バイエルンの都(続)

 
 廊下に出てきたのは偶然、さっきの女の子。突然声をかけられて、おっとっと、というふうにソックスで廊下を滑って転ぶ様子を見せながら、方向転換して私たちのほうへとやって来る。ファニーでチャーミング。
「鍵が開かないんですね? ちょっと持ってて!」
 自分の鍵を私の手のひらにパシッと叩くように渡して、開け方を実演してくれる。
「こうやって鍵をこちらに回して、ちょうど開けるときに鍵を引っ張るの。引っ張って……あれ? 開かない」
 女の子は肩をすぼめて、同じやり方をガチャガチャ試す。

 そこへ背後にそっと現われたのが、今シャワーを浴びたばかりの、洗った髪をタオルでくるみ、バスタオル一枚きり身体に巻いただけの湯上り美人。彼女は私たちの隣室の人で、シャワーから帰ってきてこの場にばったり遭遇したわけ。
 日本のホテルでは、宿泊客は廊下を寝巻き姿で出歩くことがあるが、ドイツでは自室以外はプライベートな空間ではないので、そうした行為は控えるように……とかなんとか、ガイドブックが注意していたけれど、なんのなんの、鷹揚なドイツ人、バスタオル一枚でも気にしないみたい。

 同じハイスクールであるらしい彼女らは会話を交わし、今度は湯上りの女の子が鍵を開けると、あ、開いた。
 彼女らはもう一度、開け方を説明してくれる。間抜けっぽい東洋人二人、心から「ダンケ」と言い、部屋に入って、「アホちゃう、あの東洋人、って思われてるだろうねえ」と溜息を吐く。

 To be continued...

 画像は、ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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