ギリシャ神話あれこれ:12の功業その8

 
 難業のためトラキアに向かう往路、ヘラクレスは親友であるテッサリア、ペライの王アドメトスの館に立ち寄る。

 何事もないように迎えてもらったヘラクレス。ところが、饗応されはしても、当のアドメトスは一向に姿を見せない。不服なヘラクレスが、酔っ払って、アドメトスに会いに押しかけると、ちょうど、アドメトスの妻アルケスティスが、彼の身代わりとなって死んでしまったという愁嘆場。
 ようやく事情を知って、面目ないし、気の毒だしで、友人思いのヘラクレスは、アルケスティスを取り返しに、一人墓場へと向かう。そして、彼女を連れて行こうとしていた死神と格闘し、とうとう、彼女を取り戻して、アドメトスの腕のなかに帰してやった。
 ……死神タナトスもヘラクレスには敵わなかったらしい。

 こうして、大いなる人助けをしてから、彼はトラキアへとやって来る。難業その8は、ディオメデスの牝馬を持ち帰ること。

 トラキアの王ディオメデスは、とてつもなく凶暴な牝馬を、捕まえた旅人の人肉を餌に養っていた。こうした野蛮で好戦的な輩は大抵そうだが、彼もまた軍神アレスの子。
 真っ正直なヘラクレスは、この凶悪な王には相当ブチ切れていたらしい。トラキアに着くなり、王自身を馬に喰わせてしまう。
 
 王を喰らうと牝馬は急におとなしくなり、ヘラクレスは楽々手綱を引いて海岸へと向かう。
 が、まもなく、蛮王を殺された蛮族どもが追いかけてくる。ヘラクレスは同行の少年アブデロス(ヒュラスのときもそうだが、ヘラクレスは女好きなだけでなく、美少年も大好きで、愛人にして連れて旅している)に馬の番をさせて、自分は一人、蛮族をやっつける。

 ところが、敵を片づけて戻ってみると、衝撃的なことに、少年は憐れ、馬に喰い殺されていた。
 泣く泣く彼は、少年を弔って、一人ミュケナイへと戻る。

 人喰い馬はエウリュステウス王のところまで連れてこられたが、王はやはり手に余って、この牝馬を野に放置。馬はオリュンポス山へと逃れ、野獣に食い殺されたという。

 To be continued...

 画像は、モロー「自分の馬にむさぼり喰われるディオメデス」。
    ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826-1898, French)

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