夢の話：新しい特殊能力 その１（続）

　　
　物質に自分を吸い込ませることができるようになると、次には、物質をそのまま通過することもできるようになった。

　最初の頃は、壁のなかに埋まったまま身動きをはばかっていたのだが、あるとき一度、石壁のなかを、つつつ、と移動してみると、移動できた。そしてそのまま、壁の反対側から外界に出てみると、出ることができた。
　これは大きな能力だった！　夢では追いかけられる舞台が、例えば屋敷やビルや体育館のような、大きな密室のときがある。出口がなく、外に逃げ出すことのできない大きな建物のなかで、奴らが私を追いまわす。まあ、こういう密室のときには、追われる人間も私一人でない場合が多いんだけど。

　けれども、物質を通過できるようになってからは、こうした密室も怖くはなくなった。壁や扉や天井などの薄い物質なら簡単に通ることができる。岩山のような分厚い物質でも、通り抜けたことがある。
　自在に通り抜けて、密室から脱出すると、奴らはわーわーと騒ぎ立てて、次々と出口から飛び出してくる。わーい、いい気味！

　でもまあ、結局、外に逃げ出したにしても、外界ではまた同じように追跡されて、私は相変わらず逃げまわらなきゃならないんだけど。

　To be continued...

　画像は、モリゾ「かくれんぼ」。
　　ベルト・モリゾ(Berthe Morisot, 1841-1895, French)

　　　　　Previous / Next