文明ロード

開店までの生々しい道のり

Vol.20「カレー?いや、カレーパンです」

2007年06月11日 | Weblog
三大重要コンセプトの最後を飾るのは、実は「カレーパン」です。
以前もここで述べたかと思うが、「古来より永きに渡り親しまれ、
これからもすたれることが考えにくいもの」で、
かつ「シンプルなオペレーションで成り立つもの」が、
「飲」では珈琲、「食」ではカレー、という考えがあり、
当初からずっと思いをめぐらせていた。

 メニューを役者に例えると、珈琲文明の主役は当然珈琲である。
しかし舞台には名脇役が必要である。
看板に掲げているのはあくまでも珈琲でありながら、
「ここはカレーパンも旨いんだよ」という風になってもらいたい(希望)。
いや、なるはずだ!なるに決まってる!(断定推量)。

 カレーと珈琲はもともと相性も抜群だし、喫茶店でありながらカレーが相当おいしいっていう店もいくつかある。
吉祥寺の「武蔵野文庫」や「くぐつ草」なんかは良い例だと思う。
この二つの店は特に店側は声を大にしてカレーをアピールしてないけど、
お客様の間ではカレーがおいしい店で通ってるみたいな、実にかっこいいスタンスである。
「チューブ」のギターリストは実はメチャクチャ上手い、みたいな。

 珈琲文明もこんな風にしたい。しかしカレーパンが主役になるのは、これまた困る。
ケーキの種類(チョコレートケーキとチーズケーキ)にせよ、主役(珈琲)の持ち味を最大限に生かす、という観点からキャスト(メニュー)に抜擢してるわけで、これらが主役にとってかわることは店のコンセプトが揺らぐことにもつながるので、主役は珈琲である、ということは声を大にして言っていく必要があるのだが、
それにしてもこの脇役(カレーパン)には相当な思い入れがある。構想10年以上だし(笑)。

 カレーライスではなく、カレーパンである。
食事ではなく、軽食・スナック類である。
カレーライスを食べる人は飲み物は水があればいいっていう人も多いが、
カレーパンになるとどうしたって珈琲やカフェオレなどが飲みたくなると思うし、
こうすることで主役(珈琲)の面目も保たれる。
 イメージというものは面白いもので、食事をとろうと思うお店には、
あくまで食事目的で利用するようになり
ランチやディナー以外の目的であれば他のところというように、
一人の人の中でもお店の利用方法を分けるようになっている。
俺自身がそうだからよくわかる。
学生にせよ社会人にせよ、忙しい昼どきは正直、動物的におなかを満たす、
みたいなところもあるだろうし、
弱小個人店はランチで勝負っていうことをやるべきではないと考えている。
全時間帯対応型の珈琲のお店というコンセプトを確立するためには、
あまり食事メニューを充実させてはマズイというのがあり、
極力メニューは絞っていきたいんだが、
そうはいってもこのカレーパンは、なるべく声を小さく(?)言っていくが、
かなりの自信作で、一人でも多くの人たちに賞味していただきたいものである。

 ではこのカレーパン、具体的にはどんなものか?
普通カレーパンというと、揚げパンの中にフィリングとして粘度の強い、というかカチカチ・パサパサのカレーが入ってるといったところだと思う。
 「焼きたてアツアツのカレーパン!」として売れてる店もあるけど、
このアツアツというのは表面の揚げパン部分がアツアツになっているだけで、
中身のカレーまでは熱くない、というのが一般的だろう。

 珈琲文明の「文明カレーパン」は中に入っているカレーがアツアツで、具だくさんで、
スパイシー(しっかり辛い)で、パンは揚げパンではなく生地のしっかりしたパン。
作り置きするんじゃなくて、注文が入ってからお鉢状のパンの中にアツアツトロトロのカレーを注ぐ、というもの。
 肉も野菜もふんだんに入れ込んで珈琲と一緒に注文すると¥380(単品の場合は¥480)。正直、これでは原価が高すぎて元があまりとれないんだが、
おいしさも安さもとことん追求したもので、一種の利益無視のサービス商品なんだが、
もはや俺の中では道楽に近いものかもしれない。

 この「文明カレーパン」の他に、もう一つ重要なキャストが、「天使のカレーパン」。
中身はタイ風グリーンカレーである。
鶏肉と竹の子とほうれん草がたっぷり入ってて、これらの食材は「文明カレーパン」には全く入っていない(※「文明カレーパン」は牛肉とじゃがいもにんじん玉ねぎに10種類以上のスパイスが入った、スタンダードとはいえ辛口で重厚なカレー)という、
メニュー制作の原則である、「同食材をなるべく使いまわす」ということも無視している。

 そして悪役『ヒール』もしっかりいる。そう、「地獄のカレーパン」(笑)。
これはさすがに洒落になんないくらい辛いので、積極的にはオススメしないが、
完食した人は「エンマ台帳」にその名を残すことにはなる。
 やっぱり道楽以外の何ものでもないか・・・。

 まぁ「地獄の~」はともかく、「文明カレーパン」と「天使のカレーパン」は本当に一度は食べてみてほしい一品かつ逸品、名脇役である。

 以上で我が店の最重要三本柱は揃ったことになる。
これを読んでくれている方々にも、この店の3つの最大の武器はぜひ知っておいてほしいと思うので、繰り返しておきます。

☆ 古き良き時代にタイムスリップ、夕暮れ&朝焼けをメインに空の明るさが調光変化する。
☆ スペシャルティコーヒー(世界最高級豆)をサイフォンごと提供。
☆ カレーパン

この3つの志、初期衝動だけはブレることがないように、心していきたい。