ギリシャ神話あれこれ:ギリシア帰還(続々々々)

 
 残りのギリシア勢は総帥アガメムノンとともに、犠牲を捧げた後に出帆したが、やはり嵐に見舞われる。

 その昔、知将パラメデスが、同じく知将オデュッセウスによって謀殺された際、パラメデスの父ナウプリオスは、無実の息子の汚名を晴らそうとギリシア諸将らに訴えたのだが、オデュッセウスを贔屓する諸将たちに、虚しく退けられていた。
 で、トロイア陥落後、いよいよギリシア船団が帰国の途に着くのを待って、海神ポセイドンの血を引くナウプリオスは、ポセイドンにギリシア勢への復讐を祈願する。

 海は突如として荒れ狂い、容赦なく船を海中へと飲み込んでいく。翻弄される大船団に向かって、岬に待ち伏せしていたナウプリオスが、これ見よがしに赤々と松明を燃やす。
 偽りの港を目指した船団は、岩礁に打ち砕かれて木っ端微塵となり、戦利品とともに次々と、海の藻屑と消えてゆく。

 嵐によってばらばらになったギリシア勢の船団は、その後各様に船を進め、無事帰国した者もいれば、別の地に漂着した者もいた。帰国を果たしたが不運に見舞われた者もいた。

 ナウプリオスはギリシア軍の遠征中、せっせと諸将らの留守宅を訪ね、妻たちが不貞に走るよう促して廻っていた。夫は遠征先でトロイアの女とよろしくやっている。帰還後には王妃の座も危うかろう。……こう考えた妻たちは、次々と夫を裏切った。
 こうしてナウプリオスの仕掛けた陥穽のせいで、帰国を果たした諸将も無事には済まなかった。ディオメデスやイドメネウスは、妻とその姦夫とに祖国を追われ、アガメムノンは謀殺された。

 なお、ネオプトレモスだけは、テティスの忠告によって出帆を遅らせたため、嵐に遭わずに済んだという。

 トロイア戦争の顛末は、これにてお終い。

 画像は、ドレイパー「海神の怒り」。
  ハーバート・ドレイパー(Herbert Draper, 1863-1920, British)

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