先日浜松へ行った際に立ち寄った Tarminal of Books ~みんなで持ち寄ってつくる本の展覧会~にて、いくつもの楽しい、また懐かしい本の数々に出合いました。中でも感動したのが、この土のコレクション。
土の美しさに見せられた著者は、全国を回って土を集め、そのコレクションは1万種以上になるそうです。土の採集の仕方に始まり各地で採集される土色の地域別の分析、更には土で紙を染めたり絵の具をつくったりという、遊び方までもが詳しく写真入で掲載されています。漢字には全てふりがなが振ってありますので、子供向けの学習書のようですが、とても専門的な内容ですのでむしろ大人がはまりそうです。
この著者ほど丁寧ではありませんが、CLIMATでも長年、調査の度に土や砂を集めています。試験管とコルクの蓋、ステンレス製のスタンドは東急ハンズで購入しました。この形式に至るまで、実に紆余曲折があったことをよく覚えています。長く保存することを考え、ケースはガラス製が良いだろうということはすぐに決まったのですが、『蓋が白いとおかしい』『この瓶はずん胴すぎる』等々、何度も所長からダメだしが続きました…。
現在のオフィスに引っ越す際、スタッフ一同が『土のコレクションをどこに・どのように展示するか』ということを“重要なミッションとして”考えていたことが懐かしく思い出されます。各自にも様々な思い入れのあるコレクションになっています。
この本との出会いが印象的だった理由は他にもあって、展覧会をお手伝いしていた文芸大の2年生(昨年度の生徒さん)が会場で声を掛けてくれ、『この本を見たとき、去年の授業で紹介してもらった試験管の土を思い出しました!』と言ってくれました。ものに対する美しさや印象深さの記憶が、こうして繋がって行くことをとても嬉しく感じました。
著書の中で、もっとも素敵だなと感じた一節。
『色鮮やかな土がある北陸地方。気になってあちこちを歩いてみたら、すごいところを見つけた。石川県鳳至郡の柳田村。能登半島の先端に近い、低い山々に囲まれた小さな村だ。ここにはひとつの村とは思えないほどの、きれいな土がたくさんあった。こんなにも何種類もの色があるところはめずらしい。村に住んでいる人たちがうらやましい。』
美しい色合いの土を探しに行く。そのような目的の旅もあるのですね。
土や砂の色はまさにアースカラー。関東育ちの私は、土色というと関東ロームの暗く黄味よりの茶色しか記憶にありませんでしたが、今ではその豊かさや巾の広さを知り、『暖色系の低彩度色』等とひとくくりにしてしまうことが勿体無い、とさえ感じています。
一つの世界の中にある微細な変化に出来るだけ目を向けること。そうした意識が薄れると、色が素材や形態から切り離され、薄っぺらな存在となってしまうような気がしてなりません。大地は食物を育て、動植物の命を育みます。それはすなわち、人間の命を支えているということに他ならない、とも思います。土色に囲まれるとホッとしたり穏やかな気持ちになったりするのは当然のことでしょう。
これからも益々、土色の新しい表現の可能性を探求して行きたいと思います。
土の美しさに見せられた著者は、全国を回って土を集め、そのコレクションは1万種以上になるそうです。土の採集の仕方に始まり各地で採集される土色の地域別の分析、更には土で紙を染めたり絵の具をつくったりという、遊び方までもが詳しく写真入で掲載されています。漢字には全てふりがなが振ってありますので、子供向けの学習書のようですが、とても専門的な内容ですのでむしろ大人がはまりそうです。
この著者ほど丁寧ではありませんが、CLIMATでも長年、調査の度に土や砂を集めています。試験管とコルクの蓋、ステンレス製のスタンドは東急ハンズで購入しました。この形式に至るまで、実に紆余曲折があったことをよく覚えています。長く保存することを考え、ケースはガラス製が良いだろうということはすぐに決まったのですが、『蓋が白いとおかしい』『この瓶はずん胴すぎる』等々、何度も所長からダメだしが続きました…。
現在のオフィスに引っ越す際、スタッフ一同が『土のコレクションをどこに・どのように展示するか』ということを“重要なミッションとして”考えていたことが懐かしく思い出されます。各自にも様々な思い入れのあるコレクションになっています。
この本との出会いが印象的だった理由は他にもあって、展覧会をお手伝いしていた文芸大の2年生(昨年度の生徒さん)が会場で声を掛けてくれ、『この本を見たとき、去年の授業で紹介してもらった試験管の土を思い出しました!』と言ってくれました。ものに対する美しさや印象深さの記憶が、こうして繋がって行くことをとても嬉しく感じました。
著書の中で、もっとも素敵だなと感じた一節。
『色鮮やかな土がある北陸地方。気になってあちこちを歩いてみたら、すごいところを見つけた。石川県鳳至郡の柳田村。能登半島の先端に近い、低い山々に囲まれた小さな村だ。ここにはひとつの村とは思えないほどの、きれいな土がたくさんあった。こんなにも何種類もの色があるところはめずらしい。村に住んでいる人たちがうらやましい。』
美しい色合いの土を探しに行く。そのような目的の旅もあるのですね。
土や砂の色はまさにアースカラー。関東育ちの私は、土色というと関東ロームの暗く黄味よりの茶色しか記憶にありませんでしたが、今ではその豊かさや巾の広さを知り、『暖色系の低彩度色』等とひとくくりにしてしまうことが勿体無い、とさえ感じています。
一つの世界の中にある微細な変化に出来るだけ目を向けること。そうした意識が薄れると、色が素材や形態から切り離され、薄っぺらな存在となってしまうような気がしてなりません。大地は食物を育て、動植物の命を育みます。それはすなわち、人間の命を支えているということに他ならない、とも思います。土色に囲まれるとホッとしたり穏やかな気持ちになったりするのは当然のことでしょう。
これからも益々、土色の新しい表現の可能性を探求して行きたいと思います。