町長のひとり言

和食店料理長の『ひとり言』

晩秋

2009年11月07日 | 料理
すっかり秋も深まり紅葉の季節に
なりました。
山々では紅葉をはじめ公孫樹や
柿、栗など秋ならではのものが
鮮やかに色を染めています。
 『錦秋』
まさしく、色とりどりの一年でも
一番きれいな季節ではないでしょうか。

うちの店では某フリーペーパー0円に
広告を載せています。その広告の
撮影でのこと。

うちは毎月、同じカメラマンに来てもらう
ようにしています。というのは、その方が
こちらの魅せたいものやメインで撮って
ほしいものを解ってもらえるからです。
まあ、単純に相性の問題もありますが。

いつものように3品ぐらい並べて、バランスを
見ながら撮影をしていく。
するとフレームを覗き込みながらカメラマンが
嬉しそうにこう言った。
「ここの撮影に来るの本当に楽しみなんです。」
  「ここの料理を見て、ああもう秋だなと
季節を感じて、山に紅葉を見に行ったりするんです。」

料理人にとってこんなに嬉しいことはないと思う。
特に和食という看板を背負う者にとっては。
料理の中で一番表現すべきは季節感であり、また
それが日本料理の良さであり日本の良さである。
昨今、創作料理や多国籍料理などといった新しい
ジャンルの料理が増えた。しかし、和食、
日本料理というジャンルは特別でなければならないと
思う。新しい食材や調理法、盛り付けに挑戦する事と
なにもかもをごちゃ混ぜにするのは違う。
あくまでも和の心がそこにはなければならない。
なぜなら、日本料理だから。日本人だから。
自分たちの祖国の、歴史ある料理だから。
そして、和を志す者はこれを後世に伝えていく
義務もあると思う。
最近の若い子はオシャレな洋食や創作料理などに
はしる傾向がある。和食がオシャレじゃないかは
さておき、もっと自国の料理に興味関心を
抱いてほしい。作るほうも、食べるほうも。
料理だけでなく、歴史、音楽、
ファッション、すべてにおいて。

なぜなら、日本人なんだから。


写真の説明を少し。
甘鯛に栗をのせて焼いた丹波焼。
あしらいに石垣しんじょう。
すり身にむかごを入れて蒸したもので
断面が石垣に見えることからこの名が。
あけびに見立ててるのは紫芋と百合根の
金団。柿に見立てたのは鶉の卵を練り雲丹に
漬けて昆布と蕎麦でうてな(へた)を。
紅葉は自家製のポテトチップス。
どの仕事も先人が伝えてきた古い仕事だ。
これでも和食はオシャレではない?