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発達障害の改善に向けて光明が……?

2017-06-16 21:29:36 | 特別支援

発達障害などに関わるタンパク質を発見 マウス実験で

LRFN2欠損マウスの症状(研究報告から)LRFN2欠損マウスの症状(研究報告から)

長崎大学医歯薬学総合研究科の有賀純教授らの研究グループは、神経細胞の膜に存在するタンパク質LRFN2が、脳の発達に伴うシナプスの成熟に重要であるのを発見した。LRFN2が欠損したマウスには、発達障害・社会的行動障害の状態像によく似た傾向が見られた。この結果から、LRFN2の遺伝子変異を探索したところ、自閉スペクトラム症などの患者のLRFN2の機能に異常をきたす遺伝子変異が見つかった。

LRFN2は、シナプスの中のグルタミン酸などの神経伝達物質を受け取る部位。グルタミン酸受容体の位置を決めるPSD-95タンク質に結合し、受容体の量や記憶の基礎となるシナプスの性質を制御しているのが、詳細な解析の結果から分かった。

同研究では、LRFN2の脳での役割を知るために、LRFN2欠損マウス(ノックアウトマウス)を作り、各種の実験を通して行動を観察した。

欠損マウスは単独で飼うと正常マウスと同じ体重になるが、集団で飼うと軽くなる。このことから研究グループは、欠損マウスの社会性に着目。

欠損マウスの飼育ケージに新入りの正常マウスを入れると、欠損マウスは床敷の下にもぐって逃避行動を見せ、新入りとの接触を避けた。通常は超音波で他のマウスとコミュニケーションを図るが、欠損マウスではその頻度が低減していた。これは、社会的引きこもりの行動パターン。また欠損マウスは正常マウスよりも、特段に長く回し車の中を走った。これは、特定の行動に強くこだわる常同行動の傾向。

音に対する驚愕反応も特徴的だった。強い音に対する驚きは、通常、その音が発する前に驚きには至らないの程度の音を鳴らしてからだと、驚愕反応のレベルが下がる。欠損マウスでは、この驚愕反応レベルの低下があまり起こらず、反応は増強していた。これは、発達障害や統合失調症を含めていくつかの精神疾患に共通する感覚過敏を示していた。

その一方、迷路実験で不快な電気刺激の位置を覚えるエピソード記憶(空間記憶+恐怖記憶)については、記憶の増強に関わるシナプス伝達の長期増強が、欠損マウスの方が正常マウスよりも上がっていた。

こうした知見を踏まえて研究グループは、欠損マウスに表れた行動異常が、自閉スペクトラム症や統合失調症の患者の症状と似ていると考え、患者の遺伝子材料を用いてLRFN2の遺伝子変異探索を行った。

その結果、患者群にだけ認められるミスセンス変異(タンパク質の構造や機能に影響がでる遺伝子変異の一種)があるのが分かった。培養した海馬の神経細胞に、正常なLRFN2タンパク質とミスセンス変異を持つLRFN2タンパク質を産生させて比較したところ、患者由来のミスセンス変異を持つLRFN2は、PSD-95タンク質と結合する能力が低下しているのが分かった。

研究グループは今後、社会的行動を担う脳の回路がどのように作られ、LRFN2がどのような役割を果たすのかについて詳しく調べていき、分子レベルから脳の異常を解明し、適切な治療薬の開発につなげていきたいとしている。