パーフェクト・ワールド

 
 「パーフェクト・ワールド(A Perfect World)」を観た(監督:クリント・イーストウッド、出演:ケビン・コスナー、クリント・イーストウッド、T・J・ロウサー、ローラ・ダーン、他)。
 以前、私が勧めても、「イぃーストウッドぉ?」と、観ようとしなかった相棒、今回、女子学生に勧められて、いそいそと借りてきた。おいおい。

 舞台は、60年代、ケネディ大統領暗殺前夜のテキサス。刑務所に服役中のブッチ・ヘインズは、テリーと共謀して脱獄、逃走中に立ち寄った町で、少年フィリップを人質にする。
 道中ブッチは、フィリップを襲おうとしたテリーを射殺。次第に二人のあいだには信頼が生まれ、フィリップは、家を出た父親の姿をブッチに重ねるようになる。
 一方、厳重な警戒線が張られるなか、ブッチを追跡する州警察署長、レッド・ガーネット。彼は、まだ子供だったブッチを劣悪な環境から救うために、刑務所に送った当人だった。……という話。

 一面の草原、風に紙幣が揺れるなか、眼を閉じて寝そべるブッチ。彼の行く先は、この最初のシーンに描かれている。

 この映画は意図的にロード・ムービーとして作ってあるらしく、追跡の描写は全然きびきびしていない。レッドたちは田舎道をキャンピングカーのような車で、コーヒーを飲んだりバーベキューしたりしながら、ブッチを追う。
 で、ブッチたちの逃避行も、やけにのんびりしていて緊張感がない。ブッチには父との思い出がほとんどなく、フィリップに子供時代の自分を重ねる。同じくフィリップのほうも、家を出た父をブッチのなかに見る。二人は父と子のような不器用な関係になってゆく。
 ブッチが目指すのは、父が絵葉書をくれた新天地アラスカ。
 
 ……ブッチを、暴力を振るう父親から引き離すために刑務所に送り込み、結果、ブッチを犯罪の常習犯としてしまった、という曰くを持つレッドは、実はブッチの父親だったように思えたのだが、英語のニュアンスが分からなかったので、はっきりしない。
 
 が、事情を知らない第三者の眼で傍観すれば、ブッチは子供の頃から犯罪を重ねた挙句に脱獄、誘拐、殺人とエスカレートしていく凶暴な男。ブッチとフィリップとレッドのそれぞれの思いを、第三者であるFBI捜査官が、正義の名のもとに、いっぺんにぶち壊してしまう。

 「今日はツイてない」とつぶやくブッチ。思えば彼の人生は、ずっとツイてなかったんだろう。
 ツイてないときって、滅入るよね。

 画像は、エイキンズ「理想郷の住民」。
  トマス・エイキンズ(Thomas Eakins, 1844-1916, American)

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