勇気、そして前向きな姿勢は生涯一貫している。「肝不全による急死」の報道は誰か別の人のこととしか思えない。



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