チモシェンコ大村のロン・ポール研究+くだらない話

ロン・ポール氏のブログ翻訳を通じて、リバータリアン思想・オーストリア経済学について勉強しています。

医療に過剰介入する政府

2012-06-27 13:34:05 | 医療
Texas Straight Talk 2012/06/25

Government is Already Too Involved in Healthcare

医療に過剰介入する政府(拙訳:チモシェンコ大村)

連邦最高裁判所は今週中に、オバマケア法案の合憲性について判決を下す予定です。以前も述べたとおり、オバマケアの支持者は、議会が国民に医療保険加入を強制できるというバカバカしい法律的主張を展開しています。また、連邦裁判所が、自由を保護するという名目で、いわゆる「違憲審査権」を悪用してきたことにも言及しました。オバマケアを法の観点から擁護する者は、憲法の原理について全くの無知か、それをあからさまに無視する全くの無法者であることは明らかです。

同様に、オバマケアの支持者は経済学の基本原理を故意に無視しています。米国において医療費が高額になる根本的な原因は、医者と患者の関係が第三者の介入によって大きく歪められてきたからです。政府系機関であれ、名目上の民間保険会社であれ、政府の方針によって国民に事実上押し付けられた第三者機関の存在によって、医師は患者に対する守秘義務を保てなくなってしまいました。それだけではなく、医療費も必然的に跳ね上がってきました。これは、需要と供給、価格感受性、利益シグナルといった基本的な市場原則が破壊されているからです。

オバマケアは、医療保険加入の強制という手段で、類似の誤診をさらに拡大させるのです。

病院システムの最高執行責任者であるガブリエル・ヴィダル氏はこの問題の本質を突いています。彼が説明している通り、オバマケアは事態を悪化させるだけです。「うまく機能しているあらゆる産業分野でそうであるように、本来は、患者と保険プロバイダー間の自由なやり取りの結果、サービスの価格が決定される。しかし、オバマケアはこの価格を反映しないがために、医療費上昇が手に負えなくなる」という事実をオバマケアは無視しています。

さらに「医療費が反映するのは、政府がもたらす市場の歪みである。この歪みは、連邦レベル、州レベルにおいて指揮統制を行う官僚機構が作った還付制度によってもたらされる」と彼は続けます。「しかし、理論的にも実際的にも、官僚が適正価格を決めるのは不可能である。どんなにコストデータが正確であっても、用いるコンピュータープログラムがどんなに良心的で高性能であっても、それは不可能なのだ。(医師と患者の)関係は、政府や、HMOのような媒介の侵入によって腐敗させられてしまった。今ではもはや、意味のある価格情報を生み出すような関係はどこにもない」

そのような価格情報が欠落した我が国のシステムは、政府による価格統制、物不足、配給、無気力、医療の質の低下などに象徴される社会主義体制にますます似てきています。状況がひどくなるにつれ、医学を志す優秀な若者は少なくなり、米国に渡る外国人医師の数も減っています。

問題は深刻かつ悪化しています。オバマケアによる第三者機関を介した医療保険の強制は、彼ら政治的左派が本来望んでいる単一支払者制度への最初の一歩に過ぎません。

一方で、保守派はあきらめてこの制度を受け入れてしまったようで、米国民に実現可能な代替案を提示できていません。彼らは引き続き、医療保険という「制度」を守ることばかりに終始しています。本来ならば、あらゆる政府による管理を排除して、自由な市場メカニズムに委ねるべきなのです。

自由市場であれば、ほとんどの国民は、日常的な医療サービスについては即金で支払い、重篤なケガや病気の場合のみに備えて控除額の高い安価な医療保険をもつようにするでしょう。また医療保険は雇用から切り離され、雇用保険がなくなることを恐れ仕事を辞めるのに躊躇している企業家の卵を解き放つでしょう。医師の間で真の競争が生まれ、患者にも価格感受性が養われ、膨大な事務手続きにかかるコストも排除されます。これにより、医療費は急落するでしょう。医師も、病院経営よりも患者の治療に専念することができ、より幸せになれるでしょう。

議会は医療保険に関わる法律を撤廃し、自由市場を機能させなければなりません。これには、1973年の保険維持機構法、2003年に可決された処方箋薬剤給付に関するメディケア・パートD、そして2010年に可決されたオバマケア法案が含まれます。さらに、若い世代のために、メディケアの保険適用範囲を縮小し始めなければなりません。後数十年で破綻するシステムに依存することはできないのです。これらの処置を取ることでしか、医療というかつての崇高な領域に政府が与えた害悪を排除することはできないのです。

違憲の無人機使用を中止せよ

2012-06-21 14:20:16 | 軍事
Texas Straight Talk 2012/06/18

Unconstitutional Uses of Drones Must Stop

違憲の無人機使用を中止せよ(拙訳:チモシェンコ大村)

先週私は数人の同僚議員と共に、オバマ大統領宛に書簡を送りました。この中で我々は、何を判断基準に無人機(ドローン)を用いた対人攻撃を許可しているのかを説明するよう求めました。これに対し、政府の役人は、無人機の使用には、攻撃対象がテロリストであるという「十分な確証」が必要だと請け負いました。しかし、報道によると、殺害標的の「行動パターン」やその他の曖昧な基準だけで無人機の標的が決められているらしいのです。海外での武力行使に関して、すでにその敷居が困ったほどに低いわけですが、現状は想像をはるかに超えるほど深刻かもしれません。

遠隔地からの操作が可能な無人機の利便性を重宝するあまり、無数の「巻き添え被害」(コラテラル・ダメージ)が許容されてきました。巻き添え被害とは、「罪なき一般市民の殺害」を丁寧に言い換えただけのものです。無人機の軽率な使用はさらなる法の軽視につながるかもしれません。もし無人機が米国内で米国民に向けて使用されるようになれば、それは我々にとって何を意味するでしょうか。

このように無人機の使用が劇的に増加し、外国人殺害を目的とした無人機使用の敷居が低くなった現状は、我が国の安全保障について非常に多くのことを暗示しています。国内では、無人機の使用は米兵にとってリスクを軽減するのに役立つと主張する人もいます。しかし、これは近視眼的な考え方と言うしかありません。一方で海外では、無人機の使用拡大は反感を買っており、実際のところ、敵を取り除くどころか敵を増やしているのです。

今月初め、対テロ担当のCIA元幹部が、バラク・オバマ大統領による無人機の使用拡大は逆にテロリストの「安全な隠れ場」を生み出していると警告しました。2004年から2006年にかけてCIAの対テロセンターのトップであったロバート・グレニアー氏は、イギリスの新聞でこのように発言しています。「(無人機による攻撃の)精度をさらに高めなければならない。我々は無人機の利便性の虜になってきたが、これによってもたらされる意図せぬ結果のほうが、本来の目的よりも重大になってきている」

先月もまた、イエメンで無人機が用いられ、アルカイダのメンバーとみられる人間よりも多くの一般市民が犠牲になりました。これを受けて、イエメン人のある弁護士がオバマ大統領にメッセージを送りました。「オバマ大統領、米軍の無人機がイエメンで子供を殺せば、その父親は米国と戦争を始めようとするでしょう。間違いありません。アルカイダとは何の関係もありません」彼らは、大統領による無人機使用拡大がもたらした名も無き被害者なのです。我々は注意しなければなりません。もし立場が逆転し、外国軍が無人機を操作し何千マイルも遠くから米国の子供を殺害しているとしたら、どう感じるでしょうか。きっと、イエメン人と同じことを思うのではないでしょうか。

海外での無人機使用拡大と共に、国内での無人機使用も増えています。合衆国憲法では、政府による私生活への干渉から市民は保護されています。これを重んじる全ての米国民にとって、無人機の国内使用は憂慮すべきことです。バージニア州知事は先日、無人機の使用は「法執行の効率化をもたらす」として、同州における無人機使用拡大を歓迎しました。このような態度は恐ろしいものです。そう感じるのは私だけではないでしょう。

政府がひっきりなしに無人機を頭上に飛ばし、我々が不正を行っていないかを監視しているとしたら、そんな国に住みたいと思うでしょうか。すでに、環境保護庁は無人偵察機を用い、農場主や牧場主が規則を遵守しているか監視しています。地方の法執行機関は無人機の使用に大きな期待を寄せています。「ビッグブラザー」の監視の下で誰が生活をしたいでしょうか。無人機が海外で誤使用されているというだけですでに恐怖です。我々は、政府による無人機の使用を今すぐ止めさせなければなりません。イエメンやパキスタンで行われている虐殺が、政府が米国内でやろうと企んでいる悪事の荒っぽい予行演習になってしまってはいけません。

経済崩壊を予測する米議会予算局

2012-06-14 11:04:51 | 経済
Texas Straight Talk 2012/06/11

The CBO sees the economic cliff ahead

経済崩壊を予測する米議会予算局(拙訳:チモシェンコ大村)

議会予算局は先週、長期予算見通しに関する年次報告書を発表しました。報告書では、2012年の数字はよくありません。予算局は、年末までに連邦債務がGDP比で70%増加すると予想しています。これは第2次世界大戦後最大の債務高になります。報告書はまた、給付金支給について厳しい現実を突きつけています。数年以内にベービーブーマー世代が退職し、医療費や社会保障費、メディケア支出が急上昇することが予想されているからです。

主要メディアは今回の報告書を極めて悲観的なものだと正しく認識していますが、彼らが無視しているのは、予算局による予測には間違った方法論が長年用いられているということです。この方法論では、増税と財政出動が支持されてしまう傾向があります。本来ならば、米国にはその正反対の政策が必要であるにもかかわらずです。

ポール・ロデリック・グレゴリー氏が先日のフォーブス誌で解説しているように、予算局は、将来の赤字予測に際し、ケインズ経済学特有の頑迷な仮説を適用してきました。ケインズ経済学の仮説が間違っていることは歴史と経済理論が何度も証明してきましたが、彼らにはお構いなしです。予算局は特に、2つの根強いケインズ神話に執着しています。1つ目は、増税は政府の歳入を絶対的に増やすが経済には負の効果を与えない、というもの、2つ目は、財政支出を減らせば経済に打撃を与える、というものです。もちろん、どちらも真実ではありません。

また、予算局は想定外の戦争や諸外国との紛争を考慮に入れていません。平和な状態を前提として作られたモデルに我々は信頼を置くべきではないのです。ワシントンにいる両党の政治家の言動から判断すると、シリアとイランにおける昨今の紛争は数年以内に軍事費の急増をもたらすでしょう。

このような厳しい財政状況にもかかわらず、予算局の報告書は、議会が少しの微調整をするだけで問題を解決できると示唆しています。しかし、我々が必要なのは微調整ではなく、政府のあり方を根幹から変えることなのです。米国における本来の政府の役割を思い出し、自由経済に政府の介入がどの程度許容されるかを冷静に考えれば、政府がこれほどまで支出し、借金をし、税金を課すべき理由などどこにもないということが即座に理解されるでしょう。

政府や連邦準備銀行を介入させずに市場を自由に機能させるだけで、不良債権は比較的速やかに処理され、誤投資も抑制されるでしょう。規制緩和は事業拡大を促すでしょう。また、減税は投資を活性化し雇用創出をもたらすでしょう。

これは高度な理論ではありません。経済学の基礎なのです。必要なのは、政府が市場への介入をやめることだけです。もちろん、短期的な痛みは伴いますが、バブルを崩壊させ不良債権を処理するだけで、真の経済を再び築くことが可能になります。

今回の予算局による報告書は憂慮すべきものですが、その理由はただ、どの党派も将来の財政破綻を阻止するために必要な対策を講じようとしていないからです。レトリックはどうであれ、結局両党とも、「財政赤字は問題ではない」などという夢物語を信じているのです。しかし、ギリシアや欧州連合で今起きていることを合わせて考えると、今回の報告書は、先進国にも経済の法則があてはまることを示す揺るぎない証拠になるでしょう。米国が次のギリシアにならないよう、我々は具体的な措置を講じなければなりません。

シリアに向けて進軍か?

2012-06-06 15:05:46 | 軍事
米国のいつものやり方です。シリアもイラクやリビアと同じ運命を辿ることになるのでしょう。今は、軍事介入正当化のために、BBCをはじめ主要各メディアは”独裁者たたき”に大忙しのご様子です(参考:BBCによる捏造報道)。アメリカの最後の良心ロン・ポール議員がシリア問題を斬ります。

Texas Straight Talk 2012/06/04

War Drums for Syria?

シリアに向けて進軍か?

ワシントンでまたしても開戦の号令が鳴り響いています。今度は、先週起きた虐殺で100人以上の死者を出したシリアが標的です。シリアの“レジームチェンジ”を政策として公言している現米政府だけあって、彼らは今回の惨劇に関してシリア政権だけを非難し、シリア外交官をワシントンから追放してしまいました。彼らはさらに、国連の承認なしに米国がシリアを攻撃する可能性についても言及しています。本来ならば、政府は合衆国憲法を遵守し、議会による宣戦布告を待たなければなりません。しかし今では、そのような考え方は、前政権の時にもまして、時代錯誤だとみなされるようになっています。

シリア軍が先週の事件に関与していることもありえるかもしれませんが、これまでの武力攻撃は、アルカイダとつながりがあると言われている反体制武装組織によって行われたものです。この点は判定が容易ではないので、詳細な調査を待って然るべきでしょう。もちろん、真実よりも、国民感情を煽って米軍の軍事介入に対する支持を得ることのほうが重要であれば、話は別です。

主要メディアが喧伝する米政府の主張を疑うのには十分な理由があります。海外での武力行使を推し進めるために、これまでに何度も嘘や誇張がなされてきました。カダフィがリビア国民の虐殺を計画しており、それを阻止できるのは米軍による軍事介入のみだと伝えられたのはごく最近のことです。後日その言い分は間違いであったことが分かりましたが、それまでに米軍とNATO軍はリビアをとっくに爆撃してしまいました。これにより、リビアのインフラは破壊され、無数の市民が殺され、代わりに危険な暴力的組織が残りました。

同様に、2003年のイラク戦争でも国民の支持を得るために無数の嘘がつかれました。大西洋を横断できる無人偵察機や大量破壊兵器など、低俗なストーリーがはやし立てられたのです。イラク戦争の支持者は、民族的・宗教的相違をはじめとするイラク社会の複雑さを理解していませんでした。その結果、現在のイラクは混乱を極め、古代キリスト教徒は排除され(参考:「自由の代償としての文化破壊は許されるか」http://www.relnet.co.jp/relnet/brief/r12-165.htm)、経済は何十年分も後退しました。嘘と情報操作でもたらされた不必要な戦争は碌な結果をもたらしません。

さらに遡ると、クリントン大統領の時も、ユーゴスラビア空爆への道筋をつけるために、コソボでの虐殺についててっち上げが行われました。12年経った今、この地域はどこもかしこも、米軍による軍事介入以前と同じくらい不安定で危険な状態にあります。そして、米軍は今もこの地に駐留しているのです。

シリアでの虐殺については話が二転三転しており、疑念を抱かざるを得ません。当初、虐殺は政府による砲撃によって行われたと伝えられました。しかし、後になって、ほとんどの犠牲者は拳銃やナイフによって至近距離で殺害されたことが分かったのです。なぜ政府軍がわざわざ市民の住居を次から次へと回り、犠牲者の手を縛りつけてから銃殺するのでしょうか。しかも、その状態で現場から退却し、残虐行為の証拠を反政府組織に握らせるようなことがあるでしょうか。誰もこの点について説明していません。このような際どい問題については、誰も問いただそうとしませんし、誰も答えようとしません。しかし、このような報道で誰が利益を得るかを自問自答することは大事です。

ここ数週間にわたりメディアが報道していますが、オバマ政権は“軍事支援を含まない”援助をシリアの反政府組織に提供しており、一方でペルシア湾岸諸国からの武器輸送を手助けしています。このように、中身のよく分からない反政府組織に半ば秘密の援助をしているわけですが、これはあからさまな軍事介入につながる恐れがあります。統合参謀本部議長のマーティン・デンプシー陸軍大将は先週、シリアについて、「軍事的選択を考慮すべきだ」と述べました。私の知るところでは、開戦すべきかどうかの判断をするのは議会であって、陸軍大将ではありません。

我々はシリアに対する戦争へと突進しています。今こそ、これを止めなければなりません。