環境色彩デザインを考える人へ

長年の経験と実践の中から、色彩デザインに役立つ情報やアイデアを紹介して行きます。

色彩デザインを伝えるということ

2010-10-07 21:08:00 | 日々のこと
今日から後期の授業が始まりました。どの大学で講義を行う際も、例年どの程度まで色の専門的な話をするか、どのような事例を挙げれば正しく伝わるか、試行錯誤の連続です。

日々の業務と同じように、私は自信が経験したものでしか、相手を納得させることは出来ないと考えています。例えば90分の講義を充実したものにするために、大体80枚前後のスライドを使用しますが、最終的に内容が確定するまでにはその何倍ものスライドを用意しますし、写真等は常により良いもの、あるいは最新の情報に更新をして行きます。

自身の経験にも依るのですが、初めに色彩の『論』ありきではデザインにおける色彩、に対して興味がそがれてしまうような気がしてなりません。おまけに今日のような気持のよい気候、昼下がりは眠気との戦いです。とにかくまずは興味を持って授業に臨んでもらうことが先決です。そのため、今年度からは思い切って構成の順序を大幅に入れ替え、まずはデザインやアートの興味深い色使いから講義を開始しました。

そして、時代のつながりを盛り込むことも、かなり意識しています。これも、時間軸に沿って見せるだけでは、どうしても飽きてしまう。それを、50年前のこういう動き、スタイルが、今のこのような表現につながっている、という解釈を加え、そうしたことをきかっけに個々の経験値の向上に役立つような講義を目指しています。

私は性格的に、基本的には直球しか投げません。ですから、より的確に出来るだけわかりやすく、身近な事例で、ということを常に考え続けています。

これは本日の講義で紹介した、色彩の心理的効果の一つ、“辺縁対比”を紹介したもの。白から黒まで、段階的に明度を変化させたグラデーションパターンは、より明度の低い色との境界付近がまるで発光するように明るく見える現象です。



この現象は私達の日常生活の中でも見ることが出来ます。例えば幾重にも連なる山並み。色彩学では必ず紹介する項目ですが、2010年バージョンは昨年調査で訪れた中国・万里の長城で撮影したものです。
こうして、自身の引き出し=ヴァリエーションをどんどん増やしています。

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